葉のクチクラの炭素コストと力学的重要性
陸上植物の葉の表面にはポリエステルなどで出来たクチクラ層があります。種によって、クチクラの厚さは大きく異なり、0.05μm以下のものから10μmを超えるものもあります。そのようなクチクラの厚さの違いによって、どのようなコストとベネフィットがあるのかはよく分かっていません。クチクラには水の蒸発を防ぐ機能があることは間違いありませんが、厚いクチクラが蒸散抑制効果が大きいかというと必ずしもそうではないことが、これまでの研究で度々指摘されてきました。私たちは力学に着目し、クチクラの比重、重量、剛性、強度を13種の常緑樹種について比較しました。クチクラは顕微鏡切片では薄い膜にしか見えませんが、比重は高く(1.05-1.2 g cm-3)、葉の乾燥重量のうち最大で24%も占めることが分かりました。またクチクラは力学的にも強く、特に厚いクチクラをもつ種は葉の強度も極めて高いことがわかりました。この結果は、厚いクチクラの意義は、防水のためよりも、力学的強度を増し、長い寿命に貢献するためだろうと考えられました。
単離した葉のクチクラ(写真中央)の引張り試験。白いのはクチクラをマウントしていた紙。