Makino & Sakai (2005) の解説

修士の研究(Makino & Sakai 2004)では、同じ植物集団を利用するマルハナバチが、互いに重なり合いを少なくするように空間を利用していることを見つけました。この結果をふまえれば、ハチの採餌域(≒利用する株の数)は、他個体がいなくなることで広がると予想されます。この予想を実験的に確かめるため、大型の網テントのなかで複数のハチを採餌させ、一定時間が経過したのち、1個体をのぞくすべての個体を除去し、残りの1個体の採餌域の掲示変化を調べました。この操作を5個体について行った結果、すべてのハチが採餌域を拡大しました。この結果は、送粉者が空間利用パターンの調節して、餌をめぐる競争を緩和していることを示す決定的な証拠であると同時に、送粉者間の競争が植物の花粉分散に影響する可能性をつよく示唆しています。

他個体除去による採餌域拡大の例

各株への訪問回数を円の大きさで示す。他個体除去に反応して採餌域が拡大し、これまで全く利用しなかった株も訪れるようになる。

ブルーサルビアで採餌するクロマルハナバチ

Makino TT and Sakai S (2005) Does interaction between bumblebees (Bombus ignitus) reduce their foraging area? : bee-removal experiments in a net cage. Behavioral Ecology and Sociobiology 57: 617-622 [link]