「MA Gender Analysis, School of International Development」University of East Anglia

(イーストアングリア大学 「国際開発学部 ジェンダー分析修士課程」)

古瀬 由佳 (ふるせ ゆか)さん

執筆:2018年4月

1. 自己紹介

高校卒業後、1年程イギリスにて語学留学。帰国後は3年半ほどホテルのフロントスタッフとして勤務。その後フェリス女学院大学へ進学し、大学在学中はアムネスティインターナショナルのファンドレイジング部門にてアルバイト、男女共同参画センターや国際機関などでインターンシップを経験。職場での経験から女性の社会参画に関心を持ち、人権、ジェンダーについて学ぶ上で、日本国内の女性の権利や労働環境、教育制度について疑問を持つようになり状況を改善するためにはどうしたらよいのかを模索する上で、海外から見た日本や、他国の状況についてもっと勉強したいと思うようになりました。また開発学を学ぶにはイギリスが最高の環境であると考えた結果、現在に至ります。


2. 所属コースの概要

私のコースは開発学部の中でもかなりの小規模で、イギリス・韓国・メキシコ各1名、私を含めて日本人2人(今年は珍しいようで、今までは毎年1人だったそうです)、その他アフリカ人と7名のみですが、Social Developmentのコースと必修科目が被っていることが多く、2つのコース合わせたHousekeeping sessionと呼ばれるミーティングや修論のサポートのための授業があるため、両コースの教授、多様な国籍の友人から刺激をもらうことができます。

コースの強みとしては、世界的にもまだまだ数少ないジェンダーに特化したコースで、ジェンダーを専門にした2人の教授からサポートをもらいながら勉強できることだと思いますが、一方でこのコースでなくても開発学部の学生であればジェンダーの授業の履修は出来るため、このコースでなくてもいいのでは、、、と思う点はあります。また、ジェンダーというコースであるからこそ女性しかいないという点は弱みのひとつに挙げられるかもしれません。


3. 授業の概要

・授業名:Gender Perspectives in International Development(必修)

・内容:開発におけるジェンダー分析の背景や知識について、貧困、暴力、宗教、ジェンダー学における男性性など開発研究におけるジェンダーと様々なテーマとのつながりについて学ぶことの出来る授業です。家族制度、権力とエンパワーメント、環境等、ケーススタディを使用しながら行います。

・課題:グループプレゼンをもとにしたエッセイ(グループプレゼンという名の2時間枠のセミナーを行う。簡単に言えば、与えられたお題について先生の代わりに授業をして、ディスカッションをリードするものです。ちなみにお題は4つあり関心のあるものを選ぶことはできますが、評価は0です。このセミナーをベースにしたエッセイの提出が評価される)と持ち込み不可の期末試験(1時間)

・感想:主にフェミニズム視点から世界の現状についてケーススタディを用いながら学びを深めることが出来ましたが、難しかった。特に前半は理論が多く、ついていくのが大変でした。また先生はパワーポイントを使用せずひたすらマシンガントークで進んでいきます。余談ですがネイティブの学生でもノートをとるのが大変だと言っていました。この授業を取るには覚悟が必要かもしれません。通常であれば週1回の授業のところ、このモジュールは週に2回これに加えて隔週でセミナーがあり、とにかくとてもつらかったです。笑


・授業名:Rural Livelihood and Agrarian Change(選択必修)

・内容: 地方に住んでいることが原因で起きる貧困と飢餓、またそれらがもたらす不平等、健康問題や紛争、移民問題、階級・民族・ジェンダー格差などについてアマルティアセンのケイパビリティアプローチを筆頭にしたセオリーやフレームワークを使いながら政治的背景や社会構造など分析することを学ぶ授業です。

・課題:グループプレゼンとエッセイ(2500字)

・感想:20人以下の小規模の授業で、ネイティブが2人だけしかいなかったこともあり、(担当教授もインド人)とてもリラックスしながら授業を受けることができて、とてもよかったです。教授もとても話しやすく、論文の指導をお願いすることにしました。授業と別でゲームをしながら学ぶワークショップがあり、クラスメイトとも仲良くなれるとても良い機会でした。


・授業名:Welfare and Evaluation in Development(選択)

・内容:介入が被支援者の生活の質の改善に貢献したかを評価するための基本となる枠組みや評価手法を学ぶ授業です。証拠に基づく政策(Evidence-based policy)、プログラム評価、貧困概念の考え方、系統レビュー、費用便益及び費用効果分析等を学ぶことができます。

・課題:グループプレゼンをもとにした簡単なサマリー(グループプレゼンの評価は0)とエッセイ

・感想:コース名にWelfareとありますが、主に評価のやり方や概念について学ぶコースです。きちんとシラバスを確認していなかったので初回から圧倒されました。開発分野での定量的評価は大学の強みでもあると後から知ったので、修士論文や将来を考えた際に必要だと考えている方へ履修をお勧めします。ちなみに担当教授(Non-native)の英語は少し癖があります。


・授業名:Gender, Diversity and Social Development(必修)

・内容:ジェンダーを含んだ社会政策と実践、それらの関係性や重要なアクターについて学ぶことを目的とした授業です。国際社会、国、組織と異なるレベルから考えた分析が出来るようになることが求められます。

・課題:グループプレゼンをもとにした2000字のポリシーブリーフノート(グループプレゼン評価0)とエッセイ(2500字)

・感想:毎週の授業と並行して行われたセミナー(4人に分けられた各グループで関心のあるテーマについて掘り下げていき、最終的にグループプレゼンをする)があり、インプットとアウトプットをしながら理解を深めていくことができ、とても良かった。


・授業名:Rural Policies(選択)

・内容:農村地域における地方開発政策の重要性とその政治についての理解を目的とした授業です。アクターと政策が地域発展にどう貢献するのかを理解できます。

・課題:グループプレゼンとエッセイ(2500字)

・感想:ケーススタディをたくさん用いて授業が展開されていくため、理解が進みやすくとても面白かったです。既存の地域開発政策の分析と評価をするエッセイと、新しい政策について考えるグループプレゼンがあり、学んだ知識をどう応用することが出来るかという経験ができた。


・授業名:Advanced Qualitative Research and Analysis(選択)

・内容:名前にあるように、ある程度定量分析の知識があることを前提に授業が進んでいきます。定量分析の手法について深く学ぶことの出来る授業です

・課題:グループプレゼンとエッセイ(3000字)

・感想:実際に教授がフィールドワークを行った際に得た研究マテリアルやインタビューのスクリプトなどを使用して分析をする場が毎回あり、非常に学びのあった授業です。多くの学生は1コマ3時間という驚異の授業で毎回集中力を保つのが大変、課題が鬼だと言って1週目が終わってから履修をやめる人が多く、めずらしく日本人一人だけでしたが、履修してよかったなと思います。また、サンプルエッセイを提供してもらえ、どのようにエッセイを書けば高得点がもらえるのかがわかるようになっており、噂とは全く違った、とても楽しく一番勉強になった授業でした。


4. 大学紹介

多くの学生がすでに開発の分野で経験を積んでいる、また志望していてインターンの経験などを持っていることもあり、現場の話を聞くことが出来る機会が多いのは非常に恵まれた環境だと感じます。理論だけでなく、ケーススタディを多く反映した授業は学生の今後のキャリアについて考えられたカリキュラムであると思います。また授業以外にも様々なテーマに関するセミナーが毎日のように行われており、自分の関心を最大限広げることの出来る環境だと思います。

UEAは留学生が多いこともあり、留学生向けのサポートが非常に多いと感じます。ネイティブとの交流にはバディプログラム、英語力アップを目的とした勉強会や大学主催のイベントに積極的に参加することをお勧めします。


5.その他

・寮生活:大学内にある、大学院専用の寮で生活していますが、基本的にほとんどがアジア人(中国人)のため、語学を伸ばすことを考えて寮生活を希望する場合はその点考慮が必要です。また、ランドリーが全ての建物にないことも非常にストレスに感じている部分です。ちなみに大学院生専用の寮に住んでいても、すぐ向かいの建物には大学生が多く住んでおり毎日夜遅くまでパーティーをしていてとても賑やかです。もう一年ここにいるのであれば絶対にオフキャンパスを選択します。セキュリティ面や図書館や教室が近いことは非常に便利ですが、優先順位を明確にし、自分にあったお部屋を探してください。

・Norwich:小さな街ですが、以前はロンドンの次に栄えていた過去もあるそうで、歴史的な風景が今もいろいろなところにたくさん残っています。自然も多く、お天気の良い日は公園でのお散歩が最高!キャンパス内には湖がありとても素敵ですが、市内には公園が多くあるのでお気に入りの場所をぜひ見つけてほしいです。大学から街までバスで20分程ですが(バス代が日本より少し高いのが難点)、街まで行けばレストランやパブ、映画館、ボウリングなどストレス発散するには十分な施設が揃っています。日本食レストランやアジアン・中華食材店もいくつかあるので、日本食に困る心配はありません。

・学外生活:大学以外でも属すことの出来る場所があると心強いかもしれません。いろんなコミュニティやボランティア、アルバイトなどNorwichにはたくさんの機会があります。


6.留学をめざしている人へ一言

楽しいことはたくさんありますが、それ以上につらいことがいっぱいの1年間になると思います。日々の生活(自炊とか掃除洗濯とか身の回りのこと)に加えて、勉強・修士論文・就職活動と毎日があっという間に過ぎていきます。どんなことでもいいので自分なりのストレス発散方法を持っていることは大切かなと思います。あとはどうしてイギリスの大学院で勉強したいのか、なぜこの分野を勉強したいのか、たまに振り返りをしたり、常に答えを持っていると苦しいときに踏ん張れると思います。

当たり前なことですが、こちらに来たら英語が話せることが前提で全て進んでいきます。開発学部は留学生が多いこともあり、セメスター1では無料で語学の授業を受けることができ、誰でも参加できるアカデミックサポートなど充実はしているものの、授業の予習・復習・課題でいっぱいいっぱいで、あまり活用出来ませんでした。これを書いている今はすでに試験が終わり、修論に取り掛かり始める時期ですが未だに英語への抵抗感が強く残っています。私は人一倍要領が悪く、英語も全然なので、これを読んでいるみなさんにこんなアドバイスをするのはおかしいのですが、出来る限り英語力の強化、日本語での知識をなるべく増やしておくことをお勧めします。それか自信があまりない方は、日本語の自分の関連分野の本をいくつか持参することも忘れずに。今は簡単にAmazonでも取り寄せできますが、輸入税が意外とかかります。私は留学以前に先輩にアドバイスをもらっていたのにどうしたらよいのかわからず結局大した準備をせずに来てしまったことをとても後悔しています。

私は担当教官ともっと話をしていたらよかったなあと後悔しているので、気軽に話をしてみてください。入学前にジェンダーの先生は怖いと聞いていたので変に委縮してしまい、あまり勇気がなかったのですが、どの教授もみなとても優しいことに最近気が付きました(遅い)。些細なことでも心配なことはまず相談してみてください。1年間という限られた時間を有効に使ってください!

ジェンダーのコースでなくても、気軽にIDDPまたはfacebookよりご連絡頂ければ私の出来る範囲でお答えします。頑張ってください!