「MSc Sustainability and Management 」Department of Geography, Royal Holloway, University of London

(ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校 地理学部 「持続可能性と経営 修士課程」)

根生 あゆみ (ねおい あゆみ)さん

執筆:2019年7月

1.自己紹介

幼少期に写真家小松義夫さんの地球人記という写真集を見て世界中の人々の暮らしに興味を持つようになった。日本の大学で国際系学部の開発経済学のゼミに所属し、アジア諸国を対象とするインフラ、防災対策国際NGOであるCITYNETのユースメンバーとしてフィリピンやネパールでの研修に参加したことから将来のキャリアを国際開発の方向へと考えるようになった。卒業後、職務経験無しで渡英。就職してからの留学も検討しており、特に開発学系は職務経験なしで海外大学院に進学することには賛否両論あったが、留学できるチャンスの方が目の前にあると感じ、体力があるうちに留学したいと考えたため進学決定に至った。また、早く社会人経験を積みたいという想いがあったため、一年間で修了し、開発や環境への意識の高いイギリスを大学院留学先に決定した。留学開始前まではケニアに渡航し、教育NPOと環境コンサルティング会社に従事した。最初はジェンダーと開発のコースを専攻予定であったが、ケニアでの活動を通して気候変動や環境問題への関心が高まり、ジェンダーよりもメガトレンドであると考えたためサステナビリティを学ぶべく本校を選択決定した。

2.所属コースの概要

・クラス構成は15人程で8割イギリス、2割インターナショナル(EU圏、アフリカ、アジア)

・コースでは主にサステナビリティやサステナビリティ経営、ビジネス倫理、気候変動について学ぶ

・今年度はアジア系の生徒は自身のみで、毎年度イギリス人が多い

・どの授業でもグループワークやプレゼンテーションが多い

・ターム3制度で課題は比較的多くボランティアプロジェクトもあるためタイト

・地理学部のマスターコースはどこも少人数制で教授との距離は非常に近い

3.授業の概要

・授業名:GG5307 Sustainability, Development and Governance (20 units)

・内容:1 x 1500 formative essay and 1 x 3500 word essay (100%)

・感想:サステナビリティとはから始まり、あらゆる社会に蔓延する環境問題について政府がとるべきアプローチについて学んでいく。政府の政策に着目しており、下記のGG5308と比較すると面白い。


・授業名:GG5308 Sustainability, Development and Society (20 units)

・内容:One 2500 word essay (67%) & one 1000 word policy briefing (33%)

現代の地理的問題を解決するために地域社会と環境がどのように密接に関わっているのか理解を深める。リスク社会、持続可能な都市とはなんなのか、そして企業の活動が環境に与える影響が含まれる。また、持続可能な開発へのコミュニティベースのアプローチに焦点を当てながら、家庭およびコミュニティレベルでの持続可能な開発への挑戦についても理解する。

・感想:地域社会や企業がとるべき行動について学べるためより実践的であり、ケーススタディを用いながら土地の再開発事業やジェンダー、LGBTQ、人口問題、都市の緑化事業、食品廃棄物事業等、非常に多岐に渡って知識を身に着けていくことができて興味深いものであった。


・授業名:MN5571 Business Ethics and Enterprise (20 units)

・内容:1 x 3000 word individual essay (40%) and 1 x three-hour individual examination (60%).

このコースの目的は、社会におけるビジネスの役割を倫理的観点から理解するために必要な道徳的枠組みを身に付けることである。コースは大規模な上場多国籍企業、中小企業、ソーシャルビジネスや家族経営、フェアトレードなどの企業を含むさまざまな種類のビジネスをカバーする。これらの組織タイプのさまざまな問題を理解し、ビジネス倫理(功利主義、義務論、ケアの倫理、正義の倫理、規範倫理学、ステークホルダーセーリエンス等)のフレームを用いてさまざまな観点から道徳的な議論をしていく。

・感想:社会におけるビジネスの意義と倫理観を重視したビジネスについて学ぶことでこれまでのビジネスに対する嫌悪感が払拭された。サステナビリティを推進すべく起業家精神にはビジネス倫理が必須であると感じ、企業の経営に関心が湧いた。経営方針などを決定する根幹として非常に重大で感慨深く、今後も見聞を広めていきたい分野となった。


・授業名:MN5337 Project Work for Managers (I): Sustainability and Societies (20 units)

・内容:One 3000 word Group Project (30%) one 2hr exam (70%)

大規模な多国籍企業における倫理と企業の社会的責任(CSR)がサステナビリティ管理においてどのような効用があるのかについての理解を深める。経済的利益と環境的利益の二分法を評価しながら、消費や持続可能性などの問題に注目。また、環境と社会の持続可能性を支えるさまざまなビジネス倫理についても学ぶ。

・感想:主に企業のCSRやIRについて学び、グループエッセイのプロジェクトでそれらの知識をアウトプットすることができた。具体的には外部コンサルタントとしての立場を担い、自動車産業会社の最高経営責任者に向けてその会社の持続可能性への業績を分析し、アクションプラン作成し提言することを目的として、レポートの作成、プレゼンテーションを行うというものだ。4人でチームを編成し、何度も意見の交換をし合って満足のいく現実的なアクションプランを作成することに邁進した。膨大なデータや学術文献に目を通す事で必要な情報をピックアップする能力が研ぎ澄まされた。また、そしてプレゼンテーションをすることで発表の事前準備や、発表後の質疑応答のスキル、データやグラフを視覚的に用いるスキルが身に付いたと感じている。


・授業名:GG5304 Volunteer project (10 units)

・内容:1 x 250 word project summary and risk assessment (formative); 1 x Volunteer Project poster (25%); 1 x 2000 Volunteer Project report (75%) and presentation

持続可能性に関連した実務経験を積むための実践的な経験を目的として一人ひとりが企業やNPO,

NGOなどでボランティアプロジェクトに着手する。このプロジェクトは卒業後の雇用性を高め、実践的な経験を積む機会を提供している。

・感想:私はOxfam Internationalのチャリティショップでリサイクル事業、フェアトレード商品管理を行った。地域密着型のサステナビリティアプローチについて理解を深めることができたと感じている。


・授業名:GG5402 Research Methods (including dissertation training) (10 units)

・内容:1 x 2500 word extended dissertation research proposal (50%), an oral presentation (50%) Formative statistical exercises.

データ収集とその後の分析のための適切な定量的/定性的研究方法に関して正当な選択をするために質的、量的調査方法を学ぶ。SPSSソフトを用いて統計データを操るトレーニングも行う。

・感想:統計のトレーニングについては、数学知識が乏しかったため中学高校の数学を学習し直す必要があり、専門的な統計用語に慣れることや理解に時間を要した。


・授業名:GG5407 Climate Change, Governance and the Seas (20 units)

・内容:1 X 3000 word slide pack (100%)

気候変動と海のガバナンスは、現代密接に関わり合った問題であるため、開発、地政学、安全保障を理解し、統治問題、課題について学ぶ。

・感想:二人の教授によって前半は海、後半は気候変動と上手く展開されていた。領土問題や気候難民問題、海洋生態など幅広く学ぶことができ、海洋問題に興味を持つきっかけになった。また、研修で国連管轄である国際海事機関(IMO)に訪問することができる。


・授業名:GG5403 Dissertation (60 units)

・内容:Dissertation 1 x 1000 word formative dissertation proposal, dissertation (100%)

4.大学紹介

大学までは、ロンドンウォータールー駅から電車で40分程。ロンドン郊外で、ウィンザーとヒースローの中間に位置するロイヤルホロウェイ校のキャンパスは世界で最も美しいキャンパスの1つと呼ばれている。ダウントンアビーやアベンジャーズなどの撮影がされ、公立学校や壮大な邸宅として映画やテレビなどに登場している。キャンパスは135エーカーの広大な公園のようになっていて、200種の低木や150種の樹木、様々な花が生息している。図書館から荘厳な旧屋敷校舎を眺めながら勉強するのがお気に入りだった。

5.その他

キャンパスがあるのはエガムという住宅街で、富裕層も多く住むエリアで治安は非常に良い。キャンパス内には銀行、学生協、バー、カフェ、食堂、ジム、スタバ、図書館(24h)がある。エガムのハイストリートにはテスコやウェイトローズなど大型スーパーマーケットがあるが、キャンパスから買い物に行くとなると徒歩20分程必要。バスで15分程のところにステーンズというショッピングモールや、25分程でウィンザー城まで行ける。私は時々気分転換のためにウィンザーパークまで散歩したりお花を見に行ったりしていた。娯楽が少ないため勉学に集中できる環境と言えるであろう。

6.留学をめざしている人へ一言

自分と同じ情熱や様々なバックグラウンドを持った教授やコースメイトに出会い、共に勉強できることはこの上ない喜びです。留学の目的や学校選びは人それぞれですが、学ぶことの楽しさを存分に感じ、自分の信念を持って突き進んでください。留学中、本当に様々な年齢層や人種、職歴をお持ちの方にお会いし、学びの門戸は広く設けられており、いつからでもチャレンジできるのだと確信しました。自分に合った大学院やコースに出会えるといいですね。そして、IDDPの運営スタッフとして一年間活動できたことも非常に良い刺激になりました。是非スタッフになって自分の専門分野に関する講演などを企画したり、また別の開発分野に関する知見を広げたりしてみてください。また、イギリスの冬は非常に寒く、日照時間が短く雪も降ります。そのため自分が機嫌よく勉強できる環境を選択することを強くお勧めします。