IDDP国際機関への就職ガイダンス 議事録

日時:2014年2月21日(金)17:00 – 20:00

会場:University of Sussex, Fulton 104

日時:2014年2月22日(土)14:30-17:30

会場:University of East Anglia in Norwich

日時:2014年2月23日(日)14:00-17:00

会場:日本クラブ、London

講師:

本田 英章 (ほんだ ひであき) 氏

外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 二等書記官

山脇 晃明 (やまわき こうめい) 氏

国連WFPギニア事務所 財務官(Finance and Administration Officer)

国際機関への就職ガイダンス (講演者:本田英章氏)

今回の講演会趣旨

- 外務省として、今後より多くの日本人に国際機関で活躍してほしいという意向があり、そのために、国際機関への日本人就職希望者へどのようなサポートが出来るかを明確に提示したい。

外務省国際機関人事センター

役割:

・外務省内に設置されており、国際機関への就職を目指す人へのサポートを行う。東京、ジュネーブ、ウィーン、ニューヨークに担当を配置し、JPO の実施など、採用促進に向けた業務を行っている。

・国際機関に勤務する日本人職員への支援

国際機関の2つの職種

専門職職員:外務省が応募を促進する職種、専門性が必須

22,000人のうち、日本人は764人(財政的貢献度から考えると少なく、現時点の2倍以上の人数がいてもよいはず(国連事務局発表の「望ましい職員数」からも明らか))

少ない理由:

*言語の問題

*地理的問題:日本国内で国際機関に触れる機会が少ない(西欧諸国では身近な存在)

*西欧諸国では流動的な仕事に対して抵抗がないが、日本国内ではなじみがない

・修士号が必須

・職務経験が必須(実力をつけてから、国際機関に就職することが基本)

一般職職員(Gスタッフ):専門職職員のサポート、現地採用なので日本国内のポジションでない限り採用されるのは困難

国際機関の採用の仕組み

・国際機関での就労未経験者は、基本的にエントリーレベル(P2)への応募を行うのが一般的。

→ 国際機関での就労経験が無い状態(=内部での人脈がない)で、P2 以上への

就職はほぼ不可能

・ポストが空き次第、都度募集:ウェブサイトにて掲示

・即戦力必須:専門性は既に持っていることが前提、能力開発は自己責任

・異動・昇進はない:自己責任で空席ポストへ応募(経験豊富な職員でも週に1度はウェブサイトへの新規公募をチェックしている)

・内部候補者と外部候補者の差:内部の方が有利、または外部候補者でもネットワークを持っている人は仕事を得やすい

→ 職務経験がずっと日本などで、人脈構築ができていない場合はどれだけ優秀でも採用プロセスにおいて不利

・本部は高倍率(そもそもポストが中々空かない):一生フィールドで仕事をする人は少なく、次第に本部へ流れてくる傾向にあり→若い人はフィールドで経験を積むことを推奨

・公募の採用プロセス:公募⇒書類選考(機械的、即戦力<勤務経験>+多言語、高学歴有利:公平性)⇒筆記、面接(skypeインタビュー、3-5人←内部候補者が断然有利)⇒採用

・筆記試験は選考ごとに毎回行われ、主にポストにおける専門知識や、ケーススタディ(こういう状況下であなたはどうしますか、といった内容)などが問われる。P4 やP5 と言った高いポジションでも筆記試験は実施されることが多い。

YPP試験

・受験資格の壁は低く、大学学部卒で受験可能。ポスト毎の募集ではなく分野別の募集となっており、筆記試験で専門知識を問われる。

・国連内で職員の少ない国籍のみを対象に(過少代表)行われる試験:2011,2012年度は日本人合格者なし(世界で4万人ほど応募あり、日本人は200人ほど)

・書面審査⇒筆記試験⇒面接試験

JPO派遣制度

・外務省による制度であり、日本政府によりJPOの人件費が負担されること、日本人の中での競争であることが特徴。競争率は10倍程度。

・現在の日本人国連職員の多くがJPO 経験者であり、正規職員、契約ベース(6か月)等で国際機関に残って勤務している。

・正規職員ではないが、ほぼ同様の勤務経験を積める

・JPO勤務開始後も、日本政府代表部や大使館からの支援あり

・最大3年の派遣(基本は2年+延長申請を行う)

国際的な勤務経験の積み方

・国際機関でのインターン経験:2-6か月が主流

・国連ボランティア(UNV):関連する職務経験が必要

・平和構築人材育成事業:UNVへの派遣制度あり

・在外公館の専門調査員(外務省正規職員のステータスはないが、職務内容はほぼ正規職員と同等となる)

JPO試験対策

・語学力の向上:ドラフティング能力が重要、英語以外の公用語(特にフランス語)があると強み

・書類準備・面接対策(特に志望動機をしっかり確認すること)

・キャリア構築(関連する職務経験:NGO経験、青年海外協力隊なども含む)

質疑応答(Sussex)

1) JPO派遣先について:ほとんどの国際機関へ希望可能。ただし、日本政府とJPO派遣取り決めを結んでいない国際機関への派遣は、新たに取り決め締結が必要になるため、すぐに派遣というわけにはいかない。詳細は外務省のウェブサイトでも要確認。

2) JPO派遣形態:P2ステップ1よりスタートし、次年度はステップ2

3) 研究所での研究(PhDと併用して)は職務経験として加算されるか:給料をもらって研究者として研究していれば職務経験としてカウントされるが、関連性が重要

4) JPOの修士修了資格について:9月にコースを修了し、1月の卒業の場合、応募は可能なのか―公式文書の入手が可能であれば可能、一次審査(書類)通過後に要提出。不可能な場合、次年度への応募を検討→後日、外務省より正式回答受領(3/26)。2014年9月末までに、在籍する大学院発行の修士号取得見込み証明書の提出が必須。論文審査未完了で証明書取得が難しい場合は、学歴要件を満たさない。(ウェブサイト:http://www.mofa-irc.go.jp/jpo/boshu.html

5) JPOの面接について:国際機関OBOGを含めた数名による面接。日本語と英語両方で行われる。【質問内容】志望動機、研究分野、勤務経験等、専門性の話、難しいシチュエーションでの対応等(山脇氏の場合、MDG関連でどの分野が大事だと思うか、等)

6) 英語試験について:サマリー作成等(授業でのエッセイ作成等の能力レベル)

7) 駐日事務所とカントリーオフィスでのインターン等の違いはあるのか:駐日事務所はリエゾン的仕事が多いことや、比較的日本語が使用されるという違いはあるが、仕事の進め方等は国際機関では同じはず。

質疑応答(UEA)

1) YPP やJPO の応募資格年齢を超えた場合、国際機関での職務経験を得られる場はあるか。

A. 年齢制限が普通はないインターンやUN Volunteerなどが良い経験となる。大学・研究機関のネットワークを利用するのも1つの手である。

2) JPOの選考過程において、スコアでの足切りはあるのか。

A. JPOの選考プロセスにおいてTOEFLスコアでの足切りはしていない。TOEFLスコアも参考にするが、それよりも大事なのは英語で実務ができるかどうか。実際にJPOとして派遣された方を見るとTOEFL 100点程度ある方が多いという印象だが、スコアのみで英語力を判断することは全くない。

質疑応答(London)

1) 持病を持っている場合、JPO選考に影響するか。

A. JPO派遣国の選考に関係する可能性はあるが、JPO選考には関係しない。選考通過後に通知し問題があると困るので、最初から申告しておく事。

2) 英語の資格要件について、TOEFLの代わりにIELTSの使用は認められるか。

A. IELTSは認められていない。また、現時点でIELTSを取り入れることは予定していない。

英語試験は一つの目安であり、実際に仕事において英語を使えるか、が重要である。 特に国内での就学・勤務経験のみ持つ人は、英語力の証明が重要となってくる。

3) パンフレットにて、いくつかの国連機関(UNHCR, UNICEF, WFP, UNDP)の日本人職員の6-8割はJPO経験者とあるが、それ以外の職員はどのように採用されたか。

A. 可能性として、UNボランティア、平和構築人材育成事業、過去に行われていた試験で採用された方などが考えられる。採用ミッションと呼ばれる国連機関が日本人を特に対象として行う選考もある。

人道支援機関で働くこと (講演者:山脇晃明氏)

世界食糧計画(WFP)の活動

・飢餓のない世界を目指し最前線で活動する国際機関:食糧支援、食糧を運ぶことは継続性が求められる(シリア、フィリピン台風、ハイチ地震など)ため、組織も大きい(1,400人程度が専門職職員、一般職職員も含めると全体で14,000人弱)。70か国程度で活動を行っている。

・分担金制度を採用しておらず、主に各国ドナーの拠出金に頼っている予算システムのため(年度末にゼロになる)、ドナー次第で支援内容・対象が変わることもある。

緊急援助活動(自然災害なら3か月-1年程度、避難民などに関する事業はさらに時間が必要):大きなシェアを占める活動であり、災害発生後48または72時間以内に援助内容(人的・物的)を決定する。物的支援=食糧、シェルター、生活必需品の運搬など。

→現在の主な活動先:シリア、南スーダン、中央アフリカなど

復興支援活動:緊急援助活動のフォローアップ、メディアの情報が減少するために、緊急援助活動に比べると財政確保が困難

開発支援:小規模農家の支援、学校給食や栄養の分野などで、中長期的に貢献。

スペシャルオペレーション:ITネットワークサービス、航空サービスを他の国際機関や政府援助機関・NGOなどへも提供(WFPは緊急人道支援の際最初に現地入りする機関であるため)

ギニアについて

ギニア:1958年独立(「アフリカの年」前に独立のため、開発を進める機会を失った(フランスによりインフラ破壊、民族問題あり)、人口1,000万人ほど。

・クーデターなどの政情不安が過去にあり、インフラ整備の遅れなどから経済開発が遅れたままであるが、天然資源は豊富(雨がよく降るため肥沃な土壌→農業、ボーキサイト、希少金属など。)

・雨季―インフラが整っていないため、食糧の運搬が困難になり、価格高騰が起こる。

WFPギニアでの事業分野

・首都と4つのサブオフィス

学校給食: 国内の小学校4000校のうち、3000校が支援を必要としているものの、財政的な理由で800校程度を支援している。学校給食支援は児童のインセンティブになるだけでなく、就学率などに好影響を与えることが統計的に見て取れる。

栄養支援:ヘルスセンターでHIV患者、子ども等を対象とした食糧配布や栄養食品の提供。栄養についての知識を啓蒙。栄養分野において類似のプログラムを展開しているUNICEFは病気になり食糧を自力で取れない子供への支援を行い、病気の状況から回復した幼児たちへのサポートはWFPが行うといった役割のすみわけがなされている。その他、母子栄養プログラム(First 1,000 days) と呼ばれる妊娠初期の段階からの栄養支援プログラムを実施している。

農業復興:農業器具(鎌や如雨露等)の配布、技術トレーニングの提供→生産性向上、収入向上、地元食材を活用した学校給食支援、エンパワーメント(女性グループ支援→発言力を持てるようになる)など。

業務紹介:財務官(Finance Officer)

・国事務所での外国人正規職員は三名(事務所長、副所長、自分)であるため、幅広い職務を担当する

・財務・会計:プロセス重要(契約、入札等)、銀行等とのやりとり

・調達・購買:備蓄、食糧をはじめとした各種調達、品質チェック。ワークショップ開催時の会場確保等も調達業務に含まれる。

・総務・ICT:サブオフィスの消耗品(車両メンテナンス)、ICTインフラの管理等

・マネジメント:現地職員の管理、人事に関する意思決定、在庫管理(月1回)

→ 外国人の目が入ることで、不正が起きないための仕組みづくりにつながる

国際機関を目指すためには

・インターンシップ経験:履歴書上職務経験にカウントされずアシスタント業務ではあるが、内部に入ることで国際機関での業務の流れが分かるし、実際にどのような雰囲気かを体感できるため良い経験となる。組織内のタイミングで選考がいつになるか分からないため関心のある機関に積極的に応募するとよい。

・途上国での経験:WFPを含め多くの国際機関では途上国の現場の仕事がメインであるため、実際に行ってみてどんな環境かを知ることは非常に有益。

仕事の魅力・重要なこと

・情熱: 現地政府の政策への提言など仕事の規模の大きさは魅力的。理想の実現のために、地道にしかし着実に取り組める環境である。

・好奇心: 異なる文化・言語の国で仕事をする機会がもらえる。現地の人たちとの触れ合い、文化に興味をもって来るもの拒まずという姿勢で臨むこと。

・絆: 人的ネットワークの大切さ。現地スタッフとの交流、その他の国際スタッフとのチームワーク、また、日本大使館含め日本とのパイプを生かすこと

質疑応答(Sussex)

1) JPOという近道によって何か不利なこと、軋轢はあるのか。

A. 外部候補者がWFPで正規職員としての仕事を得ることは非常に難しいため、正規職員のポスト獲得としては有効なステップであった。

2) プロジェクト形成の流れ:

A. 国事務所がプロジェクトを提案し、地域事務所や本部事務所で検証する(必ずしも国事務所に各分野の専門家がいるわけではないので、必要な場合は本部や地域から派遣あり)

質疑応答(UEA)

1) 民間と国際機関での会計基準は違うか(民間企業での会計業務経験者より):

A. 確かに国際機関の会計基準は公会計と呼ばれ若干異なるが、採用プロセスにおいてはどの国の会計資格でも資格として扱ってもらえるし、基本知識があれば民間企業の会計基準と公会計との違いにもすぐ慣れる。

2) 開発学を専門とした際の強みについて(開発学専門の国際機関職員は少ない?)

A. 開発学を専門として国際機関で活躍されている方はたくさんいる。その専門性を活かした実務経験が採用の際は重要(応答:本田氏)

3) ギニアに駐在中の国内外出張や日本帰国の機会:

A. 今の職場に他の財務官がいないため現時点では出張はないが、本来であれば2,3か月に一回は国内出張がある。その他、研修やトレーニングとしてダカールの地域事務所や本部ローマへ行く機会が1年に1、2回ほどある。日本への帰国は年次休暇を使うことができる。生活環境が困難な国に駐在している場合は、さらに数週間に一度国外に出るための休暇期間(かつ手当)保障制度がある。

4) ギニアでは、どのようにして食糧供給から農業支援への一貫した支援を行っているか

A. プロジェクトを行うための資金確保が難しいことから、ギニアにおいては食料提供のプロジェクトから農業支援への移行へはまだ手が回っていない。

5) 東北の震災復興支援等の経験は採用プロセスにおいてプラスとなるか

A. プラスになるのは間違いないが、その経験が途上国経験の無さをカバーするということはない。途上国経験とは特にインフラ基準の違いであり、日本や先進国と全く違う生活環境を経験したことがあるかどうかが重要。

6) 日本人国際機関職員に共通する能力

A. 柔軟性というのが最も重要な属性ではないか。違う考え方・生き方・環境へどれだけ対処出来るか。

7) JPO を目指す方へのキャリアパスアドバイス

A. JPO試験に通りやすいから何らかの資格をとる、というのは本末転倒で、当然だが自分の好きな分野を専門とするのが大事。しかしポジションを得ることに限っていえば、財務・法務等の特定スキルは確実に需要がある分野であり、資格があれば有利なことは間違いない(山脇氏)。

質疑応答(London)

1)英語以外の外国語 (フランス語、スペイン語など) のレベル:

A. 国際機関勤務の要件として第二外国語が必要といった場合に例えば、フランス語では、目安としてTOEIC換算500~550点ほどの能力があればひとまずは最低の要件を満たすことになる。もちろん常に言語運用能力を高める必要性はあるが、最重要の英語に比べるとそれほど高いレベルが常に必須というわけではない。

2) ギニアの援助で資金欠如が問題と話にあったが、現地のNGOや政府とパートナーシップは結んでいるか。

A. プロジェクトを行う際には、常に現場レベルでのパートナーシップを結んでいる。例として、5年間のWFP学校給食プロジェクト終了後、現地政府にそのプロジェクトを続けてもらうといった移行がうまく進んでいる国もある。ただ、現地政府にプロジェクトのオーナーシップを渡すには時間をかけて適切に行う必要がある。 いずれにせよ、プロジェクトを計画/実行する際、現場に詳しい当事国のNGOや国際NGOとの協力は重要である。

3) 支援対象者を増やすにはどうすべきと考えるか。

A. 支援国である各国ドナーへその対象国における援助の必要性を訴える。恒常的に問題を抱えている国だと注目を浴びにくく、資金不足が解消されずプロジェクトを進める点で難しい側面もある。WFPの得意とする緊急食糧支援分野だけではなく、開発支援分野も行っていることを認知してもらうことで、WFPの活動の幅が広がる。

4) ワークライフバランスはどのように保っているか。

A. 時には12時間以上働く事もあり、国事務所における仕事は大変であるが、1年で6週間の休暇が保証されており、定期的に他国への旅行や日本への帰国もできる。現地では、他の国際機関・NGOや大使館の職員とのつながりもあり、料理、スポーツなど趣味を共有し仕事以外の時間も楽しんでいる。

5)仕事ではどのように自身をアピールし、またどのように人脈を作っているのか。

A. 実際に自己主張は得意でなく今でも苦労しているが、まずは自身の仕事・与えられた仕事をきちんとこなし、またそれ以上の仕事も積極的に引き受けるようにしている。仕事の成果を通じて、能力やパフォーマンスを評価してもらうことがアピールの代わりになる。

人脈ネットワークに関しても同様で、まずは仕事においてその成果を認めてもらうことで、上司、他の職員との信頼関係を構築するよう心掛けている。