頭頸部疾患

先天性耳瘻孔について

先天性耳瘻孔(せんてんせいじろうこう)は、耳介の付着部にある小さな穴のことを言います。 耳輪脚という、耳介の前の部位に存在することが多いですが、耳の後ろに存在する場合もあります。 遺伝性のものと言われており、穴がある方はご両親の耳を良く観察するとどこかに穴が見つかることがほとんどです。

生まれる前、母親のお腹の中にいる時、すなわち胎児のときに形成される穴だと言われています。 顔面を形成するパーツと、耳を形成するパーツの接合が不十分で、両者の間に「すきま」ができたものと考えられます。この「すきま」が小さな袋のような状態として体の中に残存し、小さな穴(左図矢印)で外界と交通した状態が「耳瘻孔」です。小さな「すきま」があるだけ、なら特に治療は不要です。

矢印の先が耳瘻孔 斜め右下が感染のため腫脹。

ただし、この「すきま」に細菌が入り込んでしまうと感染を生じ、周囲に痛みが出たり、腫れたりします。また穴から嫌なニオイのする分泌物が出てくることもあります。抗生物質の内服で感染をコントロールしますが、繰り返して感染が生じる場合には、袋ごと手術によって取り除きます。耳瘻孔は意外に中の方で「アリの巣」のように入り組んでいることがあります。再発しないように丁寧に手術で除去する必要があります。居所麻酔、日帰り手術でもできますが、複雑な構造をして感染を繰り返しているものは、入院の上、全身麻酔のもとで施行した方が無難と思います。

先天性耳瘻孔は、一度感染してしまうと繰り返していくので完全に治したいのならば手術しかありません。先天性耳瘻孔の手術で、切開する大きさは普通は2~4針分だといわれています。

しかし、穴と軟骨との癒着が進行していると、炎症を起こしているところをきれいにはがし取ることがすごく困難になってきます。

何度か繰り返しているのなら切開をする前に手術をすることをお勧めします。

しかし、先天性耳瘻孔は一度も感染をしていないのならば、何もしないようにしてください。何の炎症も出ていないのに、無理に触ったりすることで反対に感染を引き起こしてしまうことになりかねません。

もし、皆さんの中に先天性耳瘻孔があったとしても、今のところ炎症を起こしていない限り深く考える必要はありません。無理に耳瘻孔に触らないことです。たまに穴から何かでてくるのですが、炎症を起こしていない限り安心です。

しかし、場合によっては、化膿部分や穴がまだ大きくなる可能性もあります。

手術の方法ですが大人の場合だと局所麻酔で、手術と言うことになるので合併症や、異変が起きない限り入院は必要ありません。ですが、子供の場合だと全身麻酔で先天性耳瘻孔の手術をおこないます。乳児期の場合だとひどい感染をしない限りは1歳を過ぎて手術を行うようになっています。