「Ecological Applications」Department of Life Science, Imperial College London

(インペリアルカレッジロンドン 生命科学部 「エコロジカルアプリケーションズ」)

藤澤 正路 (ふじさわ まさみち)さん

執筆:2015年1月

1.自己紹介

こんにちは、藤澤正路(ふじさわ まさみち)と言います。2014-2015年度、Imperial College London, MSc Ecological Applicationsに所属しています。私は大学時代、北海道で水産学を学んでいました。私は大学4年次に研究の面白さにのめり込み、そこから大学院での勉強というものを少し意識するようになりました。結果的に研究成果が社会に貢献できる形で世に出ることとなり、大学院への意識は高まりました。また、モチベーションの一つとして、大学在籍時のフィールドにおける経験から、「環境」 と 「ビジネス・人間社会」の相互関係はもっと良くなるはずでは?と疑問を持ちました。一度は自身の背景と関係の薄い業界に就職したものの、その疑問はなくなりませんでした。そこから自身のこと、未来の社会のこと、日本との対比のことを考え、英国大学院だと判断しました。その後、一年強の英語等々の準備留学を挟んで、今はImperial College London で勉強をさせてもらっています。

2.所属コースの概要

自分の所属しているコースは一般的な修士と若干異なり、毎日朝から夕方まで講義+実践があります。

授業は、生態学・進化学・社会学などから微生物学までの理論、それらを応用した各地におけるケーススタディや行います。実践では、理論を導くためのツール(統計など)の使用、グループディスカッション、フィールドにでて実際に社会と繋がることなどがあります。

理論の作り方を学ぶことから、それを実践に移す・社会に適用させる方法を学べるのはこのコースの強みだと思います。一方で弱みは、まだ新設されてから数年しか経っていないコースであり、まだまだ改善の余地があることです。

コースだけで見ると、今年の生徒は6人しかいません。ですが、授業・キャンパスを共有している他のコースまで広げると100人程度です。生徒のほとんどは生態学的なバックグラウンドを持っていて、おおよそ5、6割が英・米国出身です。職業経験者は少なからずいますが、学部卒業から直接来ている人もかなり多いです。

3.授業の概要

・授業名:Planning and Policy (計画と法律)

・内容:2週間の講義→実践形式の授業。実際に発生している案件へのアドバイス発表あり。

・感想:「自然の保護・地域社会の保護」 と 「新たな建物の建設や開発」との衝突を調査しました。実際に起きている案件を扱わせてもらい、地域住民への発表やデベロッパーとのコンタクトなど、学生の枠を超えた経験でした。建設計画地の訪問から、その計画の詳細・歴史の確認、現地の生態系の調査、住民たちへの聞き込み、法律との照らし合わせ、それをまとめたレポートの作成を行いました。案件に深く関わっている人でも、以外と現状や詳細な部分は未確認の部分もある、ということが実感できたのが大きな収穫です。なお、この授業は他のコースから独立した、別枠のものでした。


・授業名:Biological Computing in R (Rにおける生態学的コンピュータ解析)

・内容:統計ソフトRを使ったデータの解析がなぜ必要なのか、またそれの実践。

・感想:量的な(数字などに裏付けされた)分析を行うための必須ツールの使用方法を学びました。客観的な情報を評価でき、非常に有用なツールです。数学的な知識が必須です。


・授業名:Demography and management (人口動態と管理)

・内容:世界各地で起きている、人間活動の海・陸への被害のケーススタディ、ディスカッション

・感想:人間の活動が海へ与えたダメージの歴史、それらがどういった経路で人間社会に影響を与えるか、などを確認しました。また、未来的に計画されていることから、それらによって得られる「人間の利益」と「環境のロス」はどれぐらいか評価し、どこまでを許容して進むべきかのディスカッションなども行いました。

4.大学紹介

自身の学部はImperial College Londonに所属しているものの、サウスケンジントンとは離れたところにキャンパスを持っており、そこがメインの活動の場となります。

見える範囲が全て学校の敷地であり、キャンパスは森林に囲まれ、敷地内には大きな池や実験用農地もあります。自然の存在を実感しながら学ぶには非常に魅力的な場所です。Imperial College Londonは旧ロンドン大学の一部ですが今は独立しています。大学院の中では(おそらく)珍しく、英語圏から生徒の割合が非常に高く、日本人は自分を含めてキャンパス内に2人しかいません。離れたところに位置したキャンパスのため、多くの生徒が互いに顔見知りであり、一種の村のような社会を形成しているのが特徴かと思います。

5.その他

自然の中に道路が走り、道路脇に民家がある、という形です。最寄りの駅まで片道2kmというのが最大のネックですが、キャンパス内に寮があるため、通学時間3分はとても便利です。

6.留学をめざしている人へ一言

日本でしか手に入らない専門書の内容や、日本でしか得られない知識は仕入れておくに越したことはないです。学んだもの・ことが日本的なものなのか、世界共通のものなのかを意識しておくことをお勧めします。また、ここを見てらっしゃる以上、留学に強い関心や何かしらの意思・情熱があるかと思います。留学に関する情報は不確定なものが多くて非常に悩ましいです。でも課題を出来るだけクリアにして、一つずつやっていくとゴールは少しずつ近づいてきます。頑張ってください。それでは、どこかでお会いできるのを楽しみにしています。