「MA Development Practice」International Development , University of East Anglia

(イーストアングリア大学)

丸山 遥 (まるやま はるか )さん

執筆:2019年7月

1.自己紹介

日本の大学で経済学学士課程履修中より開発学に興味を持っていたため、卒業後は専攻の変更がしやすい英語圏の大学院で開発学の勉強をしたいと考えていた。大学卒業後はストレートで進学せず、社会人経験をつみながら留学資金を稼ぐためにメガベンチャーで勤務。退社後にUEAに留学。

2.所属コースの概要

概要・特徴:UEAのDev(School of International Development)の新設コースで、開発学の基礎知識だけでなく実際に国際開発の現場で起こっている問題やプロジェクトが与えるインパクトについての知識を深め、クリティカルシンキング(UEAでは日本語訳の”批判的思考”ではなく、疑問や興味を深く考え、結論を出すまで追及していく事と説明される)していく事が当コースの全必修科目を通して求められる。Development Practiceコース新設理由は近年の開発が国際機関だけでなくNGOやその他組織によってリードされているという背景があるため。

弱み:プロジェクトデザインや開発学のセオリーに対するクリティカルシンキングする事が他コースと比較して多いが、データアナリティクス・データコレクションに関する授業は自ら進んで受講するかセルフで学んでいくしかない。しかし、2018年度のコース生全6人中4人が数学や統計学の前知識を持っていなかったため、ほとんどのコース生がリサーチ系の授業を受講していなかった。

3.授業の概要

・授業名:Critical Issues in Development PracticeⅠ

・内容:プロジェクトデザインの方法や開発現場で起こっている問題に対しての理解を深めていく。

・感想: 将来NGOや開発実践者になりたいと考えている人には受講を奨励したい授業。受講者は開発分野での職務経験がある人もない人もいるため、コースワークのグループ分けは経験者と未経験者がある程度バランス良く配分される。セミナーとコースワークでグループワークによる学習が多く、実践での知見を持つ学生も多いため、初めて開発を勉強する人でにもメリットが大きいと思う。この授業のゴールは成績に反映されるグループアセスメントとして開発プロジェクトを作成することで、そのための基本的な開発分野のプロジェクトデザインの知識を学んでいく。コースワークのためのグループは国籍も母国語もバラバラになることもあれば、メンバーが興味のある分野によっては偏ることもある。レクチャーでもセミナーでも実務経験者の経験談を元に進む事が多いので面白いと思う。成績評価はエッセイ50%、グループアセスメント(コースワーク)50%。MA Development Practice必修科目。


・授業名:Critical Issues in Development PracticeⅡ

・内容:Ⅰがプロジェクトデザインにウェイトが置かれていたのに対し、開発プロジェクトが齎す結果や問題点をⅠの応用として学んでいく。

・感想:司法。政府、エイド、国際機関、様々な視点から途上国の人々の生活や開発関係者の現状について学ぶ。CIDPⅠ同様、レクチャーラーが実務経験の豊富な講師である事が多く、その方々が現在進行形で取り組んでいるプロジェクトや過去に携わったプロジェクトについてのポイントや懸念点などを聞ける機会が多い。成績評価はエッセイ100%。今年はゲストスピーカーとしてMeToo運動のインフルエンサーとなった方がレクチャーをしてくださったりと、アカデミックな学習法ではなかなか見つけにくい比較的新しい活動や新たに見えてくる問題点などを知ることができる。


・授業名: Econometrics Methods in Development

・内容:開発分野における基本~応用の計量経済学の学習。Stataという統計ソフトを利用する。

・感想:MSc Development EconomicsとMSc Impact Evaluationの必修科目の一つ。この両コースで入学が決まっている学生は、Pre-Masterコースからの参加が奨励されている。実際のところ、この授業を受けるにあたり前知識として統計学、最低でも数学3・Cまでくらいの知識は持っておく事が奨励される。しかし、前知識がほとんどなくても教授やセミナーの講師も質問すれば丁寧に教えてくれるので、挑戦はしやすいと思う。

4.大学紹介

・Devに特化したCVやResumeの書き方のレクチャーやインターンシップ先の紹介に積極的かつ全学生への就職支援・起業支援が手厚い方だと思う。

・レクチャーであっても少人数の授業体制をとっている大学の一つで、教授と学生の距離が近くて、質問などもしやすい印象を受ける。

・ヨーロッパでも上位に入る環境系の学問に強い大学なので、環境問題への取り組みに対して大変ポジティブ。例えば、最新の大学院生専用寮では浄水システムや自家発電システムがあるなど。

5.その他

穏やかな田舎町で治安はイギリス国内トップクラスで良い。また、良い意味で娯楽に乏しい穏やかな田舎町にぽつりと在る大学なので、勉強に打ち込みたい方にはおすすめできる。

学生寮に関しては値段の割に設備がいま一つという声を日本人から耳にすることが多々ある。SpareRoomやAirBnBなどでプライベートフラットを探してそちらに住む方がランドリーとキッチンは使いやすいと思う。

6.留学をめざしている人へ一言

どのような留学形態であっても、①ある程度具体的に将来のキャリアやゴールを明確にする事、②①を達成するための研究テーマを具体的にしておく事、の2つが事前にできていれば今後の学生生活の質が変わってきます。

また、ディスカッションに慣れておくに越したことはないと思います。