「Foundation Diploma for Postgraduate Studies (FDPS) in International Foundation Courses and English Language Studies (IFCELS)」, School of Oriental and African Studies (SOAS), University of London

(ロンドン大学SOAS 大学院進学コース)

戸田 真裕美(とだ まゆみ)さん

執筆:2010年3月

自己紹介

大学卒業後、埼玉県の私立中学・高等学校にて5年間教員として勤務。その後、転職し外資系企業の人事部にて1年2カ月間勤務。教育分野での世界貢献を目指し英国への修士留学を決意。学部での専攻が開発学ではなかったため、修士には出願せず、1年間基礎を学びに本コースへ入学。来9月(2010年)からの修士入学を目指している。


所属コースの概要

FDPSはSOASに属するIFCELSという部門の1コースです。FDPSは学士号を所有していることが前提で、IELTSのスコアは必須ではありません。FDPSは、修了後に修士へ進学する事を目標としている学生を対象としています。IFCELSの中には、FDPSの他にICC (Intermediate Certificate Course in Comparative International Studies) やELAS(English Language and Academic Studies)というコースもありますが、こちらは修了後に学部入学を目標とする学生や、英語を集中的に学ぶ事を目的とした学生を対象としたコースです。

FDPSは3期制(10~12月、1~3月、4~7月)です。

2010年は7月2日でコースが修了します。

1年を修了すると、Diploma(留学先の大学に正規の学生として入学(編入)し、卒業単位を取れること)が与えられます。

本コースでは、1月下旬から2月の上旬頃、修士出願の際に必要な推薦状を発行してくれます。

2009年10月開始の本年度は、全体で100名ほどの学生がFDPSに所属しています。

学生の出身は、60%:中国、20%:韓国、15%:日本、5%:その他 という割合です。


入学に際し、下記7モジュールから2つを選びます。通年、この選択は変更できません。

Studies in European Society

Issues in International Development Studies

Comparative Studies in Cultures

Introduction to International Relations

International Business Studies

Studies in Media and Communications

International Law and Society


選んだ2モジュールに関しては、それぞれ週に1時間のLecture、2時間のLecture Review、2時間のLanguage Support、そして1時間のSeminarがあります。Lecture以外は1クラス10名ほどの少人数構成です。

私はIssues in International Development StudiesとIntroduction to International Relationsを選択しています。

全員共通で受講するのは、下記3モジュール(各週2時間ずつ)です。

IELTS Preparation

Academic English

Research Method

IELTSでOverall 7.0以上を保有している学生は、IELTS Preparation(IELESを受験する学生の英語能力を伸ばすことを目的としたプログラム)が免除されます。もちろん受講を続けても構いません。

モジュールではありませんが、Independent Study Project (ISP)に取り組まなければなりません。

ISPとは、各自が興味のある研究対象を設定し、その成果を8000ワードの論文にして提出するプロジェクトです。提出は5月上旬です。ISPに取り組むにあたり、ISP TutorとAcademic Supervisorというアドバイザーが割り当てられます。ISP Tutorはテーマの絞り方や論文の構成などをチェックしてくれ、Academic Supervisorは各自の研究分野に精通した、大学の教授です。この教授はSOASだけに限らず、他大学で教鞭をとっていらっしゃる方も多く含まれています。私はタンザニアの教育について研究をしています。


評価

評価はタームごとと学年末にもらえます。授業への貢献度や出席率(80%未満は不合格)も少し考慮されますが、課題エッセイと学年末試験の比重が高いです。

選択した2モジュールに関しては、1学期に1本、2000ワードでエッセイを書きます。Lectureでカバーされた内容なので、全くわからないものに取り組むわけではないですが、日本で求められる論文の書き方と英国で求められるそれとは大きく異なるため、最初は苦労する学生が多いです。返却時にはフィードバックももらえるので、自分の弱点なども認識することができます。 選択した2モジュールとAcademic Englishは、学年末に試験があります。記述式で、1試験につき2時間から3時間が与えられる形式です。Research Methodは、学年末試験はありませんが、授業内でのプレゼンテーションと課題の提出率が評価の対象となります。ISPは提出後、論文の内容はもちろんですが、評価者の前でのプレゼンテーションが評価に含まれます。



受講モジュール等の感想

①Issues in International Development Studies

開発学の基礎のない学生を主な対象とし、さまざまな切り口から、開発学の基礎を学ぶことができます。さまざまな学説、機関、事例などについて、批判的かつ分析的に捉えられるようになることが目的です。配布される教材も非常に丁寧な作りで、扱う分野ごとの参考文献も充実していて、修士に進んでも参考にできそうです。

Lecture以外では、講師が学生に積極的な発言を促してくれるので、議論も活発です。講師はみな開発学に精通した方々で、どのような質問をしても答えてくれます。


②Introduction to International Relations

国際関係学の学問としての成り立ちにはじまり、諸学説、近年の目立った議論などを扱います。Lectureで配布されるアウトラインも細かく作成されており、復習する際に大変役立ちます。課題エッセイの質問が非常に哲学的です。歴史や時事問題にも精通していることが求められます。

英国という土地柄、授業内で例としてあげられる事例がヨーロッパでの出来事である場合が多いので、世界史あるいはヨーロッパ史が得意な人には有利かもしれません。講師はみな非常に熱心で、メールで質問してもすぐ答えてくれます。

ただし質問にそのまま答えてくれるわけではなく、「あなたはどう考えているのか」と必ず聞かれます。自分の考えをある程度まとめたうえで、どこがわからなくて先に進めないかを伝えると、明瞭かつ的確に対処方法を教えてくれます。


③IELTS Preparation

私は入学前に規定のスコアを取得していましたので、1学期だけ出席して2学期からは免除してもらっています。Listening、Reading、Writing、Speakingの4技能に関して、学ぶというより、特訓を受けると言った方が正しいかもしれません。こなす問題の量がとにかく膨大です。講師が実際にIELTSの採点者なので、どうすれば高スコアがとれるのかを教えてもらえます。


④Academic English

限られた時間内で、与えられた資料を使い、求められた内容の論文を作り上げる方法を学びます。資料の読み方、論文内への引用方法、論文の構成について学びます。授業内で5週間に1度くらいの割合でTimed Writingというものがあります。資料は事前に渡されているので読むことができ、また構成や内容も事前に準備することができますが、2時間で1本エッセイを書きあげるというのは、思ったよりも大変な作業でした。学年末の試験は3時間あり、はじめにLectureを聞き、初見の資料を読み、与えられた質問に答える形式だそうです。


⑤Research Method

ISPのためのクラスです。テーマの設定方法や、Research Questionsの絞り方、文献の探し方、読み方、まとめ方など、ありとあらゆることを学びます。各自のテーマについて、5分から7分でプレゼンテーションをする機会が何度かありますが、そのプレゼンテーションへのフィードバックがもらえます。


その他

勉強のサポートの他にも、修士への出願サポートや生活全般のサポートも手厚い印象です。何か困ったことがあれば、問題に応じた担当スタッフが相談に乗ってくれます。学生ビザ担当のスタッフもいるので、大変心強いです。

学内設備に関しては、IFCELS所属の学生は、SOASの学生と全て同様のアクセスが保障されています。図書館や運動施設はもちろん、Student Unionやサークルへの参加ももちろん可能です。SOASの学生と時間の使い方で大きな違いはありませんが、スケジュールがよりタイトなことと、マスターの出願準備に追われることがIFCELSの特徴です。学生寮に関しては、Dinwiddy House、 Paul Robeson Houseという、SOAS生専用の寮で生活することも可能です。University of Londonの学生向けの寮に入ることもできます。

FDPSは、修士での勉強や英語での勉強に不安を感じている方に大変有効だと思います。私がこのコースを選んだのは、開発学のバックグラウンドがなかったこと、学業からずいぶん遠ざかっていたことの2点の不安を解消するためでしたが、まさに私が求めていたもの、それ以上のものを得ることができています。まだ、英国の修士は1年間なので、その前に1年間準備の期間を設けることで修士の1年間がより充実したものになるのではないかと考えています。