「MSc Development Management, Department of International Development」London School of Economics and Political Science(LSE)

(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 「国際開発学部 開発マネジメント修士課程」)

匿名

執筆:2013年4月

1. 自己紹介

私が開発に興味を持った契機は、日本国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊でマラウィに行かれた方のご講義です。国際関係学科に所属していながら、開発学という学問の存在も知らなかったのですが、比較的若いその方が遠いアフリカの地でご活躍なさったお話にとても刺激を受けました。その後ボランティアとしてタイやインドネシアに行き、農村でホームステイをしながら活動する中で、国際協力や開発に取り組みたい、という思いが益々強くなりました。開発という国際的な問題を考えるに際し、日本国内に留まらず、様々な国の人たちと議論や意見交換をしたいと思い、英国留学を決めました。

大学卒業後、ロンドンで大学院準備コースに通い、開発学の基礎知識習得に努めました。大学院では少し実践的な側面からも開発の問題を考察したいと思い、上記のプログラムを選択しました。選択科目が幅広いのも決め手でした。


2. 所属コースの概要

私の所属しているMSc Development Managementは国際開発学部の3つのコースのうちの1つで、開発学に関するプログラムの中でもマネジメントの側面に重きを置いているのが特徴です。特に、必修科目のDevelopment Managementでは、開発プロセスにおけるアカウンタビリティやインセンティブの問題を俯瞰した後に、様々な開発プロセスを、政体やアクター等の違いによって、ケースステディを用いながら比較分析します。もう一つの大きな特徴は、コンサルタンシー・プロジェクトです。実際に開発に携わっている機関(国際機関、政府機関、NGO、民間企業等)のリサーチを三~五人のチームで請負い、3~4か月ほどかけてレポートを作成し、プレゼンテーションを行います。

プログラム全体の人数は80名ほどで、比較的欧米の学生が多いとは思いますが、南米やアフリカ、アジアを含む、様々な国から来た学生がいます。アジアの学生は5人ほどと意外と少ないです。正確な割合はわかりませんが、職務経験のある学生の方が学部を終えたばかりの学生よりも多いと思います。国連、政府機関、NGO、民間企業等、クラスメイトの職務経験も様々です。ですが、職務経験がないとコースについていけないということはありません。


3. 授業の概要

・授業名: Development Management

・内容:内容は上記の通りです。Full Unitの必修科目で、2学期に渡って18週間レクチャーとセミナーがあります。成績は、40%がコンサルタンシー・プロジェクトのレポート(チーム人数×2000語)とプレゼンテーション、60%が夏学期に行われる3時間の試験で決まります。

・感想:唯一の必修科目で、1週間に1回のこの授業のレクチャーでコースメイトが全員集まります。週によってレクチャーの先生が変わりますが、授業全体として体系的に組まれています。レクチャーでケーススタディが紹介され、セミナーでも毎週、担当の学生が自分の選んだケースとその週のリーディングを絡めてプレゼンテーションを行い、それに基づいて議論が交わされるので、常に理論と事例の関連性を考えさせられます。


・授業名: Complex Emergencies

・内容:複合人道災害に関する授業で、紛争やジェノサイド、飢饉等を扱います。そういった問題の原因や結果、どのように「敵」は定義されるのか、複合人道災害から誰が利益を得るか、また、その利益が複合人道災害にどのような影響を及ぼしているか、人道援助の役割や影響など、複合人道災害に関わる様々な「複雑な」問題が取りあげられます。今年度はMichaelmas Termの開講で、10週間レクチャーとセミナーがありました。成績は、20%が2000語のエッセイ、80%が夏学期に行われる2時間の試験で決まります。

・感想:’Complex’ Emergenciesという名前の通り、取り扱われる問題が複雑に感じましたが、とても興味深かったです。ケーススタディを扱ったリーディングが他の授業と比べて長かったように思いますが、大体の内容はDavid Keen教授の著書’Complex Emergencies’を読めば掴めます。


・授業名: Urbanisation and Social Policy in the Global South

・内容:途上国における都市化と社会政策の授業で、テーマとしては、貧困、移民、スラム、水と衛生、ハウジング、社会運動等を扱います。今年度はMichaelmas Termの開講で、10週間レクチャーとセミナーがありました。自分で選択した途上国の都市について毎週のテーマに関する750~1000語程度のレポート提出が求められました。セミナーは週によって、ディべートや文献批判など、様々なスタイルで行われました。成績は、40%が3000語の政策レポート、60%が夏学期に行われる2時間の試験で決まります。

・感想:受講生が20名程度の小さめの授業で、インド人の教授はとても気さくな方で、ときどきジュースやインド料理を作って持ってきて下さったりしたので、授業はとても和やかな雰囲気でした。教授が少し気まぐれな面もあり、セミナーのスタイルが毎回変わるのもそうですが、「次はこれをやります。」と言われたことが後々行われないこともあり、困惑してしまうこともありました。


・授業名: African Development

・内容:アフリカの開発の問題について比較的マクロの視点から考察するクラスです。テーマとしては、植民地化、ガバナンス、民族問題やナショナリズム、資源問題、社会政策等が扱われました。今年度はLent Termの開講で、10週間レクチャーとセミナーがありました。セミナーでは担当の学生がシラバスに書かれている質問に関するプレゼンテーションをリーディングに基づいて行い、それを元にディスカッションが行われました。成績は、20%が2000語のエッセイ、80%が夏学期に行われる2時間の試験で決まります。

・感想:一口にアフリカと言っても多種多様なので、マクロな視点からの考察に抵抗を感じる学生もいたようですが、マラウィ出身の教授が担当している授業で、アフリカというコンテクストを捉えるにはとてもいい授業だったと思います。毎週10本ほどのリーディングが課されており、リーディングの数は他の授業と比べて多かったです。


・授業名: Reproductive Health Programme: Design, Implementation and Evaluation

・内容:リプロダクティブ・ヘルスについての授業で、レクチャーでは主にプログラムに関わる立案、実施、評価などの問題、セミナーでは様々なリプロダクティブ・ヘルスのテーマ(母子保健、難民、思春期の男女、女性に対する暴力、男性の参加等)を扱いました。セミナーは完全に学生主導で行われ、2~3人の学生が1時間半、前に立ってプレゼンテーションを行いつつ、ディスカッションを進行しました。今年度はLent Termの開講で、10週間レクチャーとセミナーがありました。成績は、50%が10ページのカントリー・レポート、50%が夏学期に行われる2時間の試験で決まります。

・感想:20人程度の小さめの授業で、レクチャーでもセミナーでも毎回とても活発な議論が繰り広げられました。教授が、学生のプレゼンテーションや質問、提出物に対して、とても真摯に向き合ってフィードバックをくれる方でした。


4.大学紹介

基本的な大学紹介は他の方のレポートを参照して頂ければ、と思います。

開発学といってもLSEには様々なコースがあります。国際開発学部には3つのコースがありますが、それ以外の社会政策学部や地理学部、人類学部等にも開発学関連のコースがあり、選択科目は学部の枠を越えて比較的自由に選択できるものの、コースによって規模や雰囲気、開発に対する視点が違うので、じっくり検討されると良いと思います。


5.その他

<寮について>

私はロンドン大学の寮に住んでいます。ロンドン大学の他の教育機関の学生もいることと、食事付であるという点がLSEの寮との大きな違いだと思います。比較的治安や立地条件のいい場所に同じような寮がいくつかありますので、自炊にあまり時間を取られたくない方やLSE以外の学生とも交流してみたいという方にはお薦めします。


6.留学をめざしている人へ一言

がんばってください!