「BA in Development Studies」University of Amsterdam

(アムステルダム大学 「開発学 学部間交換留学 」)

渡辺 淳(わたなべ じゅん)さん

執筆:2017年4月

1. 自己紹介

学部生として三年の8月から約一年間アムステルダム大学に交換留学をしました。留学をしたいと思った理由は開発学を学び、世界の貧困や格差についての理解を深めたいと思ったからです。あえてこの分野で有名なイギリスやアメリカではなくオランダを選んだ理由は、世界の中でも際立ってリベラルな文化や政策に興味を持ったからです。その他充実したプログラムや現地の英語力の高さも考慮して決めました。


2. 所属コースの概要

私は交換留学生として、Exchange program Social Scienceというプログラムに所属し、開発を含め、政治学や文化人類学など多様な社会科学のコースから自由に授業を選べるものでした。私は社会科学部の中の一分野である国際開発の講義を多く受講しました。

強みはどの授業も少人数でディスカッションやプレゼンをする機会が多いことだと思います。逆に弱みは学生数に対して受講者数の枠が狭いため、履修したくても履修できない授業がでてくることかもしれません。授業にもよりますが、開発の授業はほかの授業に比べ留学生の割合が多いと感じました。開発学入門の授業は先進国だけでなく、ブラジルやコロンビアなどの途上国、そしてシリアやイエメンなどの紛争地域からも学生が来ており、とても国際色豊かな環境でした。


3. 授業の概要

・授業名:Introductory Course: International Development

内容:前半は「開発」の定義や歴史などの大きな枠組みを学び、後半は移民・難民、都市化、紛争などテーマを掘り下げて学びます。レクチャーとセミナーが週一回ずつで前者は大教室の講義形式で、後者は15名ほどの少人数で、プレゼンやディスカッションを行います。評価はプレゼンと二つの筆記試験で決まります。

感想:レクチャーの内容はわかりやすく、ディスカッションも充実していたのでとても満足した。またセミナーグループで、実際にNGOで働いた人の話や、紛争地域から難民として来た学生に色々話がきけたのがためになりました。

・授業名:Education and International Development

内容:レクチャーとセミナーが週一回ずつで、新自由主義的な考えかたが発展途上国の教育にどのような影響を与えたかについて学びます。実践や現場に近い内容をイメージしていたので想像とは違う内容でしたが、現代の教育の理念の基盤となっている大きな枠組みを学ぶことができたのは貴重な経験だったと思います。個人的には、EFAとMDGs以降、発展途上国の女性の初等教育の就学率が男性のそれとほぼ同等の水準まであがったのに女性蔑視の文化が解消されていないという問題が興味深いと感じました。評価はプレゼンとテイクホームエグザムで決まります。

感想:国連での勤務経験がある教授が授業を担当していて、ためになる話をたくさん聞けました。学生たちのモチベーションも高く、充実していたと思います。

・授業名:Introduction to Conflict Studies

内容:レクチャーとセミナーが週一回ずつで、毎週トピックとレクチャーが変わることが特徴です。レクチャーでその週のトピックの内容を大まかに学び、少人数のセミナーでプレゼンやディスカッションをします。評価は二回のプレゼンと2000文字のエッセー一本と筆記試験で決まります。

感想:毎週トピックが変わる分、人種やジェンダー、セキュリティから民主主義までいろんな観点から学べる点が強みですが、逆に個々のトピックの内容が入門的すぎたり、専門的すぎたりするのが弱みとも言えると思います。個人的には講義の内容が浅かったところや、逆に自分の理解が追い付かなかったところは自習で補えたので不満はありませんでした。


4. 大学紹介

-キャンパスについて

僕が学んだキャンパスは、アムステルダムの中心部から自転車で10分ほどのアクセスのいいところに立地していました。キャンパスの中には運河が通っており、芝生もきれいでとても気に入っています。

-校風について

オランダの大学の特徴はコマ数が少ないかわりに、課題が多く、学生が自発的に勉強する環境を作り出すことを目指しているみたいです。またコマ数は少ないものの個々の授業は少人数制で、学生と教授との距離が近く、教授もやる気があって生徒おもいの方が多いと感じました。


5.その他

土地が平坦で比較的小さな都市なので、自転車でどこでも回れます。また、緑が多いきれいな街並みで治安も良いため、生活するには素晴らしい都市だと思います。スーパーや駅など市内の表示はほとんどオランダ語ですが、レストランのスタッフ、タクシー運転手、自転車屋さんのおじさんを含め、みな英語が上手なので英語さえ話せれば困ることはないと思います。


6,留学をめざしている人へ一言

勉強をしっかりすることももちろん大事ですが、それ以上に色んな人に会い、意見を交換し、人脈を広げることが留学で一番大事だと思っています。たしかに開発学を学ぶことで知識が増えたり、新たな洞察が得られたりすることはありますが、開発にまつわる諸問題の根本的な問題解決の方法を提示してくれることはまずありません。そのため、様々な人と議論し、自分の頭で考えることが重要だと感じています。特に開発学のコースはどの大学でも国際色豊かでユニークなバックグラウンドを持っている人が多いのでどんどん自分から話しかけ、輪を広げていくことをおすすめします。アムステルダムに留学している自分がはるばるロンドンにあるIDDPに参加したのもこのためです。