「MA in Education and Development」School of Development Studies, University of East Anglia

(イーストアングリア大学「教育と開発 修士課程」)

山本 伸子(やまもと のぶこ)さん

執筆:2010年2月

自己紹介

長い社会人生活を経て再び学生となりました。教育分野、開発分野ともに職務経験はありませんが、途上国の教育に以前から興味があり、望ましい援助って何だろう、自分に何ができるのか、という素朴な疑問から教育と開発について学ぶことにしました。卒業後については模索中ですが、途上国の現場を経験したあと、日本で何か関連のあることをしたいと思っています。ただし就職という形にはこだわりません。


所属コースの概要

MA in Education and Developmentでは、開発の場における教育の現状と課題を理論と経験から理解し、政策と実践を評価します。開発学部の中の教育コースなので、社会、経済、文化などさまざまな背景の中で総合的に教育を捉えることができます。また、教育学部と合同の科目やセミナーもあります。特に教育のバックグラウンドがなくても大丈夫です。

学生は14名で、内訳はイギリス人5名(うち1名は北アイルランド出身)、日本人4名、イタリア人、パキスタン人、中国人、台湾人、ネパール人各1名です。このうち1名はパートタイムコース(2年制コース)の2年目、1名は1年目です。教師の経験や途上国でのボランティアの経験がある人が多いのですが、職務経験のない人もいます。このコースは学生同士の仲がよく、担当教授も気さくな雰囲気です。


授業全体について

コースは2学期制で、両学期とも必須1科目、選択2科目です。必須科目計2つというのは他のコースに比べて少なめで、特に教育に関する科目はこの2科目のみです。ほとんどの科目は、あるコースの必須科目であり他のコースの選択可能科目である、という形なので、選択科目はさまざまな科目から自由に選ぶことができます。興味(と余裕)があれば、さらに他の科目を聴講することもできます。他のコースの紹介も参照してください。試験や修士論文の方法は他のコースと同じです。

どの科目も講義とセミナーから成り、ワークショップやフィールドトリップが含まれるものもあります。講義でも多くの場合、少人数またはクラス全体でのディスカッションがあります。セミナーは2~3のグループに分かれて行われ、さらにその中でグループに分かれてプレゼンテーションをし、それに基づくディスカッションが行われます。基本的に、講義で理論を学び、セミナーやワークショップで実践応用、体験理解というパターンです。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Introduction to Education and Development(秋学期必須)

内容・感想:

教育と開発の概念と考え方を学びます。ヒューマンキャピタルなどの分析モデルや教育に影響する要素を理解し、それをさまざまな状況や問題と関連付けて考察します。講義のほか、セミナーでは担当グループが中心となってプレゼンテーションとディスカッションを行います。外部講師による半日のワークショップもあります。評価はプレゼンに基づくエッセイ(1500ワード、30%)と、提示された複数のトピックから選択するエッセイ(3000ワード、70%)です。自分の体験を含めさまざまなケースと照らし合わせて教育を考えることができ、興味深い科目でした。


授業名:Educational Policy and Practice in Development(春学期必須)

内容・感想:

既存の教育政策と実践を批判的に分析し、政策の計画、作成、実践について学びます。講義のほか、セミナーでは決められた課題に基づいてグループごとに政策を作成し、プレゼンテーションとディスカッションを行います。評価は提示されたトピックに基づくエッセイ2本(1500ワード、35%と3000ワード、65%)です。エッセイはトピックが抽象的なので、どう切り込でいくかが難しいと感じています。


大学情報

他のコースの紹介に詳しく書かれていますので、そちらもご覧ください。学食に関しては、どうも厨房スタッフがアジアの食というものを理解していないような気がします…。大学の周りは緑が多く、うさぎやリスがいてなごめる雰囲気です。

その他の大学の特徴として、対応のよさが挙げられます。問い合わせなどをしたときの対応が早く、親切です。特に開発学部では、責任者が学生の声を聞くことに熱心です。またスタッフには、日本人女性がいててきぱきと仕事をこなしており、スタッフからも学生からも頼りにされています。

留学生が多いため、エッセイの書き方などの講座やチュートリアルなど、英語に関するさまざまなサービスがあります。希望者は無料で受けることができるので、活用するとよいでしょう。


その他の情報

先日神戸大学の方がお見えになり、日本人学生との間でミーティングが行われました。来年度から神戸大学とのダブルマスターディグリープログラムが始まります。これも選択肢のひとつとして検討する価値があるかもしれません。

留学前の勉強として英語と専門分野とがあるかと思いますが、英語に関しては、IELTSのスコアをクリアしたから充分ということではなく、それは最低ラインと思ったほうがよいでしょう。4技能とも重要ですが、評価はエッセイが中心となるため、英語のエッセイの書き方をマスターしておく必要があります。こちらに来てからの語学サービスは、それを補強するものと考えてください。

開発学の下地のない人は、日本語でよいので参考書を読んで基礎知識を仕入れておくとよいでしょう。多少とも知識があると、講義、というかその準備の英文のリーディングが理解しやすくなります。とは言っても、私自身英語力もまだまだ足りず開発の基礎知識もありませんでしたが、何とかやっていますので、そんなに心配することはありません。ただ持っているものが大きければ、それだけコースでの勉強を有意義なものにすることができます。

コースが始まってからは、エッセイなど早めに構想を決めて担当教授に相談に行くことをお勧めします。学生同士で話し合ったり勉強会を開いたりするのも役に立ちます。また開発学部では、春学期に入ってから特に、就職を視野に入れたさまざまなセミナーやワークショップが開かれています。