3.滲出性中耳炎に対する鼓膜換気チューブ留置術

滲出性中耳炎は就学時までに90%以上自然治癒するといわれています。しかしお子さんの滲出性中耳炎20人に1人は難治化し、400人に1人は難聴などの後遺症を残すとされています。中耳炎は耳、鼻の構造、免疫力の影響で年齢が小さいほど、治るまでに時間がかかります。遷延する中耳炎は耳周囲の乳突蜂巣という骨の発育をを妨げ中耳炎が治りにくい耳になってしまいます。また言語習得の大切な時期に両耳の聞こえが悪い状態が続くことにより言語発達遅滞を引き起こします。

滲出性中耳炎の原因はアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド増殖症であったりします。それによる耳管機能の低下が直接の原因です。耳管というのは中耳と鼻咽腔をつなぐ管のことでこれにより中耳腔の換気が行われています。

さて、保存的治療を3か月以上行っても改善しない場合はすでに難治化していると判断し、難聴や、鼓膜の陥凹、癒着がある場合は鼓膜チューブの適応となります。では、鼓膜チューブ挿入術の具体的内容を以下に示します。

鼓膜切開術 / 鼓膜換気チューブ挿入術

目的 :

鼓膜の奥:中耳にたまった液を、切開および鼓膜に挿入した管により排液します。

これにより、聴力改善や感染回数が減ることが期待されます。

対象疾患:

滲出性(しんしゅつせい)中耳炎

難治性急性中耳炎:長期のまたは繰り返す耳感染がある場合

飛行機に乗ったり深い海でダイビングするとき、耳抜きができない人(気圧障害)

費用:

(3 割負担; 投薬料や診察料は別途必要です)

鼓膜切開術+イオン麻酔:\2200

鼓膜換気チューブ挿入術+イオン麻酔:\9660

説明:

1. イオン麻酔という麻酔をします。ベッドに寝てもらい、

2. 耳に麻酔液を入れて弱い電圧をかけて鼓膜に麻酔液を浸透させます。痛みはありません。(約10 分)

3. 鼓膜を小さく切開し、たまった液を吸い出します。

このとき痛みはありませんが、

バリッという大きな音がします。(10 秒くらい)

------(ここまで鼓膜切開)---------

4. 切開した鼓膜の穴に、換気チューブを挿入します。(約1 分)

術後:

お風呂は、耳に水が入らなければかまいません。

入浴・洗髪や日常生活程度で耳に少し水が入るのはかまいませんが、水泳やダイビングについては医師にご相談ください。

鼓膜切開の場合、鼓膜の穴は1 週間程度で自然に閉じます。

換気チューブは半年から数年で自然に脱落する場合があります。

脱落後、中耳炎が再発するようなら再手術が必要になることがあります。

危険性とその対応:

麻酔:キシロカインを使いますので、麻酔薬に対してアレルギーのある人は気分

が悪くなったりします。その場合はすぐに中止します。

感染:術後耳だれが続くことがありますが、抗生剤内服、局所処置で対応します。

鼓膜穿孔の残存:まれに鼓膜の穴が閉じずに残ってしまうことがあります。

(MRSA などの耐性菌がいる場合、何度も鼓膜切開を繰り返しておられる方、ス

テロイドの投与を受けておられる方などに多いようです)

その場合、鼓膜穿孔閉鎖術(人工膜を鼓膜に貼る方法や、皮下組織を移植する方

法など)が必要になる場合があります。