雨上がりのボルネオ熱帯雨林 @ Deramakot
ほかの野生動物と同じように、マレーグマは森の中でひっそりと生きています。
私自身、片手で数えられるほどしか出会ったことがありません。
そんな彼らの存在は、自動撮影カメラや痕跡から知ることができます。
マレーグマ @ Tabin
足跡 @ Deramakot
マレーグマの写真は自動撮影カメラで撮影したものです。体毛が短いため大きな爪が目立ちます。カッコイイですね。
足跡の写真は分かりにくいかもしれませんが、上のほうに深い爪痕が見えます。
ハチミツを食べるためにハリナシバチの巣を襲った痕跡1 @ Malua
この破壊力!大きく鋭い爪と丈夫な歯を使って樹皮を剥ぎます。樹洞の入口が広がることで、ムササビやサイチョウなどの棲み処になります。このように物理的に環境を変える動物は「生態系エンジニア」と呼ばれています。
ハチミツを食べるためにハリナシバチの巣を襲った痕跡 2 @ Imbak
樹洞下側には後足で踏ん張った爪痕(写真中央)、樹洞両側には前足で幹を抱え込んだ爪痕(写真右)が沢山ありました。この破壊っぷり、まさにマレーグマのなせる業です。
マレーグマとココナッツ @ BSBCC
樹皮剥ぎと同じように、好物のココナッツ・ジュースを飲む時は、爪と歯を器用に使って硬い実に穴を開けます。
樹上のマレーグマ @ BSBCC
3頭います
マレーグマは木登り上手です。たとえミツバチの巣が木の上の方にあっても問題ありません。ただし、森にはマレーグマでも登れない木があります。メンガリス(マメ科)という名前の超高木です。
メンガリスの木 @ Deramakot
オオミツバチの巣(半円黒色部分)
メンガリスは、樹皮がスベスベで硬く、大きくなるとマレーグマでも歯(爪)が立ちません。それを知ってか知らでか、オオミツバチは好んでその大枝に巣をかけます。ちなみに、サバ州では樹高87mのメンガリスが記録されています。
糞と糞から出てきたリュウガン(ムクロジ科)の種子 @ Deramakot
マレーグマは、種子散布者としても、森の中で大事な役割を担っています。種子を散布してくれる動物がいなくなった森は、空洞化した森「Empty Forest」と呼ばれ、新しい木が育たないため衰退の道をたどると考えられています。
BSBCC の放飼場(柵の右側部分)@ Sepilok
セピロク森林保護区の一部をそのまま利用しています。元々はスマトラサイの放飼場でした。マレーシアのスマトラサイは、野生個体が2015年に絶滅し、飼育個体はサバ州タビン野生生物保護区にいた最後の1頭が2019年に死亡しています。この森でマメジカを調べていた学生の頃、ここでスマトラサイをよく眺めていました。20年後、まさかマレーシアから姿を消すとは思いも寄りませんでした。
スマトラサイのようになる前に、マレーグマを知り・守り、彼らの家でもある森を残したいですね。
Bornean Sun Bear @ BSBCC