「MA in Migration Studies, Department of Geography」University of Sussex

(サセックス大学 「地理学部 移民政策研究 修士課程」)

匿名

執筆:2013年4月

1.自己紹介

日本の外国語学部英米語学科を卒業後、School of Oriental and African Studies, University of London のFoundation Diploma for Postgraduate Studiesにおいてアカデミックスキルや国際関係と国際法の基礎を学び、サセックス大学で移民学修士を専攻しています。進学を目指したきっかけは、学部生の時に無国籍の問題に関心をもち、国家とは何か、国籍とは何か、国民とは何かを考えた末に、日本の閉ざされた中ではなく、更に知識を深めたいと思ったからです。また、無国籍の問題に限らず、国境を越えた難民を含む人の移動は、国家レベルのみならず、私たちの日常にも大きな影響をもたらす問題なだけに、今後の移民に関する知識の需要は益々増えるのではないかと考え、修士号として専門知識を付けようとサセックスにたどり着きました。

2.所属コースの概要

私の所属するサセックスの移民学は大学内に移民研究機関が設置されているため、オープンセミナーなどが幅広く行われています。マスターのクラスメイトは約12名(フルタイム・パートタイム込)です。アジアからは私含めて3名、他はみな西洋地域出身者であり、移民の問題がヨーロッパで特に湧き上がっているからなのかなと思う反面、中東・アフリカ出身者が今年は在籍されていない点は少し残念でした。

コースの強みは、Global Studiesというスクールに所属しているため、分野の垣根を越えて学べる点だと思います。例えば、サセックスの移民学はDepartment of Geographyに所属していることになりますが、選択科目の際はGeographyからのみならず、法律・国際関係・文化人類学・開発学などから選択することも可能です。また関連している分野であれば、交渉で他のDepartmentから授業も受講可能です。これは移民の問題が、一つの科目内で収まるものではない意味で、とてもこの大学の強みだと考えています。

反面残念であったのが、私の場合選択科目で取りたかった授業が第三希望まで同じ時間で被ってしまい受講ができなかった点です。もう少しフレキシブルに授業時間を割り振ってくれれば良いのに…と思いましたが、移民学の生徒のためではなく、Global Studies全生徒が母体なので、授業が被ってしまうのは仕方のない事なのかもしれません。

3.授業の概要

・授業名:Theories and typologies of migration

・内容:移民に関する理論を広く浅く扱いました。例えば、『トランスナショナリズム』『移民と開発』『移民に対する国家の対応』『社会資本』『市民権』『アイデンティティとカルチャー』『移民と統合』『EUレジ-ム』などです。期間内に評価に入らない任意の2000wordsのエッセーの提出がありましたが、成績は5000words 一本で評価されました。

・感想:毎週違う移民に関する理論を学びました。非常に全ての授業で興味深かったですが、ヨーロッパ諸国のみが対象で、かなり西洋中心的だなとも思いました。ですが、ヨーロッパの移民問題を知る上で非常に役に立ったと思います。

・授業名:Management Migration

・内容:移民管理に関して学びました。チューターのバックグラウンドが法律だったこともあり、国際法・国際人権法・国際移民法などかなり法律ベースで授業が進みました。とくに難民、無国籍、legal limboなどの権利に関してと、また終盤にはEUの組織やEU法なども取り込まれました。評価は5000words一本です。

・感想:私は特に法律ベースでも移民を考えてみたかったので、この授業はとてもおもしろかったです。

ただ、難民には触れましたがあくまで移民管理の授業だったので、先進国がどのように移民を管理すべきかに焦点が当てられました。

・授業名:Refugee and Development

・内容:難民に関する問題を『保護する責任』『南北問題』『ラべリング』『難民キャンプ』『難民とディアスポラ』『ジェンダーと難民』など手広く扱いました。成績はグループプレゼン一本と4000wordsのエッセー一本で決まります。

・感想:非常に面白かったです。難民というテーマで様々な方面から扱われました。また、授業内でもゲストレクチャラーが来てくださり、環境難民、国内移民(この回は国際移民しか頭になかった私にとって目から鱗でした!)など、開発というよりも移民学寄りの授業ではありました。

また、term2は前述の通り、Global Studiesの全生徒が希望すれば自分の専門ではない授業も選択可能です。そのため、クラスメイトのバックグラウンドは社会開発・紛争、セキュリティー、開発、文化人類学または人権が専攻の生徒など様々で、各々の視点から意見交換できる点は、新たな見方を発見できた意味でも非常に有意義でした。

授業名:Peace Processes and Post-Conflict Reconstruction

内容:紛争が行われている地域で平和はどのようにもたらされるのか、また紛争後の平和構築に関してIR理論ベースで授業が行われました。評価は5000words一本で決まります。

感想:クラスメイトが国際関係からの生徒であり、その中でも元軍人の方がいるなど大学院らしいかなりバラエティーに富んだクラスでした。この中で人の移動の専門家だったらどう行動するべきかと考えていたので、別の分野から人の移動の問題を考える機会を頂けた点では、異色ながらも受講して良かったと考えています。

またこの授業はレクチャーがなく、全てリーディングベースでセミナーが行われました。セミナーの内容も、グループ分けされた生徒が2時間の授業をオーガナイズする形式が全体の半分ほどで、生徒が主体性を持って授業を行う面では知識面以外でも留学したからこそ得られた経験だと思います。ちなみに、一緒に授業を作っているときに感じたのですが、他の国の方のエンターテイメント性は本当に素晴らしかったです。

4.大学紹介、その他

大学はロンドンのリゾート地ともいえるブライトンから電車で3駅、バスでおよそ30分の場所にあり、非常に広大で静かな環境であると思います。大学の特徴として、全ての授業に関してではないですが、私の所属するGlobal Studiesの授業評価が5000字のエッセー一本、フリートピックのパターンが多いことには驚きました。

5.留学をめざしている人へ一言

このマスターの一年間は苦しい事の方が多かったですが、日本では学べないであろう新たな知識、学業のみならず日常での気づきなど、私は挑戦して本当によかったなと思います。何より共通の興味の下、各国から集まったクラスメイトとの議論ができた時間はとても貴重であり、卒業後も続く縁だと思っています。

もしも挑戦できる環境にあり今躊躇っておられるなら、是非一人でも多くの方に一歩進んでいただきたいなと思います。