「Msc Management, Information System and Innovation (Department of Management) 」London School of Economics and Political Science

(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 「情報管理学 修士課程」)

草開 志帆 (くさびらき しほ)さん

執筆:2011年2月

1. 自己紹介

国内の大学卒業後、IT企業にて海外顧客向けシステムエンジニアとして勤務。その後2010年9月よりフランスHEC MBAプログラムを経て、2011年9月より、HECとのDouble Degree Programとして、LSEのMsc Management, Information System and Innovation (MISI) に在籍しております。今回の留学(MBAも含む)のきっかけは、途上国に対して、ITインフラの整備を通じて、情報の格差の解消やローカルビジネスを促進させ、市民の生活レベル向上に貢献することに興味を持ったことでした。(前職の会社でも同様の関心を持って進めていたプロジェクトがあったのですが、採算性の問題から頓挫してしまい、実情として、現地でもある程度成長して規模の大きくなった企業とはビジネスができるけれども、遠隔地に住む一般市民向けに必要なITサービス提供、に至るまでには、一営利企業としては実現には大きな壁があったように理解しました。)そのことからも、どのような形/手段であれば(国際機関/政府/NGOのプロジェクト経由?社会起業?)一般市民に届くサービスを提供できるのか?に関心を持っております。MBAプログラムではマネジメント全般+Social businessの基礎を学び、今回ITに特化した専門分野の習得のため、LSEの本プログラムを選択しました。

2. 所属コース概要

コース: Msc Management, Information System and Innovation

期間: 9月最終週~翌年8月末迄。そのうちLectureは前期(~12月中旬)後期(~3月中旬)の10週ずつ。その後はEaster休暇を挟み、4月下旬~6月までは基本的に試験期間。8月末までにDissertationを提出。

成績発表・学位授与は12月中旬。

コースの人数は約80人。中国人、インド人の比率が高く、彼らでコースの半分を占める。女性も多く半分くらい。

下記ような選択科目あり。

- 前期科目(全3科目必修)

IS470 Innovation and Information Systems: Concepts and Perspectives

IS471 Innovating Organisational Information Technology

IS472 Global Strategy, Management and Information Systems

- 後期科目(下記のうち3科目選択)

IS415 Healthcare Information Systems

IS417 Global Sourcing and Management of Business and IT Services

IS484 Managing Information Risk and Security in Business

IS485 Management and Economics of E-Business

IS415 Digital Convergence and Information Services

IS489 Information Systems for the Public Sector

IS480 Information Technology and Service Innovation

IS489 Principles of Privacy and Data Protection

DV483 IT and Socio-economic Development

上記コース概要でおわかりのように、私の所属コースは基本的に開発学ではありませんが、現時点ではまだ数少ないICT for Development (上記DV483)をLSEが扱っていることと(他大学ではThe University of Manchesterが有名)、本コースの他のIT科目が必ずしも途上国市場対象ではないにしても、Information System導入において現在までに企業が経験してきた問題点・課題(例えばOutsourcing等)や、新サービスを生み出すためのInnovationの視点、Privacy・情報セキュリティ等、Developmentを念頭においたITサービスの導入を検討する上でも、折につけて絡んでくる観点ではないかと考えたため、本コースを選択しました。(前職の業務に関連した以外のIT分野の理解が弱かったため、IT Managementの初期からの変遷や、モバイル・E-business等、現在潮流となっている分野の知識を補完し、基礎的な理解をより広範囲に固めておきたいということもありました。)

3. 授業紹介

ここでは、上記コースのうち、開発に関連する科目 “DV483 IT and Socio-economic Development” についてご紹介したいと思います。 本コースでは、途上国での様々な開発分野へのITの適用事例(成功例・失敗例・国際機関や政府・NGOによるプロジェクトから現地アントレプレナーによるビジネス含め、あらゆるプレイヤーによる試みが対象)・それらについての論文の研究を通じ、開発におけるICTの役割・リンケージについての理解を深め、クラス内ディスカッションを通じて今後の発展可能性・課題解決手段の検討を行います。

私は本科目をMsc Management, Information System and Innovation のコース内で履修していますが、LSEの開発系コース(MSc Development Studies, MSc Development Management) の人も、選択科目として履修することが可能です。DV483はHalf Unitで、授業は後期のみ、評価は100%期末テストとなります。(開発学部の人は、同じ内容でFull Unit版のDV475を選ぶことも可能です。その場合評価は期末テスト50%, 5000字エッセイが50%になります。)

本年扱われたテーマは下記でした。(2時間の授業の前半で、事前に割り当てられたペーパーをベースにしたStudent-led discussion, 後半で担当教授 Dr. Shirin Madon による講義(次週Discussionの知識のベースとなる)が行われます。ゲストスピーカー(PhD所属の研究者等)による、最新の研究報告から学ぶ機会もありました。

- ICTと開発との理論的なリンクについて

- グローバル・ソフトウェア・アウトソーシング(例: LDCへの影響、FOSSの可能性)

- 途上国におけるB2B E-Commerce

- 途上国におけるモバイルテクノロジー(例: M-pesa等アフリカでのモバイルビジネスの拡大)

- ICTと教育・開発 (例: One-Laptop-per-Childの課題・プロジェクトの成果をどのようにモニタすべきか)

- E-Governanceと開発 (例: テレセンターを通じたRural area向け行政サービス)

- 途上国でのHealth Information System (例: アフリカにおけるCommunity-based health Information System)