言語とういうものは、映像を音で表現したものです。それを文字という記号を使って単語に表し、さらに統語(文法)で文にしていきます。英語と日本語についていうと、日本人が一番なじめないのは、統語についてです。
英単語を覚えるのは、難しい日本語を覚えるのに近いものがあります。例えば、「認識」という二字熟語を覚える時は、辞書を引き、「物事をはっきりと見分け、判断すること。」という簡単な日本語の助けを借りて意味を理解し覚えます。基礎的な日本語を身につけていない3歳児に、「認識」の意味を教え覚えさせようとしても無理です。同様に、英単語「recognition」を覚えるときも辞書を引き、「認識」というすでに覚えた日本語の助けを借りて理解し覚えます。英単語も日本語も、意味の変換作業をしている訳で、その意味では同じレベルにあります。
しかし、統語(文法)は、なかなか変換が難しいのです。その具体的な理由としては、「①日本語は、普段あまり主語を用いない。②述語の位置が全く違う。」の二点が挙げられます。これは大げさに言えば言語を使う脳の回路が違うということになります。例など述べなくても、言語にとって主語と述語は非常に重要なことは分かると思います
英語を聞くとき、読むときには、常にこの「主語+述語」が始めに来るということを理解し、慣れる訓練をしていかなければいけません。逆にいうと、このことに慣れれば、英語は非常に論理的なのでわかりやすいものになっていきます。本来は読解において、英語の脳の回路になるように訓練するのが望ましいのですが、今回は「英作文はどうしたらできるようになるのか。」、英作文の問題を解きながら進めていきます。
(1) 彼はもう2度と嘘をつかないと母親に約束した。 (Heで始めて)
上記の英作文は、始めの部分が指定されています。これはなぜがというと、言語学習のゴールは、その言語における全ての表現方法を習得するという壮大なものなので、指定でもしない限り、その答えは限りないものとなる可能性があるからです。ということは、指定以外はどう表現しようが、意味が適当ならかまわないということになります。あとは、減点されないように書けばよいだけです。それでは、(1)を英作文してみます。
手順1:日本語にある主語と述語を探す。ここでは主語は指定されていますので述語を探してみましょう。
(1) 彼は / もう二度と嘘をつかないと母親に / 約束した。
(主語) (述語)
ここまで分かったら、英語の語順に直します。
手順2:あとは連想してみます。この連想の意味ですが、疑問詞を連想すると言ったほうがいいかもしれません。
さあ、やってみます。「彼は約束した・・・」
どうでしょう「何を」という疑問がわきましたか、たぶんわいたと思います。また、「約束した」という動詞は、「誰に、何を」という連想がわくかもしれません。いずれにしても、疑問の連想をパズルのようにあてはめていくとういうのが英語です。ここでは日本文が与えられているのでそこから探せばいいわけです。なので、主語と述語を読んで「何を」と連想した人は「もう二度と嘘をつかないことを」、「誰に、何を」と連想した人は、「母親に、二度と嘘をつかないことを」となればいいわけです。「彼は約束した / もう二度と嘘をつかないことを」とくれば、次の連想は結局「誰に」が頭に浮かんでくるわけです。それでは、いよいよ英語に直してみましょう。 「約束する」"promise"という英語を知っていれば、本当に楽にできるのですが、もし知らなかった時は、他の言葉に置き換えるしかありません。「約束する」はどんな日本語に置き換えられるでしょうか。この時に3歳児にどうやって「約束する」の意味を説明するか考えてみましょう。「言ったことを守る」ぐらいが頭に浮かべば素晴らしいですね。"keep his word"とか"keep what he said" でも大丈夫です。次に、「母親に」は "his mother" ですね。さて最後に、「もう二度と嘘をつかない。」ですが、"never to tell a lie"がさっと出てくるようなら、困らないはずですね。ここも置き換えでもかまいません。例えば、「本当のことを言う」"tell a true story"とか、いろいろあると思います。さて、その基準ですが、言葉は映像が音になり文字になったわけなので、その文を書いて映像を浮かべて適当なら正解と考えていいでしょう。
He promised his mother never to tell a lie.
He said to his mother, " I will keep my word and always tell you a true story."
He made the promise to his mother that he would never tell a lie.
など、どれも正解です。
さあここで改めて、英作文に必要な力を考えてみると、もとの日本文をかみ砕いてより簡単な日本語に直す力が必要だということになります。そして、それを簡単な英語で書くための力も必要です。そのためには、日本語の段階で意味を自分で簡単な日本語に言い直せない語は辞書を引き簡単な日本語としての意味を覚えなくてはなりません。また、同様なことを英語でするために英単語を英英辞典で引く習慣もつけておくといいでしょう。インターネット辞書では、onelook dictionayなどで検索し、自分の気に入った英英辞典で引くようにするのがいいでしょう。気に入ったらスマホのホーム画面においておけば使いやすいですね。
例えば、onelookで"lie"「うそ」を検索し、自分にわかりやすそうなものを探すとcambridge dictionaryに行き当たりました。それによると、lie「うそ」は、to say or write something that is not trueと説明されています。これを上記の英作文に使ってみます。
He said to his mother, "I will never say or write something that is not true."でOKですね。
こういう力がつくように頑張ってください。
やがて、もっと難しい日本語を英作文する時が来るでしょう。その時のために、英語学習における一つのからくりを説明しておきます。英語には構文と呼ばれるものがあります。
Shoji studied hard so that he could pass the university entrance examination.
「ショウジは大学入試に合格するために一生懸命に勉強した。」
いわゆる so that 構文と呼ばれるものですが、 S1 V 1 so that S2 V 2 ~. (S 2がV 2 するために、S 1はV 1する。)
と、一つの構文を暗記していくわけです。しかし、果たしてそんなことは必要なのでしょうか。私なら、生徒には覚えさせません。 英語の語順通りに普通に直訳すれば問題ないからです。
Shoji studied / hard / so that / he could pass / the university entrance examination.
ショウジは勉強した 懸命に そう それで 彼は合格した 大学入試に
so that のところを、「そうそれで」と訳すところがポイントです。thatは「あれ、それ」なので、「それは、それを、その」と同様、「それで」と普通に訳せばいいだけなのですが、それが思い浮かばない方が構文扱いにしてしまったのではないでしょうか。あえて覚えさせるなら so that は「そうそれで」という接続の言葉だと教えます。この構文の例のように、構文の暗記はそのほとんどが不要だと思います。もともと、構文は、英文の中でよく目にして直訳が難しいものを、翻訳してパターン化したものだからです。次の図を見てください。
本来の英語と日本語の変換作業は、この図で示したようにならなければいけませんが、構文と呼ばれるものは、
のように、表面と表面を行き来させたものなのです。覚えても、なかなか使えない理由がここにあると思います。
英作文の学習で説明した通り、その核となる簡単な日本語と英語の行き来なしには、本来変換はできないのです。