花粉症はどうして起こるのか

花粉症はどうして起こるの?

「花粉症はどんな人がなる?」

空中を飛んでいる花粉を吸い込んでも、花粉症になる人とならない人がいるのはなぜでしょう?花粉症は、体外から侵入する花粉に対して、体内で「IgE抗体」がつくられるために引き起こされます。この「IgE抗体」を体内でつくることが出来るかどうかは、遺伝によって決まっています。 ただ最近の花粉症患者の増加には、ディーゼル排出粒子や食生活の変化など、いろいろな環境の影響が「IgE抗体」の産生に影響していることも指摘されています。「免疫抑制遺伝子(アレルギー抑制遺伝子)」と呼ばれる遺伝子があります。「IgE抗体」が作られるのを抑える働きがあると考えられています。ですから、この「免疫抑制遺伝子」を持っていない人は、「IgE抗体」を作るのを抑えることが出来ません。花粉に接触するたびに「IgE抗体」が作られて、やがて花粉症が引き起こされてしまうのです。

このように体内で「IgE抗体」を作り出すのを抑制できない人が、いわゆる「アレルギー体質」の人で、花粉症になるのは、こうした「アレルギー体質」の人なのですが、「IgE抗体」を持っていても花粉症を発症する方は30~50%で、残りの方は発症しません。その理由はわかっていません。

「感作が成立すると、花粉症が発症する!」

花粉症になるのはアレルギー体質の人ですが、花粉に接触したらすぐに症状が現れるわけではありません。花粉に接触するたびに体内に「IgE抗体」が蓄積されて、ある水準に達して始めて発症の準備がととのった状態になるのです。これを「感作が成立した」といい、こうした人が花粉に接触するとくしゃみ・鼻水などの花粉症の症状が、始めて現れやすくなります。

人間の体には、体内に侵入してくる異物をやっつけたり排除しようとする仕組みがあります。体内に侵入した異物(抗原)に対抗する物質(抗体)を作り出す働きがあるのです。抗体が一定の量に達すると、ふたたび同じ抗原が体内に入ってきても、体内に作り出された抗体がその抗原に結びついて反応をします。この反応を「抗原抗体反応」と言いますが、これが体に都合良く働く場合は、その仕組みを「免疫」と呼び、また、体に都合悪く働く場合は「アレルギー」と呼びます。「アレルギー」も「免疫」も、実は反応の仕組みはまったく同じなのです。

「抗原抗体反応」を担う抗体とは「免疫グロブリン」というタンパク質で、その種類は5種類があるのですが、花粉症に深くかかわっている抗体が、前述の「IgE抗体」です。

この「IgE抗体」が体内で作られるプロセスを説明しましょう。まず鼻や目などの粘膜に花粉が取り付くと、抗原のたんぱく質が、粘液に溶けだします。この溶けだした抗原がマクロファージという細胞に取り込まれて異物と認識されます。この情報がヘルパーTリンパ球を介して、Bリンパ球に伝えられるとリンパ球が花粉症抗原に対抗する「IgE抗体」を作り出します。

「IgE抗体」が作られるしくみ

1 抗原(花粉)の侵入

2 マクロファージ

マクロファージと呼ばれる細胞が抗原の侵入をキャッチ。抗体産生リンパ球(Bリンパ球)に伝える。

3 抗体産生リンパ球(Bリンパ球)

抗体を産生

4 抗体産生を抑制するリンパ球(Tリンパ球)

抑制機能の低下

5 肥満細胞

ヒスタミンなどの化学物質で満たされた細胞。肥満細胞の表面にIgE抗体が付着し、蓄積される。

※肥満細胞は体の肥満とは関係ない。

6 再び抗原(花粉)の侵入

花粉がIgE抗体と反応し、肥満細胞からアレルギーを起こす化学物質が放出され、目のかゆみや鼻水といった花粉症独特の症状をあらわす。

このようにして作り出された「IgE抗体」ですが、「肥満細胞」と呼ばれる特殊な細胞と結合しやすい性質をもっていて、花粉と接触するたびに作り出される「IgE抗体」は、こうして体内に蓄積されてゆくのです。

「IgE抗体」が「肥満細胞」の表面に次々と結合して、あるレベルに達した段階を「感作が成立した」と呼び、アレルギー反応の準備が出来上がった状態となります。こうした状態のところに再び同じ花粉の抗原が侵入すると、「肥満細胞」に結合した「IgE抗体」が抗原をキャッチして結合します。この反応を「抗原抗体反応」と呼びますが、この反応が刺激となって「肥満細胞」が活性化され、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されるのです。そして、この放出された化学伝達物質が実は花粉症の症状を引き起こすのです。