「MA in Development Studies」University of East Anglia

(イーストアングリア大学 「開発学部 開発学修士課程」)

村山 満穂 (むらやま みつお)さん

執筆:2011年3月

自己紹介

大学卒業後、新聞社に就職し、東京・名古屋で計7年間、広告営業の仕事に携わりました。2009年 、かねてより関心があった途上国支援の仕事にキャリアチェンジすべく、退社し、大学院へ進学しました。


所属コースの概要

MA in Development Studiesでは、開発政策全般について学びます。特にフォーカスした分野が無い分、さまざまな見方から開発学に取り組むことができます。日本人が10名弱在籍していますが、他のコースに比べ、日本で何年か開発以外の社会人経験を積んだ人が多く見受けられます。開発のフィールドにチャレンジしたいけれど自分の専攻分野が定まっていない、もしくは基礎から開発のことについて勉強したい、という人には適しているコースだと思います。

日本人の他には、イギリス人、フランス人、ドイツ人、アメリカ人、スーダン人、ナイジェリア人、シリア人、ザンビア人、ジンバブエ人、南アフリカ人、スリランカ人、インド人、ベトナム人、香港人、台湾人、韓国人などが在籍しています。全体で50名弱在籍しているため、担任は2人います。イギリス人学生以外は、日本人学生同様何らかの職務経験を持った人が多いようです。アフリカ出身の学生は政府関連の開発フィールドで働いていた人が多く見られますが、その他の地域からは開発分野とは直接関係のない職種に就いていた人が多いように思います。 年間スケジュールは、9月下旬~12月中旬までが秋学期、クリスマス休みを挟んで1月初旬~3月中旬までが春学期の、2学期制になっています。その後、イースター休みを挟んで4月中旬に必修2科目のテストがあり、8月いっぱいまでに修士論文を提出し、結果を待つ、という流れになっています。


授業について

必修科目は2科目あり、これまでの開発理論をまとめたDevelopment Perspectivesを秋学期に履修し、現在の開発現場で取り上げられているテーマを中心に議論するContemporary World Developmentを春学期に履修します。ModernisationやMillennium Development Goalsなど、どちらの科目も開発学の基本となるテーマを扱います。その他、選択必修で、秋学期のResearch and Techniques and Analysisか、春学期のResearch Skills for Social Analysisのどちらか1つをリサーチ科目として選択します。この他に、必修以外の選択科目を、教育や経済、紛争など自分の興味に合わせて他コースの開講科目から選ぶことになります。授業数は秋に3コース、春に3コースの計6コースとることになります。聴講という形であれば、これ以上のコースをとることも可能です。

1つの科目は、基本的に週1回約2時間の講義(Lecture)と、ほぼ隔週開かれる討論形式のセミナー(Seminar)で構成されています。講義は日本の大学のものとほぼ同じ形式で、全体で20人から100人が参加します。ほとんどの講義にプレゼンテーションのスライドが用意されており、それに沿った形で進められます。また、セミナーは毎回テーマが与えられ、それについてまずは小グループで議論し、その後、全体でディスカッションとなります。講義、セミナーのどちらも事前に読んで来るべき資料が毎週与えられます。授業とは別に、5人程度のグループで自主的にテーマに関する考えをシェアしたり、文献について議論したり、授業の内容を補完したりするグループスタディ(group study)を行う学生もいます。

成績評価については、1つのコースにつき、1~2つのエッセーが課されます。授業で行った内容に関して、考えをまとめて提出します。1つのエッセーで2000~5000字の量が要求されます。この他、プレゼンテーションが課されるコースもあります。グループまたは個人で1つのテーマに取り組み、セミナーの時間に発表します。グループプレゼンテーションの場合、1つのセミナー(90分の場合が多い)を1グループでオーガナイズするケースがほとんどです。

また、これらの開発学のカリキュラム以外に語学のコースもとることができます。アフリカや南米で役立つフランス語やスペイン語が特に人気のようです。また、発音やイディオムなどを学ぶ英語のコースもあります。


暮らしについて

・1日の生活

平日は、講義やセミナー、グループスタディと、これらの準備に必要とされる文献を読んでほぼ一日が終わります。休日に関しては各人で差があると思いますが、私は平日同様文献を読んだり、スポーツをしたりして過ごしています。ただ、1つの学期が3カ月弱と短いため、学期末までに書き上げなければならないエッセーに追われることがしばしばです。それでも、うまく時間を作って英国各地、もしくは欧州各地に旅行に行く人もいます。

・住居

大学の構内、city centre(街の中心部)など各地に寮があり、大学内にあるAccommodation officeが斡旋業務を行っています。基本的に個室ですが、シャワー・トイレ・キッチン共同の部屋から完全個室まで、好みのタイプに合わせて交渉できます。また、フラットシェアという形で友人と一軒家を借りる人も多く、その場合、直接不動産屋と交渉になります。その他、ホームステイをする人もいます。

・食事、エンターテインメント

基本的に学内の食堂か、自炊をする人が多いように見受けられます。外食店舗を利用する場合は、大学から徒歩圏内にも数件ありますが、たいていはバス・自転車で20分ほどのcity centre(街の中心部)まで出て飲食する人が多いです。娯楽施設についてもcity centre(街の中心部)に映画館やバー、クラブなどが何件かあります。バーやクラブについては、大学構内にもありますので、勉強中にどうしても息抜きが必要になった場合はすぐに利用できます。

・気候、服装

夏;日本の夏とは大違いで乾燥しており涼しいため、7・8月でも長袖が必要になります。逆に、タンクトップや短パンなどは実用性が低いかもしれません。

冬;日本の東北地方と寒さは同じくらいのように感じます。東京と比べると格段に寒く感じるので、それに合わせた防寒具が必要かと思います。


その他の情報

英国と日本は、大学の教育システムについていくつか違いがあると言われていますが、その一つに論文を書く際にreference (参考文献)を示さなければならないことがあるように思います。私は日本での大学院経験はありませんでしたが、学部時代の日本語の論文作成に際してはreferenceを使った経験がなく、英国に来てから戸惑うことがありました。これらのアカデミックなルールの差への戸惑いを少しでも緩和させる為、この大学にはINTOという付属機関が設置されています。このINTOでは大学院入学前の1~3ヶ月間、プリセッショナルコースという模擬マスターコースのようなものを受けることができます。内容については論文の書き方からプレゼンテーションの仕方まで、大学院で必要な基本的な識を一通り学ぶことができます。特に、論文の書き方については参考になると思います。また、このINTOには大学院進学準備に通っている人の他にも、語学留学をしている人、また大学院に進学するのに1年間の準備コースに通っている人など、さまざまな人が在籍しています。コースは開発分野に進学予定の人に限らず、ビジネス、メディア、薬学など、多彩な専攻の学生が英語圏以外の国から集まってきていますので、渡英後、まずINTOに来る人は、まさに異文化交流を実感できるかと思います。