「MSc in Climate Change and International Development」The School of International Development, University of East Anglia

(イーストアングリア大学国際開発学部「気候変動と国際開発 修士課程」)

梶本 篤志 (かじもと あつし) さん

執筆:2012年3月

自己紹介:

高校2年の時に参加していたSSH(Super Science High School)のプログラムの一環で、京都大学にて環境経済学のゼミを受けた際に”環境”はこれからのホットな話題になる(2005年当時)と確信したことが今の学部選びのきっかけになりました。2007年4月に高校卒業後すぐに渡英し、ウェールズ大学バンガー校直属のFoundation Course (教養課程)を1年間取得。2008年9月より環境科学学士課程に入り、2011年7月に同大学を卒業。同年9月より学士論文のテーマでもあった気候変動について、開発の問題と絡めて理解を深めるべくイーストアングリア大学院へ進学しました。職務経験はありません。

所属コースの概要:

私の専攻の「気候変動と国際開発」はイーストアングリア大学の中ではSchool of International Development (DEV) に属しています。

DEV

・MSc Environment and International Development (環境と国際開発)

・MSc Climate Change and International Development (気候変動と国際開発)

・MSc Water Security and International Development (水の安全保障と国際開発)

・MA Education and Development (教育と開発)

・MA Gender Analysis in International Development (国際開発におけるジェンダー分析)

・MA International Social Development (国際社会開発)

・MA Development Studies (開発調査)

・MA Development Economics (開発経済学)

・MA Globalisation and International Development (グローバリゼーションと国際開発)

・MA Agriculture and Rural Development (農業と農村開発)

・MSc Impacted Evaluation for International Development (国際開発の影響評価)

・MA International Relations and Development Studies (国際関係と開発調査)

・MA Conflict, Governance and International Development (紛争、統治と国際開発)

・MA Media and International Development (メディアと国際開発)

などの学科があります。

選択科目が非常に豊富で、専攻が環境系ということもあり、環境科学学部の科目も選択が可能です。ただ必修科目、単位数との関係で実際に選択できるのは3科目ほどです。科目を選択する際はある程度修士論文でどういった内容を書くのかを意識して選択すると良いと思います。

必修科目と選択科目の割合ですが、180credits中100creditsが必修、60creditsが選択科目、20creditsが試験です。必修の100creditsには修士論文(Dissertation) 40credits分も含まれています。

DEVには合計130名ほどの学生が在籍しています。昨年度まで在籍した学士課程では職務経験を持たない学生がほとんど留学生もほとんどいませんでしたが、今年度在籍している修士課程では社会人経験、インターン等実務経験を持った学生が多いのが特徴で、イギリス人学生よりも留学生の方が圧倒的に多く、アジアのみならずアフリカ、北米、他ヨーロッパ諸国からの留学生が多いです。日本人学生は20名ほど在籍しています。

授業の概要:

学期は基本的に前後期制です。

大まかなスケジュールは今年度の場合ですと、

前期 (Autumn Semester): 2011/09/26 - 2011/12/16

クリスマス休暇: 2011/12/17 - 2012/01/08

後期 (Spring Semester): 2012/01/16 - 2012/04/06

試験期間: 2012/04/30 - 2012/05/04

修士論文提出日: 2012/09/04

Teaching weeksというのは授業のある期間のことで、イーストアングリア大学でも前期後期ともに12週間と決まっています。また理系では5週目に、文系は6週目にReading week(読書期間)が設けられていますが、科目によっては授業やセミナーが入ったり、中間試験が入る場合もあります。クリスマス、イースター休暇はともに3週間です。年明け後すぐに科目によっては試験や課題の提出期限があります。

これまでに受けた授業の内容・感想:

授業名: Understanding Global Environmental Change (必修)

内容・感想:

生態系サービスが大きな一つのキーワードです。地球環境と開発問題やそれらの要因、生物物理学過程、貧困と環境への結果とその2つの関わり合いなどを授業やセミナーを通じて考察していきます。特に貧困と環境破壊の相互関係は、アフリカやラテンアメリカ等地域によって異なり、また自然源(水、森林、土地等)によっても全く異なるため、この科目の中では一番関心を持ったところでした。

授業名: Climate Change Policy for Development (必修)

内容・感想:

気候変動と開発の概要から、気候変動への適応、気候変動における国際交渉、REDD(森林現象と森林劣化による排出量の削減)、クリーン開発メカニズム、二酸化炭素の排出権取引等を授業やセミナーでは取り上げられました。一番関心を持ったのは、気候変動を巡る南北対立です。課題の中では、気候変動交渉の対立の要因としてクリーン開発メカニズムの在り方そのもを取り上げ議論しました。また、関連文献を読み進める中で修士論文の方向性をある程度定めることが出来たように感じています。


授業名: Microeconomics for Development

内容・感想:

今まで経済学自体勉強したことがなかったのですが、BOPビジネスに興味を持っていることもあり選択しました。何とか課題は乗り切ることは出来ましたが、基本的なミクロ経済学のバックグラウンドが無かったので、一つ一つのトピックに対して一番理解するのに時間がかかった科目でした。

授業名: Climate Change -Physical Science Basis

内容・感想:

北大西洋振動、エルニーニョ南方振動、熱塩循環のメカニズムをはじめ、古気候、年輪気候学、様々な気候モデル、気候感度等の観点から気候変動のメカニズムを学びます。放射強制(radiative forcing)についてはきちんと理解しておかないと、後々授業を受ける際に苦しいなという印象を受けました。気候モデル・気候科学については最近は研究が進み新たな論文も次々と発表されていますので、課題を進める際は文献の出版年に注意を払う必要があります。また、返却される課題のフィードバックは点数に関わらず非常に詳細にコメントが書かれていて、それらを読むだけでも非常に参考になります。

授業名: Tools and Skills in Environment and Development (必修)

内容・感想:

環境と開発を考える上で必要な手法、技術(GIS, Environmental Impact Assessment, Sustainable Livelihood Framework等)の概念や事例などを幅広く取り上げられます。

授業名: Water Security for Development -Tools and Policy

内容・感想:

開発における効率的な水の安全保障(飲み水や農業用水 等)の政策を策定するために用いられる手法(気候影響評価やWater footprintingなど)や水の安全保障における今後の気候変動に対する適応策などを考察します。特に、River basin gameと呼ばれる大きな木のボードとビー玉を使った実験は、上流域から下流域のそれぞれの農業地帯、住民にどのように川の水を効率良くかつ公平に割り当てられるかをステークホルダー同士で理解し、考える上で編み出されたもので、その川の流域の地形・特徴によってこの手法の向き不向きはありますが、非常に関心を持っています。また、ナイル川の水の割り当てを巡る各国の対立や水管理、それらに対する民間企業の関わりをセミナーの中でナイル川流域国(エジプト、ウガンダ、エチオピア)の政策書を比べながらの議論も非常に興味深かったです。

授業名: Dissertation (必修)

内容・感想:

1月末にDissertation Workshop(以後、定期的に行われています)が行われました。今年度の場合ですと、3月9日に修士論文のApproval Form(修士論文のタイトル、指導教官の署名)の提出が求められ、それまでに指導教官は配られたハンドブックやCourse Directorとの話し合いをもとに自分で連絡を取り、実際に話し合う中で決めていきます。教授によってはリサーチ等でNorwichを離れていることもあり、なかなか会うことが出来なかったり連絡がつかない方もいるので、前期の頃から時間のある時にある程度方向性を自分なりに組んでおき、早め早めに連絡を取った方が良いと感じました。

修士論文では、卒業後は途上国、特にサブサハラアフリカへの日本企業の市場進出をサポートできる仕事につきたいという希望もあり、”サブサハラアフリカでの水分野における気候変動への適応に対する民間企業の役割 (仮題)”を執筆する予定です。


大学情報:

キャンパス内の環境は、すでに多くの方が書かれていますので、そちらを参考にしていただければと思います。私はオフキャンパスの寮(Mary Chapman Court)に住んでいて30分ほどの通学時間はかかりますが、キャンパス内に比べると若干物価が安く、お店も多いので決して不便ではないです。

またLondon Liverpool StreetからNorwichへは夜遅くまで電車があり、またLondon Victoriaからキャンパスまで直接バスも通っているので、IDDPの勉強会の時などはアクセスは便利なように感じます。

最後に:

3年前にふとしたきっかけでこのIDDPというのを知りました。その後スタッフとして運営に携わり、スタッフのみならず参加者の方や講師の方との交流を通じて、今在籍しているイーストアングリア大学・所属している専門への道が開けました。私自身IDDPの活動のみならず高校時代、5年間の大学・大学院生活を通じて、何気ない小さなきっかけで起こした行動がやがて大きなものになり得ると考えています。今後イギリスへの大学院進学を考えていらっしゃる方の一人でも多くの方に、IDDPのイギリス通信が学部・大学院選びに役立ててもらえることを心から願っています。