「BSc Environmental Science」The School of Natural and Environmental Resources and Geography, University of Wales, Bangor

(ウェールズ大学バンガー校SNERGY「環境科学学士課程」)

梶本 篤志 (かじもと あつし)さん

執筆:2011年2月

自己紹介

2007年4月に高校卒業後すぐに渡英し、ウェールズ大学バンガー校直属のFoundation Course (教養課程)を1年間取得。2008年9月より環境科学学士課程に入り、現在2011年7月に卒業予定の大学3年生です。職務経験はありません。学部卒業後は卒業論文のテーマでもある気候変動について、理解を深めるべく大学院への進学を希望しています。


所属コースの概要

私の専攻する環境科学はバンガー大学の中ではSchool of Natural Environment and Resources, Geography (SNERGY) に属しています。

SNERGY

・BSc Agriculture, Conservation and Environment(農業、保全と環境)

・BSc Conservation and Forest Ecosystems(保全と森林生態系)

・BSc Environmental Management (環境経営)

・BSc Environmental Sciences(環境科学)

・BSc Forestry(森林学)

・BSc Geography(地理学)

・BSc Sustainable Development(持続可能な開発)

・BSc Environmental Planning and Management(環境計画と経営)

環境科学科の良い点は選択科目でSNERGYだけでなく、海洋科学や生物学、化学といった他の学部の科目を幅広く選択出来ることです。

SNERGYには合計120名ほどの学生が在籍していますが、学部ということもあって職務経験無しの学生がほとんどです。また留学生に関しては、私を含むアジア人が6人(日本人、中国人2人、ブルネイ人3人)在籍しているのみで他の地域からの留学生は在籍しておりません。

授業の概要

学期は前後期制です。

大まかなスケジュールは今年度の場合ですと、

前期 2010/09/27-2010/12/17 (Teaching weeks 1-12)

クリスマス休暇 2010/12/20-2011/01/07

試験期間 2011/01/10-2011/01/21 (Teaching weeks 13-14)

後期 2011/01/24-2011/04/08 (teaching weeks 15-25)

イースター休暇 2011/04/11-2011/04/29

後期(続き) 2011/05/02-2011/05/06 (Teaching weeks 26)

試験期間 2011/05/09-2011/06/03 (Teaching weeks 27-30)

年度終了2011/06/03

Teaching weeksというのは授業のある期間のことで、バンガー大学では前期後期ともに12週間と決まっています。また理系では5週目に、文系は6週目にReading week(授業が休講となりエッセーなど課題に集中するための期間)が設けられていますが、学部科目によっては授業が入ったり、中間試験が入ったりする場合もあります。クリスマス、イースター休暇はともに3週間です。年明け後すぐに前期の試験期間となり、これは2週間なので、学部によっては試験の日程が詰まりがちになります。ここではきちんとした時間管理が求められます。

必修科目と選択科目の割合ですが、120単位中80単位が必修、40単位が選択科目です。必修の80単位には卒業論文 30単位分も含まれています。

これまでに受けた授業の内容・感想

授業名: Pollution and Environment (汚染と環境)<10単位>

内容・感想:

私の所属するSNERGYではなく、School of Chemistry (化学学部)の科目となります。ここではinorganic pollution (無機性汚濁)、organic pollution (有機性汚濁)、chemical sensors (化学センサー:メカニズムとその利用における利点・不便な点)を学びます。有機性汚濁については土壌汚染とも深く関連していて取り組みやすい部分もあるのですが、基本的に化学式、物質名等新たに覚える項目は多いように思います。

授業名: Tenerife Field Trip (テネリフェ、フィールド調査)<10単位>

内容・感想:

カナリア諸島に位置するテネリフェ島とラゴメラ島で植生や土壌、生態系などを8日間の行程で考察します。テネリフェ島にある3710mのテイド山をはじめ標高によって植生や土壌生成、生態系とくに松林 (Pine forest) の成育が異なり、またテネリフェ島とラゴメラ島は隣同士の島にも関わらず、島の生成プロセスや植生、気候も異なり、非常に興味深いです。7日目に数人規模のグループでプロジェクトワークがあり、グループ、トピックによっては土壌のサンプル等を大学に持ち帰り、さらに研究所で詳しく分析する必要もあります。

授業名: Waste Management and Utilisation (廃棄物管理と利用) <10単位>

内容・感想:

この科目では異なったタイプの廃棄物の処理法・管理(埋め立て、堆肥化、リサイクル、焼却、嫌気性消化など)を環境、経済両面から検証していきます。今年度からはEU、UKだけでなく、ベトナムや中国、インドいった新興途上国での廃棄物の管理等も授業に組み込まれています。授業内ではしばしば討論する時間が設けられ、私が取っている授業の中では一番議論が活発です。持続可能な廃棄物管理を目指していく中でライフサイクルアセスメント(LCA)をどのように組み込ませていくのかという議論は私の中では非常に興味深かったです。

授業名: Current Issues in Environment and related Science (環境と関連科学における最近の問題) <10単位>

内容・感想:

これはプロジェクトワークのみの科目です。タイトルは環境と科学に関連するものであれば自由に自分で設定することが出来、自分自身で設定したプロジェクトワークの目的、計画に沿って進めていきました。提出期限後、学期の終わりにプロジェクトワークに関してインタビューがあります。私は「How can environmental policies contribute to economic growth?」というタイトルで、ドイツの環境政策フィードインタリフ(固定価格買取制度)の成功例に焦点を当て、それが経済成長にどのように寄与していくのか検証していきました。

授業名: Marine Sediment Environments (海底堆積物の環境)<20単位>

内容・感想:

私が所属しているSNERGYではなく、School of Ocean Sciences (海洋科学学部)の科目です。ここでは、最初に波・潮の物理学を学び、それをきちんと理解している前提でBarrier islands (防波島)、tidal flat (干潟)、delta (三角州)、continental shelf (大陸棚)などのそれぞれの異なったタイプの生成プロセスや、川と海洋科学の関連性、深海での堆積物の運搬プロセスなどを細かく学びます。他の科目に比べると非常に細々とした課題が多く、提出期限もその授業内で突然発表されることがあるので一つ一つ注意が必要です。

授業名: Environmental Policy (環境政策)<10単位>

内容・感想:

政策の原理原則から、政策に関連した政治、京都議定書などを巡った国際関係、環境と経済、科学は政策にどのように関わっていくのか等、幅広い観点から環境政策を実例を引用しながら学んでいきます。この科目では他の科目以上に日頃からBBC等の情報に目を通し、知識を建設的に蓄積することを求められます。課題ではPolicy Briefing (政策の状況説明、批評)を課され、英国に限らず自由に環境政策を選択できるので、私は日本のエコポイント制度について書きました。コースメイトの中にはバングラデシュやフランス、インド、中国などの環境政策について書いている人もいました。全体的にこの科目では今までと違った観点から環境問題、特に気候変動を見る機会が得られたように思います。

授業名:Honour Project (卒業論文) <30単位>

内容・感想:

SNERGYでは2年生後期の前半で卒業論文のタイトルを決めます。昨年度の科目(Research Skills)の一環で150以上のタイトルが提示されたリストから3つ(第1希望から第3希望まで)選択でき、それぞれその科目の担当者によって各生徒の卒業論文のタイトル、担当教授が振り分けられます(担当教授によっては自由なタイトルを設定も可)。この科目の目的は卒業論文の概要の組み立てで、テーマによっては大学の農場、実験場に通う必要がありますが、予め全員リスクアセスメントと倫理評価、それに対する担当教授のサインを提出する必要があります。卒論のテーマによってはまず植物を育てなければならない場合があり、夏休み返上という学生も中にはいます。学部によって卒業論文の提出期限はまちまちですが、SNERGYの場合、今年は5月6日(金)です。

大学情報

バンガーはロンドンより電車でおよそ3時間15分、アイルランドの首都ダブリンへの連絡船が出入りする港町ホリーヘッドまで電車で30分の距離に位置します。バンガーの周辺はスノードニア国立公園をはじめ豊かな自然に囲まれています。私の所属するSNERGYではそれらの自然を使ったフィールドワークが多いのも特徴です。また田舎町ですが、各国からの留学生も最近では増えてきており、大学で国際交流関連のイベントも催されています。