副鼻腔炎・鼻茸の治療について

副鼻腔炎

副鼻腔炎とはどんな病気でしょうか?

鼻の周りの副鼻腔というところに膿が溜まったり、粘膜が腫れたり、時には粘膜が肥厚して鼻茸(はなたけ)を形成し鼻がつまったり、臭く粘る鼻汁が出たり、臭いがわかりにくくなったり、頭が痛くなったりする病気です。 以前「蓄膿症」といわれていた病気です。病状により「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」とがあります。原因としては、鼻腔が構造的に狭いこと、細菌感染の併発、アレルギーの素因、低栄養状態などが関係するようです。

次にどのように診断するかですが、まず鼻鏡で鼻の孔を診ると、鼻腔内に鼻汁や粘膜の腫れ、時に鼻茸を観察することができます。さらには副鼻腔の単純レントゲン撮影(写真1)で陰影を認めれば、ほぼ診断は確定します。もっと詳しく調べるためには、CT撮影(写真2)を行います。そうすればより詳しく悪い部分を特定することができます。

写真1

写真2

すべての副鼻腔が同じように悪くなるかというと、そうではなくて大部分のものは上顎洞(じょうがくどう)というところと篩骨洞(しこつどう)というところに病変を認めることが多いようです。この両者が悪いときはそれぞれの名前をとって「上顎洞篩骨洞炎」と呼びます。

治療について。

程度の軽いものや、急性副鼻腔炎などには保存的に薬(抗生剤、消炎酵素剤など)を内服したり、鼻腔の粘膜を収縮させて鼻の通りをよくする処置をしたり、抗生剤や血管収縮剤を鼻腔・副鼻腔に霧状にして散布したりする治療(ネブライザー療法)が行われます。ただし、このような保存療法はかなり長期にわたって行わないと、その治療効果が現れないことがあります。

慢性副鼻腔炎で、保存的に治らないものは手術が行なわれます。程度のより軽いものでは、内視鏡を使い鼻の孔から器具を入れてだけで手術を行うことが可能です(内視鏡下鼻内副鼻腔手術:ESS:Endoscopic Sinus Surgery)。この手術では、鼻茸を切除したり、腫れている粘膜を取り除いたり、鼻腔から副鼻腔へ至る、もともと開いている通路(自然孔)を広げたりします。

病変が進んでいる場合にはESSだけでは無理なので、昔から行われている副鼻腔炎に対する根本手術が行われます。この手術は通常、局所麻酔で行いますが、痛みに耐えられない場合や、手術に対しての恐怖心の強い場合には、全身麻酔で行います。全身麻酔の場合には、まったく痛みも知らずに、気がつけば病室にいますので、本人にとってはたいへん楽です。この手術の目的は、病変のある副鼻腔を外から開けて内部の腫れた粘膜を完全に取り除いたり、膿汁を除去したりして、自然孔の拡大をはかり鼻腔との空気の流通を良くすることにあります。ただしESSと異なり、上顎洞前壁を開けますので、術後頬が腫れたり、唇がしびれたりすることがあります。また両側の副鼻腔が悪い時は、片方ずつ一週間の間隔を空けて行うので、入院期間がESSに比べて倍ほどかかります。 参考ながらESSの場合は両側同時に手術をすることが可能です。

副鼻腔炎を予防する方法について

鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)、肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)など鼻づまりを起こす病気を早いうちに治してしまうこと。急に色のついた汚い鼻汁が出るようになったら、早めに専門医で治療を受けて早く治すことが大切です。同時に、日常生活では、偏った栄養の摂り方をせず、タンパク質を十分に摂り、規則正しい生活をおくり、深酒はしないように心がけることが大切です。 昔、「青ばな」をたらした子供が多かったのは、低栄養がその原因だったことを、みなさんはご存知でしょうか?

■用語説明

鼻茸:

自然孔あたりの粘膜が炎症によって変性して、ぶよぶよの塊状になったものです。ポリープともいわれています。

内視鏡下鼻内副鼻腔手術:

硬性内視鏡を用いて、鼻腔と副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)との間の閉塞している自然孔を広げる手術です。自然孔周囲の腫脹している粘膜を内視鏡下に鉗子などで除去し、鼻腔と副鼻腔とのあいだに広く交通をつけ、各副鼻腔の排泄と換気を確保し、各副鼻腔の病変を改善することが目的です。通常CCDカメラを硬性内視鏡に装着し、モニター画面を見ながら手術が行われます(写真3)。

写真3

鼻中隔彎曲症:

鼻の真ん中にある仕切状の構造物が、後天的に中心位置から変位して鼻づまりなどを引き起こす病気です(写真4)。

写真4

肥厚性鼻炎:

鼻腔のひだ状の構造物のうち、主として下鼻甲介が腫れて鼻づまりをおこす病気です(写真5)。

写真5