(2)種まきから収穫まで
当農園でおこなっている稲作の基本動作です。
1. 比重選(種籾を選別する)
●良い種籾は重い
重い種籾は胚乳養分が充実しているため、発芽率および発芽勢が良く、生育が良好だ。
なお、この胚乳には葉4枚分の養分を保有しており、その後は根からの養分吸収に移行する。
●比重選用の塩水を作る
水20Lに塩4.5~5kgを加え、比重1.13の塩水(卵が浮く程度)を作る。
●重く塩水に沈む種籾を抽出する
塩水の中に種籾を入れると、軽い種籾は浮く。この浮いた種籾は除去する。
※約100㎏の種籾を処理しているが、選別に半日程度かかる。
●酢で消毒
酢は、殺菌効果があり料理の調味料として重宝され、また農業においても殺菌剤(農薬)として利用されてる。
なお、農薬取締法において、酢は特定防除資材(特定農薬)として区分され、水稲栽培では主に種子消毒として多くの利用実績と効果が認められている。
今回、希釈率100倍で種籾を浸漬し消毒する。
3.浸漬(籾に吸水させ発芽の準備を整える)
●スムースな発芽とタイミングを揃える
籾は、一定期間水に浸すと胚乳のデンプンが糖化され、休眠状態から目覚る。
ー>吸水15%:胚は生理的・形態的に発芽準備に入る
ー>吸水25%:発芽に達する
・このとき、①胚乳(デンプン)は、酵素の働きで糖に分解され②グルコースへと変化する。
①デンプン
↓<--------------酵素(アミラーゼ)の働きで糖化
②グルコース(糖)
なお、低温(10~15℃程度)での十分な浸漬は吸水から糖化までが揃い、発芽準備に入るまでの個体差をなくす効果がある。
●浸漬日数の算出
水に浸す時間は水温の積算で100℃程度(品種により異なる)。例えば、水温20℃であれば浸漬日数
は5日(20℃×5日)。
4.催芽(籾を発芽直前の状態(ハト胸)にさせる)
九州の平坦地では浸漬の最終段階(5日目程度)で、胚の部分がふっくらと膨らみ(鳩胸状態)芽吹いてくる。
これにより、播種後の発芽を円滑にできる。
5.播種(苗箱に均等に種をまく)
苗は稚苗(葉齢3.5)を目指す。
・播種量:110~120g/箱
・床 土:1.5cm
・覆 土:0.5cm
6.育 苗(折衷苗代)
西日本の暖地では、本田にて発芽前後までは生育状況みながら湛水と干しを繰り返し管理する。
播種から30日前後で田植えを行う。
7. 代掻き・田植え
●代掻き
田植え前の整地作業である代掻きには次のような目的がある。
・苗を植え付ける際の苗転びを防止する
・雑草を除去し苗の成長阻害要因を排除する
・田面を平らにし水管理をし易くする
など
九州の平地には外来種であるジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)が生息しておりイネを食害する。 このためできるだけ田面を平らにし浅水にしておかないと幼少期の苗は食べつくされる。
●田植え
1㎡あたり16株(条間30㎝、株間21㎝)で田植えをします。
7.生育診断(穂肥判断)
●葉色診断
葉の色で窒素の効き具合を見る。カラースケールで葉色が4以下のとき穂肥を行うが、今回5程度った
ため穂肥は必要なしと判断。
なお、カラースケールが無い場合は畔草(4程度)と比較すると良い。
●幼穂診断
まず、イネを1本根っこから引き抜き鞘を剥いて幼穂の生育状況を確認。
施肥のタイミングは幼穂が1cm程度までに行う。 これより遅くなるとタンパクが高くなり、食味が低下
するようだ。
「トマトは水を切って糖度を上げ、イネは窒素を切って食味を上げる」というのが今の稲作の肥培管理の方向性だ。
8.収 穫
収穫の目安は、出穂後の積算気温1,000~1,050をおおよその目安とし、実際の籾の黄化状況(85~90%)で適期を見定めるようだ。
1)積算気温:1,210℃、 出穂は7/25、収穫は9/9
2)黄 化 率:90%程度
3)含 水 率:22%程度(収穫時)
9.低温乾燥、籾摺り
乾燥は仕上がり水分値を15.7%(16%以下であることが法令の定め)で行う。
低温乾燥(30℃前後)は通常の倍の時間がかかるが、食味低下を防ぐためには譲れないところ。早く乾燥させようと乾燥温度を上げるとお米の表面の保水膜が壊れ、食味が低下してしまうのである。
1)まずは送風のみで3時間程度運転し籾の乾燥度合のバラつきを少なくする
2)遠赤外線でゆっくり低温で乾燥(乾燥時間は2日程度)
3)17.5%で完了
4)乾燥した籾は籾摺り(岡本商店に委託)にてモミガラをはぎ取り玄米に
10.選別
色彩選別機にて不良米や異物を除去し、農産物検査はすべて”一等米”である。
滑り台を流れ落ちるお米の外観をCCDカメラが瞬時に確認し、不良品や異物をエアーで弾き飛ばします。極めて高性能な空気銃です。
11.保存(冷蔵庫)
玄米は冷蔵庫に入れ14℃で休眠保存。
これにより虫やカビの発生を防ぎ、新鮮でおいしいお米をご提供できる。