「BA in International Development, Global Study」University of Sussex

(サセックス大学 「グローバルスタディ 国際開発学 学士課程」)

藤田 美保(ふじた みほ)さん

執筆:2013年4月

1.自己紹介

私は、高校生の時に、マングローブを植樹するために訪れたフィリピンでストリーチルドレンやホームレスの人々と出会いました。その人々が私にお金を乞うものの自分が何もできなかった無力さと、簡単に解決できない貧困の現実を実感したことで、私は開発・貧困に関心を持ちました。その後、全日本高校模擬国連大会、青山学院大学国際政治学専攻、模擬国連サークルを通して知識をつけることに努めました。しかし、大学3年次に内閣府「世界青年の船」事業にて開発や貧困に対する様々な考えを知り、大学を中退して英国の大学へ進学することを決意しました。大学院から進学も選択肢にありましたが、開発というテーマとしっかり向き合いたいと考え、学部からの進学を選択しました。そして、進学までは、ピースボートでのインターン、世界各国への旅、ナイロビ(ケニア)のスラムにおける小学校支援に携わりました。


2.所属コースの概要

私が所属するコースは、レクチャー1時間とセミナー1時間またはワークショップ2時間の4つの授業から構成されています。予習のリーディングやレクチャーで知識をインプットし、セミナーやワークショップで議論をして知識をアウトプットします。教授やチューターのオフィスアワーを利用して分からない点の消化や質問をしたり、学部生一人一人に付くアカデミックアドバイザー(教授)に学習全般の相談をしたりすることもできます。また、サセックス大学ではIDSという開発学の研究所・大学院があり頻繁にエキスパートよる講演が行われるので、学部生も参加して多くの刺激をもらっています。2年次にはワークプレースメントといった実践的な学びを提供しており、開発を様々な視点から捉えられるカリキュラムではないかと思います。

そして、私のコースには英国人のみならず多くの国から学生が集まっています。彼らは、高校生次から英国に住んでいたりするので英語を流暢に話します。また、ギャップイヤーを経験した20代の学生も多く所属しており、勉強に対して熱い気持ちを持っています。そのため、授業はとてもハイレベルなものですが、開発を学ぶ上で多角的な考えを得るには良い環境になっています。


3.授業の概要

・授業名:Ideas and Actors(必須:秋学期)

・内容:国際開発における基本的な考え方やアクターを2時間のレクチャーで学びます。 “開発”という言葉の意味を考えることから始まり、開発における問題を学ぶことによって様々な解釈や方法を理解します。時にはプレゼンテーションやディスカッションがあり、また隔週にテーマに合わせて500ワードのブログ(ポートフォリオ)を全5回書き、学生間で開発に対する考え方のシェアをすることもできます。

・感想:とてもインテラクティブな授業で、特に自分たちが調べたものを元にグループで話し合う時には様々な意見が出ため、ディスカッションを通して開発に対する広い視野を身につけることができたと思います。単に知識をつけるだけの授業ではなく、自分がどのように”開発”に携わる時に問題に対してどう向き合えば良いか考える機会になりました。

・授業名:Colonialism and After(必須:秋学期)

内容:植民地時代まで遡り、アフリカ・アジア・南米での植民地化政策、植民地における人種差別を学びます。植民地時代がどのように、現在の国際開発や途上国の現状に関連しているか理解します。授業は、1時間のレクチャーと1時間のセミナーから成ります。学期末には2500ワードのエッセイ提出が求められます。

感想:この授業を受け始めたばかりの頃は、この授業の意義が分からなかったのが正直な感想です。しかし、授業が進むに従って、植民地政策が現代の途上国に与えた影響や開発そのものの考え方との結びつきを認識できるようになってきました。”開発”という言葉や行為の本質を知るには、とても興味深い授業だと思います。

・授業名:Institutions of Aid (単専攻生のみ必須:春学期)

・内容:秋タームIdeas and Actorsの復習・発展として位置づけられ、開発に関わるアクター(DFID、世界銀行、多国籍企業、NGO etc.)の特性や役割について議論します。2時間のワークショップでは、レクチャーとグループディスカッションを中心に、時にプレゼンテーションを行います。6月に行われるテストで成績が評価されます。

・感想:開発学を単専攻する学生のみクラスで将来的には開発に携わりたい学生が多いです。それぞれの学生に熱気が溢れていて、各アクターに対してしっかりと意見を持っています。そのため、クラスメイトとのディスカッションを通して切磋琢磨できる環境がこの授業の特徴です。

・授業名:Key Thinkers in Development

・内容:経済・政治・ジェンダー学などの鍵となる思想家/提唱者の原書と、その批判的考察を読みます。アダムスミスやリスト、マルクスなど古典から始まり、アマルティアセンなど現代の学者まで扱います。授業では、これらの基本的なコンセプトの理解、分析を行い、どのように現代の開発に応用できるか議論します。学期中に、授業で扱った人物についてのコンセプトノートを2回提出します。

・感想:開発学には経済学・政治学・ジェンダー学など様々なアプローチがあります。この授業では、こうした異なる学問分野を学ぶことで、1つの視点や学問にとらわれずに、体系的な知識を身につけることができました。また、practicalな授業が多いなか、theoreticalに開発を学べる授業だったと思います。

・授業名:Issues in Development

・内容:貧困、貿易、教育、食糧、移民、ジェンダー、環境など開発に関わる幅広く様々な分野を扱います。1時間のレクチャーと1時間のセミナーで構成され、各トピックに合わせてレクチャーの講師が異なります。学期末には、授業の成果として10分のグループプレゼンテーションと、テストが行われます。

・感想:様々な開発問題を学べる包括的な授業ですが、一つ一つのテーマも深く学びます。私のセミナークラスでは、単にリーティングを元にディスカッションするだけでなく、ワークショップやゲームを通して開発問題の知識を得ます。交換留学で開発について全体像を学びたい学生にはオススメの授業です。


4.大学紹介

サセックス大学は、交換留学生、正規留学生が非常に多く在籍し、海辺の街ブライトンという立地もあって、比較的リベラルな雰囲気が感じられます。キャンパスには芝生が広がり暖かい日には芝生の上で仲間と話したり、学生が主体となってソーシャルイベントが開催されたりと活気が溢れています。また、講師陣とも距離が近く、一人一人に担当教授が指導にあたってくれ授業外でもオフィスアワーに質問をすることができます。時には、大学のバーでチューターとお酒を飲みながら気軽に勉強や日常生活の相談もできてしまうこともあります。そして、学習に集中できる環境も整っています。図書館やパソコン室は平日24時間空いており、テスト前や課題提出前には多くの学生が夜勉強しています。留学生には、アカデミックディベロップメントというサービスがあり、エッセイの添削やディスカッション練習など様々な学習スキルを身につけることができ、留学生には非常に助かる学習サポートが整っています。


5.その他

サセックス大学はブライトンの郊外にあるため、学部1年生は基本的にキャンパス内の寮に入ることができます。キャンパスには、カフェテリアやバー、スーパーなどがあり1つの街のようになっているので生活に困ることはありません。授業後には、友人とカフェやバーで食事をするなど勉強の合間に息抜きをすることもできます。ブライトン中心には、バス20〜30分、電車10分でアクセスできるため、授業後や休みの日には街に出かけることもよくあります。


6.留学をめざしている人へ一言

英国への留学というと、どちらかと言えば大学院が有名です。学部での留学に関しての情報はさほど多くなく、不安を抱える人も多いのではないかと思います。私自身も学部にするか大学院で留学するか悩みました。しかし、学部からの留学を選択したことに後悔せずに、満足しています。留学生は1年間ファンデーションコースを英国で受けるか、日本の大学に1年以上在籍した場合に学部留学が認められます。また、1年次はオフィシャルに成績は付かずエッセイや授業に慣れるための訓練になっていて、サポートも非常に整っています。なので、知識面でも言語面でも現地の学生に引けを取ることなく留学生活を送ることができます。みなさんが英国に留学する日を待っています。