「MSc Development Economics」School of Oriental and African Studies, University of London

(ロンドン大学 東洋アフリカ学院 「開発経済学 修士課程」)

梶 由利子(かじ ゆりこ)さん

執筆:2014年3月

1.自己紹介

学部は、日本の大学で国際関係を専攻、交換留学でアメリカの大学(国際開発学部)に1年間留学していました。卒業後は、証券会社に約5年勤務しました。職務経験を積んでから修士を取りたいと考えていたため、退職後日本でアジア経済研究所の開発スクール(IDEAS)に通い、2013年9月より留学しています。


2.所属コースの概要

SOASの経済学部には途上国地域に関連した開発経済学・ファイナンス・環境などのコースがあり、純粋な経済やファイナンスの理論と開発の両方の側面を学ぶことができることが強みだと思います。ただしSOASの経済学部はSOAS特有の「Heterodox(異端派)」アプローチをとる教授が多く、新古典派をはじめとする主流派経済理論を学ぶとともに、それらを批判する理論が多く取り上げられます。

Development Economic コースは必修科目が4科目(ミクロ経済、マクロ経済、計量経済I・II、成長と開発)、選択科目が4科目で、Term1,Term2に4科目ずつ履修します。Term3は試験期間です。「成長と開発」を除いた必修科目は純粋な経済科目で、途上国や開発へのフォーカスはほとんどありません。選択科目で興味のある地域やトピックを履修します。経済学部はSOASの他学部に比べても授業や課題、試験が多く、選択科目の取り方にもよりますが、1つのテーマを深く学ぶというよりは、広く浅く学ぶことになります。また、実践より理論重視です。

授業形式は講義2時間+チュートリアル(セミナー)1時間×10週が一般的です。チュートリアル(セミナー)は、学生のプレゼンやディスカッションを行います。プレゼンは評価に入らず、評価はエッセイと試験で、試験の比重が大きく、ライティング力が重要になります。

本コース開始前の9月に数学と統計の準備コース(3週間、必修)があり、希望者は本コース開始後にも数学と統計のクラスを受けることができます。

学生は経済学部全体で約80名、学生のバックグラウンドは多様で、世界各国から集まっていますが、ヨーロッパ、南アジア、中東の学生が多いという印象です。日本人は私のコースは私1人、学部全体で2人です。学部を卒業後すぐに修士にきているか、1-3年の職務経験(インターン、英語教師、リサーチ機関、金融機関など)のある学生が大半です。


3.授業の概要

授業名:Preliminary Course (Math and Statistics)

内容:本コース開始前の準備クラス。経済数学(行列・微分)と初等統計。

感想:修士課程の評価には入りませんが、最後に試験があります。あまりにも点数が低いとコースの変更を勧められるそうですが、そのような学生はいなかったようです。逆に試験で一定の成績をとれば自由にコースの変更ができます(Course Convenerの承認が必要)。基本的な内容ですが、広範囲を短期間でカバーするので、事前に勉強していないと苦労すると思います。


授業名:Financial Systems and Economic Development

内容:資本主義経済における金融、金融仲介機能の役割の変化、途上国と先進国の関係や金融危機の考察。授業は週に講義2時間、チュートリアル(セミナー)1時間。評価はEssay (4000 words) 30%、Exam 70%。

感想:グローバルな金融部門の拡大において、経済主体の行動がどのように変化しているのか、途上国がどのような立場におかれているのかといった分析が面白いです。


授業名:Macroeconomics

内容:ケインズ以降のマクロ経済学史、ビジネスサイクル、成長理論、開放経済など。マクロ経済。授業は講義のみで、週に2時間×2回。評価はEssay (3000 words) 30%、Exam 70%。

感想:数式はあまり使われず、理論史や思想史に近いとおもいます。主流派に対する批判的な理論が多く取り上げられるところがSOASらしい授業です。


4.大学紹介

SOASは教授陣、学生ともに世界各国から集まっており多様性に富み、フレンドリーな雰囲気が校風だと思います。大学の規模や校舎そのものも小さいためアットホームな雰囲気です。キャンパスは大英博物館の近くにあり、他のロンドン大学のキャンパスが隣接しています。他のロンドン大学の図書館も利用できます。Academic Englishのクラスやワークショップも多数開催されており、積極的に活用すると役立ちます。教授達との距離が近く、授業やオフィスアワーなどで質問や議論をすることが歓迎されています。


5.その他

LSEやUCLが近く、その他の研究機関等で、パブリックセミナー等が頻繁に開催されています。大学付近には10~15分ほど歩けば手頃なカフェやレストランがたくさんあります。また、メインキャンパスから徒歩20分ほどの距離にもう1つのキャンパスがあり、そこで授業がある場合は移動が必要になります(近いうちにメインキャンパスに統合される予定です。


6.留学をめざしている人へ一言

大学選びでは留学によって何を得たいのか、修士を修了した後に何をしたいのかという視点も持って選ぶとよいと思います。イギリスの大学は基本的に修士が1年間なので、始まると本当にあっという間です。大学選びや留学準備を入念に行い、充実した留学生活をお送りください!