果実食性食肉目パームシベットの未舗装道路の利用

Gravel road use of a frugivorous carnivoran, the common palm civet

調査地:タビン野生動物保護区 Tabin Wildlife Reserve

調査期間:2010-2011

伐採された木や収穫されたアブラヤシの果実を運び出すため等の理由で、サバ州の森林保護区内外には、よく未舗装道路が見られます。

そうした未舗装道路を歩いていると、種子が入った糞やネコ類の糞などがよく落ちています(左の写真)。

調査地タビン野生動物保護区の未舗装道路上にあった、種子が入った糞の90%以上がパームシベットのものだったという報告もあります(Nakashima et al. 2010)。

なぜパームシベットの糞は未舗装道路上でよく見つかるのでしょうか。

未舗装道路近辺(左)と森林内部(右)のようす

まず、パームシベットは未舗装道路を好んで利用しているのかを

1. 森林内部と未舗装道路上を夜間に歩いたときのパームシベットの遭遇頻度

2. 森林内部と未舗装道路上に箱罠を仕掛けたときのパームシベットの捕獲頻度

3. 発信機を装着したパームシベットの森林内部と未舗装道路近辺の利用頻度

の3点から評価しました。

未舗装道路沿いの森林に多く分布しているパイオニア植物のEndospermum diadenum

Ficus septicaで採餌するパームシベット

その結果、すべての項目において、パームシベットは活動時間帯に未舗装道路を選好的に利用していることが分かりました。

パームシベットが、普段(交尾期を除く)の活動時間帯に考えていることはおおむね「おなか減った」でしょう。そこで、パームシベットの基本的な食物である果実の生産量を、森林内部と未舗装道路沿いの森林で比較しました。

その結果、未舗装道路沿いの森林の方が果実生産量が多いことが分かりました。つまり、パームシベットが未舗装道路を好む理由の一つに、未舗装道路近辺の方が食物が豊富である、ことが挙げられます。

他にも、未舗装道路は開けているので糞の臭いが拡散しやすいことから、パームシベット同士や他の動物と、臭いを介したコミュニケーションを行うため等が理由として考えられます。

この結果は、2014年出版 Raffles Bulletin of Zoology 第62巻379-388ページに掲載されました。論文を読む