「MA in Education and International Development」Institute of Education (IOE), University of London

(ロンドン大学教育学研究所「教育と国際開発 修士課程」)

塚越 貴子 (つかごし たかこ)さん

執筆:2011年2月

自己紹介

子供の頃から難民キャンプで働きたいという漠然とした夢があり、大学卒業後、数年間の社会経験を積んだ後、青年海外協力隊に参加し途上国での現場経験を積みました。村落開発普及員としてモロッコで女性対象の識字教室の運営や子供達へのゴミ問題の啓蒙活動など2年間活動していく中で、将来、国連機関やNGOで働き、教育分野で途上国や難民キャンプを支援していきたいと、自分の目標が具体的になっていきました。国連機関や国内の国際協力機関への就職を考えた際に修士号の資格を求められる事が多く、開発学で長い歴史と最新の研究を行っているイギリスを選び、且つ、教育と開発に焦点を絞った際、IOEが最も自分の経験を糧とし、今後の将来設計に近いコースを提供していることを知り進学するに至りました。

所属コースの概要

開発学に関連するコースには次の4つがあり、選択科目の中で専攻コース以外の授業を履修する事が可能です。

MA in Education and International Development

Education, Health Promotion and International Development

Educational Planning, Economics and International Development

Education, Gender and International Development

概要

このコースの主な目的は以下の2点です。

・国際開発分野における開発と教育の関連性や理論を学ぶ事によって、開発プロセスにおける教育の役割を評価します。

・開発途上国の教育をめぐる現代の政策課題を検討します。

特徴

途上国での経験を積んだ学生が多く(2010年度は入学基準として最低半年間の途上国での業務経験が求められました)、授業、特にグループディスカッションではそれぞれの現場での経験談や生の声を聞くことができ、変動の激しい開発学全般の潮流を知るには最適の環境だと感じています。

コースメートの国籍は開発学研究先進国のイギリス・アメリカはもとより、アフリカ、アジア、南米などからの留学生も多く在籍しています。本年度は日本人の留学生が6人在籍しています。

授業の全体について

コース開始の時期は10月もしくは1月で、いずれも3学期制です。必修科目は1つ、選択科目は上記の開発関連コースの中から3つを選びます。授業の内容は理論も応用もバランスよく取り込まれており、特にディスカッションの時間が多く設けられています。

これまでに受けた授業の内容・感想

テストでの評価ではなく、学期内に1~2回のグループプレゼンテーションや学期末のエッセイの提出などが評価の対象となります。

授業名:Learning Education and Development

内容・感想:教育と開発に関連する理論を中心に学び、経済や哲学的な思考をもって理論を解析します。実践型というよりも理論型の講義のため、途上国の現場での経験を積んだコースメートから挙がる矛盾や疑問点、問題に対する視点はとても新鮮に映ります。


授業名:Planning for Education and Development

内容・感想:このコースは実践型で、プロジェクトの計画立案、実施(投資と成果)、モニタリングや評価などを、実際に国連機関やNGOが行ってきたプロジェクトの中から学んでいきます。授業の初めに、授業のテーマを紹介するグループごとの10分程度のプレゼンテーションがあり、その後、講師からの授業が行われる形式となっていて、授業後半は更にグループディスカッションが毎回、設けられています。

授業名:Participatory Planning and Project Management for Health Promotion in the Context of International Development

内容・感想:途上国における保健・衛生・栄養などの改善を目指すプロジェクト運営のためのフレームワークの作成を目的とし、現場参加型のプロジェクトを実施する上で生じる問題の解析やそれを解決するためのアプローチ法について学びます。加えて、この授業では学生が将来的に参加型のプロジェクト運営の実現を目指していることから、コミュニケーション能力の向上を目的とし、プレゼンテーションやグループワークが多く課せられることも特徴の一つです。

大学情報

学部を持たない専門大学院のため、学生の年齢層は比較的高く落ち着いた雰囲気です。特に多くの学生が教員や教育分野での経験を持っていることもあり、柔軟な思考を持った学生が多いと感じられます。

キャンパスはロンドンの中心にあり、交通の便もとても良いです。利点としてロンドン大学の一つの機関であることから、ロンドン大学他キャンパスの施設利用やセミナーの受講も可能です。

学生寮も大学から徒歩3分圏内にあり、夜遅くの図書館利用にも便利で、また院生のみの入居のため、施設は綺麗に使われており落ち着いた雰囲気となっています。

その他の情報

毎年秋には、開発学関連の4つのコースに在籍する学生で参加希望者(別途参加費用が必要)を対象に、パリに本部のあるUNESCO(国際連合教育科学文化機関)、その関連機関であるIIEP (The International Institute for Educational Planning )、そしてOECD(経済協力開発機構)での研修(5日間)が実施されます。国際機関の第一線で活躍されている職員の方から伺うお話しや、プレゼンテーションは大変刺激を受けるものであると共に、コースメイトや他のコースの学生達との交流の機会としても、貴重な体験となると思います。