EBV

必須生物多様性観測要素

Perreira et al. (2013) Essential Biodiversity Variables. Science 339: 277-278(原著

第一著者Perreira氏による英語プレスリリースの日本語版(2012/1/18)

昨年どれほどの生物多様性が失われた(または変化した)でしょうか?この問題に答えることは困難です。なぜならば、気象観測とは異なり、生物多様性の観測には調和した世界的基盤がないからです。リスボン大学のHenrique Perreira教授が主導する30人の科学者は、本日Science誌に、必須観測要素に基づく生物多様性の観測システムを発表します。全球気候観測システム(GCOS)が定期的な気象観測に50の必須観測要素を定めたように、この論文では地球観測グループ生物多様性観測ネットワーク(GEO BON, http://www.earthobservations.org/geobon.shtml)に基づき、必須生物多様性観測要素を選定するプロセスを提案します。

必須生物多様性観測要素は、既存の観測スキームを調和させ、また新規の観測スキームの実施の道標となります。これは特に、生物多様性の変化の情報が不足しているような分野で重要です。必須観測要素の例としては、特定の野生種または家畜種のアレリック多様性(allelic diversity)、ある分類群を代表する種の個体数、生息地の三次元構造、変化しやすい生態系の養分保持などが挙げられます。このような観測要素は、衛星によるリモートセンシングと、市民研究者や地方・国・地域の組織による現地観察を統合し、地球規模でモデル化します。必須生物多様性観測要素は生物多様性条約(CBD)の2020年愛知目標への進捗を評価するための信頼できる指標の計算に重要となります。

この論文の発表の直後、1月21-26日には、およそ100カ国に及ぶ任命代表が集うIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)の最初の総会がボンで開催されます。Henrique Perreira教授は、観測のための国際的な役割分担について議論することが重要だと述べています。「生物多様性観測の最も大きな欠落は発展途上国にあります。これらの国は大きな環境負荷を受けており、またその原因の多くは先進国に起因しています。したがって真の地球生物多様性観測システムの構築について、国際的な役割分担を議論することが不可欠なのです。」

原著論文の暫定和訳はこちら(pdf, 4ページ)

私による紹介はこちら(pdf, スライド12枚)