慶應義塾大学 佐藤由紀子
2019年3月18日~19日に遺伝研で行われた、研究プレゼンテーション研究会で、「文系学生に対する遺伝研メソッドの活用」というタイトルでお話をさせていただく機会を得ました。その際、一番ネックになったのが6歳になったばかりの娘のことです。泊りがけの出張は出産後初めてでしたし、娘の性格上、置いていくことは困難と思われました。夫に仕事を休んでもらい、シッターとしてついてきてもらおうかと思っていたほどです。
ところが、ちょうど遺伝研では、外部研究者の託児システム利用の制度ができたところで、私も使わせていただけることになりました。どうなることかと困っていたので、本当にありがたかったです。おかげで、私はとても集中して研究会に参加し、有意義な時間をすごすことができました。
以下、私の経験と感想をお話ししたいと思います。使用をご検討されている方もそうでない方にも、参考になれば幸いです。
保育内容について
研究所内の保育室にシッターさんを派遣していただき、娘の見守りと保育をお願いしました。シッターさんは、研究所の方が手続きしてくださったので、こちらの手間は全くなく非常にありがたかったです。
とはいえ、知らない場所で、知らない人に子供を預けることは、親にとって不安なものです。「様子が見えなくて心配」 「親を恋しがって泣かないか?」 「うまくなじめるか?」などなど。
とてもありがたいことに、今回、その心配は杞憂におわりました。
まず、保育室は、研究施設内にあるのでとても安心できました。今回の研究会の会場である3階のセミナー室とも近く、休憩時間に顔を見に行くことも可能でした。念のため、事前に子供を会場まで連れて行ったので、子供もすごく安心できたようです。
保育室は子供が遊ぶための本やおもちゃがとても充実していました。全部寄付とのこと。たくさんの方の支援でできている、とても温かい保育室です。娘は、初めてのおもちゃに大喜びでした。ただでさえ荷物が多い泊りがけの研究会。最低限のおもちゃで済むのはとてもありがたいことです。
さらに、シッターさんは遺伝研での保育経験が豊富なベテランの方でしたし、スタッフの方も非常に親切で温かく、娘はすぐになじむことができました。彼女は、初めての場所や人とはなかなか話せない性格なので、これにはおどろきました。
子供への説明
学会の託児に慣れていらっしゃるお子さんは大丈夫かもしれませんが、初めての場合は、子供自身にも不安と緊張があるかもしれません。我が家も、託児を利用するのは初めてで、さらに長時間(1日目6時間、2日目4時間)でしたので、以下のような事前説明をしました。
1. 私が泊りがけで出張に行く。
2. 娘も一緒に行くことができる。
3. 私が仕事の間は「おしごと保育園」で先生(シッターさん)と長い時間を過ごすことになる。
上記の説明をした上で、子供自身に仕事についていくか家で留守番をしているかを選ばせ、娘は一緒にいくことに決めました。「おしごと保育園」という言葉が良かったのか、娘は、自分も一緒に仕事をするつもりになり、使命感をもってはりきっていました。
研究所の方たちにとても親切にしていただき、相当楽しかったようです。娘の遊んでいる様子の写真を平田先生にお渡ししてありますので、もし、この制度を利用されることがあればお子さんに説明されるときにお使いください。
研究および子供への効果
まず、何より大きかったのは、研究会に完全に集中できたことです。次に、子供をきっかけに思いもよらない話を、参加者の方とすることもできました。皆さん、一流の研究者ですが、親としての側面が垣間見えてとても親近感が湧きました。そのほか、現在子育て中の女性研究者の方と話す機会もできました。みなさんいろいろ工夫されています。こういった情報をシェアできる機会にもなり、とても良かったです。
娘に関しては、親の仕事を間近で感じることができ、少し成長したように思います。次の学会も一緒に行く!と張り切っています。
まとめ
研究者にとって、研究会に参加して他の研究者たちと情報交換をすることはとても重要です。しかし、子育て中の場合、遠方の集会に参加するのは途端に困難になります。集会に参加している間、「子供をどうすればよいか?」という問題が常に付きまとうからです。今回、遺伝研に訪問した外部の研究者が、託児システムを利用できることに感激しました。画期的な制度を立ち上げられたメンバーの方の努力と、使用の機会をいただけたことに心から感謝しています。子ども連れの研究会が一般的になれば、子育て中の研究者のみならず、これから子どもを持つかもしれない若手の研究者にとっても大きな励みになると思います。私も、自身の所属機関の多様性推進室に今回の経験を報告し、活動の輪を広げていきたいと考えています。
保育室の様子。明るく、安心できる雰囲気のお部屋です。長時間でしたが、終始ごきげんでした。素敵なおもちゃや本がたくさんあります!全部、寄付なのだそうです。また、水廻りもばっちりです。お湯も出ます。