第3回勉強会議事録
【日時】 3月20日(日) 14:00-16:00
【講師】加藤(山内)珠比 様
【講義内容】サブサハラアフリカにおける農業補助金政策と貧困・食料安全保障について
サブサハラアフリカの農業投入財(改良種子・化学肥料)補助金と食料安全保障の歴史
l 独立以降、工業化社会を目指し外貨を獲得するため、また食糧安全保障のため国家による農業投資、農業保護政策を実施。
l 腐敗や非効率な管理により効果が低く、市場のゆがみが発生することから構造調整により農業保護政策撤廃
l 但し、食糧安全保障の観点からマラウィ、ザンビアでは補助金を引き続き配布。
l 債務帳消しによりSSAの財政上の余裕が出たことからアフリカ各国で再開。
マラウィの市場志向型農業投入財補助金
l 1999年に小規模農家向け補助金が開始。
l 2004-2005年度に市場志向型補助金を開始
l メイズ輸入国から輸出国への転換も進み「成功」例となる。
他のサブサハラアフリカ諸国への影響
l マラウィの成功例を受けザンビア、ガーナ、ナイジェリア等で市場志向型補助金を投入。(E-Voucherの活用)
農業投入財に係る既存研究
l メイズ生産性・生産高向上により貧困削減されたとの評価もある一方、Elite Captureによる非効率性など政治的な議論が中心。
タンザニアケーススタディとその調査結果
l 2008年の食糧価格高騰に対し、食料安全保障のために、2009/10年度より市場志向型補助金(National Agricultural Input Voucher Scheme (NAIVS))を導入
l タンザニア・ルブマ州の農業投入財補助金の農家の貧困および生計に与えた影響について、経済分析、社会、政治関係性分析の観点から定性・定量調査を実施。
l 調査結果:プログラムデザイン不明確、実施が計画通りでない、多くの腐敗・不正行為、Elite Capture、メイズ生産高・生産性、食糧安全保障への影響につき州レベル・世帯レベルで異なる、貧困削減への効果につき定性調査結果と定量調査結果のかい離が発生、ジェンダーによる相違(女性世帯主は補助金受領困難)、補助金の間接的効果(農業賃金上昇、メイズ価格下落、投入財価格(肥料価格上昇、改良種子下落)、民間セクター開発に貢献)
調査結果からの政策提言
l ターゲットを絞った補助金政策、民間セクターの活用、腐敗・不正を防ぐための仕組みづくり、金額ベースではなく量指定のVoucherへの転換、そのほかの生産性向上のための施策が必要。
調査手法の提言
l 政治経済社会分析を含めたMixed methods調査手法による包括的な評価が必要。