「MA in Conflict, Governance and International Development」 School of Development Studies, University of East Anglia

(イーストアングリア大学「紛争、ガバナンス、国際開発 修士課程」)

吉川 尚志(よしかわ ひさし)さん

執筆:2010年2月

自己紹介

大学で学んだ開発学を紛争、平和構築という観点でより深く掘り下げて勉強したいと思い、大学院に進学しました。職歴はありません。卒業後はまず平和構築関連のインターンシップをしようと考えています。最終的な目標は平和構築の仕事に携わることです。


所属コースの概要

私が所属するコースMA in Conflict, Governance and International Development (MACGID) は紛争を政治、経済、ジェンダー、民族等の観点で考え、発展途上国の紛争後の社会的・経済的発展を研究するコースです。

MACGID の特長は、平和構築の専門家を外部から雇って行う実践的なセミナーがあることです。セミナー自体は3回程度のものですが1回あたり8時間あり、実際に国連等の国際機関で平和構築のツールとして使われているもので、卒業後にすぐに平和構築関連の場で働くことを目的としています。

開発学部内には他に16のコースがありますが、このようなセミナーを開いているのはMACGIDだけです。このセミナーは他コースの生徒も参加できますが人数に限りがあるため、MACGIDの必修科目であるConflict, Peace and Securityというモジュールを履修している生徒が優先されます。ただし、このセミナーは今年度から新しくMACGIDの担当教官になった方が今年から開催したものであり、この先生が来年度もこの大学にいるか、またたとえいなくなっても他の先生がこのセミナーの開催を受け継いでくれるかは定かではありません。興味のある方は大学に直接連絡を取ってみてください。

MACGID の短所としては、担当教官が毎年度変わっているということです。私の知る限りでは3年連続で変わっています。これが来年度も続くかは分かりません。ただもし先生が変わると、上記で述べたセミナーの有無や下記で述べるモジュール内容もがらりと変わる可能性がありますので、注意してください。先生の異動は5、 6月には分かるので大学に直接連絡を取るのがいいと思います。その後で、この大学に行くかどうかを決めても十分に間に合います。

MACGIDに所属している生徒は私を含めて4人(イギリス、ナイジェリア、オーストラリア、日本)です。これは毎年言えることですが、このコースは他コースと比べ生徒数がかなり少ないです。そのため、担当教官と話をできる機会が多くあります。

クラスメイトの大半はNGOや政府、国連機関で働いていた方たちです。今年度は元国会議員の生徒が1人います。開発学部のマスター生全体で見ると勤務経験者と学部卒の割合はおそらく8:2 だと思います。国、地域別で見ると、アフリカ人、イギリス人、インド人、日本人が多いと思います。日本人は毎年度20人前後です。


授業全体について

コースは2学期制です。秋学期は9月下旬から12月上旬まで、春学期は1月上旬から3月下旬までです。MACGIDは秋学期に必修科目2つ、選択科目1を履修し、春学期に必修科目1つ、選択科目を2つ履修します。どちらの学期も12週あり、6週目はリーディング・ウィーク(ターム中間にある1週間の休み)で授業がありません。長期休暇は冬休みの1ヶ月と春休みの1ヶ月です。ただし履修するモジュールによっては、長期休暇中にエッセイの提出がある場合があります。

授業内容は基本的に理論重視です。ただ応用を軽視しているわけではなく、レクチャーで理論、セミナーでケース・スタディや応用を学ぶというスタイルです。レクチャーでの先生のスタンスは理論重視ですが、生徒が自分の勤務経験をもとに意見を言うので、その都度先生が生徒のケース・スタディを理論と照らし合わせてくれ、毎回大変有意義な内容となっています。

課題はどの科目もたいてい2つのエッセイ、又は1つのプレゼンテーションと1つのエッセイです。点数の比率はだいたい最初の課題が30%、2個目の課題が70%となっています。エッセイの文字数は1000文字から3000文字です。

試験は4月の下旬にあります。試験制度は他大学と少し変わっており、履修している科目全部に試験があるわけでなく、必修科目だけが試験の対象となっています。しかもその必修科目の試験を1つずつ行うのではなく、全部まとめて1つの試験として実施されます。時間は3時間です。私のコースの場合は秋・春学期あわせて3つの必修科目があるので、その3つの科目を併せた試験があります。修士論文は9月の上旬に提出です。文字数は8000文字から12000文字となっています。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Governance, Democracy and Development (必修)

内容・感想:

名前の通り、ガバナンスと民主主義を学ぶ授業です。グッド・ガバナンスの定義、民主主義の重要性、またそれらが誰にとって重要なのかを先進国と途上国、国際機関 (Wold Bank, IMF, WTO 等) と途上国、NGOと途上国の観点で勉強します。


授業名:Conflict, Peace and Security (必修)

内容・感想:

戦争・紛争の定義がどのように変わってきているか、男性学から見た紛争、民間軍事会社(PMF)、国連平和維持活動(PKO)、武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)等を勉強します。男性学から見た紛争は特に興味深いトピックでした(紛争中の男性による男性への性犯罪がメディアに出てこない事実、国連の PKOのジェンダー化、それらの背景に見え隠れする大国の政治的戦略等)。


大学情報

キャンパスは街の中心から車で15分程度離れたところにあります。街と大学を繋ぐバスは24時間動いており便利です。またイースト・アングリア大学のある街ノーウィッチは、イギリスでもかなり治安の良いところなのでフラットや家を借りても安心して暮らしていけます。大学の寮は安くて1週間£5、60台からあります。高いのは1週間£90台です。寮費は電気、水道、ガス、インターネット代込みです。図書館はキャンパス内にある湖の近くにあり、湖を眺める形で勉強ができます。図書館に隣接している24時間のITエリアも大変便利です。学食は残念ながらあまりお勧めできません。自炊をお勧めします。留学生が多いので、大学生協にはアジア系の食材も多少置いてあります。街に行けば3店ほどアジア食品店があります。キャンパス内にはイギリス国内で有数の大きさを誇るスポーツセンターがあり、学生割引があるので低額で楽しめます。


その他の情報

英語はもちろんですが、留学前と留学中に何か他に違う言語を勉強しておくと、卒業後に平和構築も含めた開発関連全般の仕事に就くときに有利だと思います。留学生が非常に多いので、主要言語はもちろん、少しマイナーな言語もたいてい聞くことができます。留学前に勉強して、こちらに来てからその言語のネイティブの人達と友達になって外国語をもう1つ習得するのも留学の利点のように思います。