「MA in International Relations and Development Studies」School of Development Studies, University of East Anglia

(イーストアングリア大学「国際関係と開発学 修士課程」)

南川 麻美(みなみかわ あさみ)さん

執筆:2010年2月

自己紹介

私は生まれも育ちも日本で、海外で生活するのは今回が初めてとなります。小学校時代からボランティア活動など社会に貢献できる事に興味のあった自分が成長した結果が、今の開発学の修士の生活につながったと思います。

小学校から高校までボランティア活動に携わり、その延長線上で国際問題についても考えるようになりました。大学は国際系の大学に入学し、国際関係学や開発学などを学びました。大学時代には、大学のフェアトレードグループに入って活動したり、UNU-IAS(国連大学高等研究所)のインターン(学校の公募)やインドネシアでのスタディーツアーに参加し、開発の現場を経験しました。

この3つの経験は自分が大学後半に差しかかった時に、一般企業に就職するか開発に携わる仕事を目指すかの決断をする時期でもありました。色々と考えた結果、やはり今日の国際社会における様々な問題をどうにかして解決したいという思いから開発の現場での仕事に携わりたいという思いを強くしました。特にその時は国際機関での就職を主に考えていたので、それに必要な条件を満たす為に修士を取ろうと決意しました。

卒業後はもちろん開発に携わる仕事を考えています。学部時代の卒業論文で、より良い開発を目指すためには開発の現場における各アクターの協力が非常に重要視されてくるということについて述べました(私の時代は各アクターの協力体制が今程、整っていない時でした)。特に、NGOと国連のもっと強いパートナーシップが必要ではないだろうかと、結論づけました。したがって、将来のビジョンとしては、論文で書いた事を実行したいと思っており、そのために国連機関に就職したいと考えています。


所属コースの概要

私の所属するコースは国際関係を学ぶ学部と開発学を学ぶ2つの学部に属しているために、国際関係系と開発系の両方の必修科目を履修する必要があります。国際関係と開発学を同時に学べるこのコースに進学した理由は、修士に進学すると決めた時、開発の中でも特に農村開発なのか、社会開発なのか、ジェンダーなのか等と深く掘り下げることができなかったのが本当の理由です。このように様々な視点に興味をもっていたため、結果としては両方の事が勉強できるこのコースの選択は正しかったと思っています。

私のコースは2つの学部に所属していますが、名目上はSchool of Development Studiesに所属していることになります。なお、学部全体では16のコースがあります。(2009年秋から17コース)

(参照:https://www.uea.ac.uk/dev/postgrad/master

コースの違いは、必修科目の違いといってよいでしょう。例えば、私の場合は前期でInternational Relations Theory と Development Perspective が必修になり、MA in Education and Development はIntroduction to Education and Developmentが必修になり、MA in Development and Economic はMicroeconomics of Development とEconomic Method for Developmentが必修になります。

どのコースもオプション(自由選択科目)として最低1科目は自分のコースに関係なく好きな科目を受講できます。コースによって必修科目数は異なりますが、基本的に1学期に3科目の受講なので、各学期2科目が必修となっているコースに所属にすると、修士生活はその科目色になってしまいます。受講したい履修した授業があっても、所属するコースが設定する必修科目数によっては実現できない場合があります。したがって、事前に希望するコースの必修科目が何かを調べることをお勧めします。

このコースを始めてから国際関係よりも開発学寄りだということに気付きました。そして、2つの学部に所属していると、エッセイの書き方や考え方も多少変わってきたり、求められている学術的なアプローチが多少違うので、それに対応していくのが大変な事もあります。

クラスメイトはコースやクラスによって様々です。学部単位での比較をしていくと開発学部には留学生が多く職業経験のある人が多い気がします。日本人は比較的多いです。国際関係学部になると、学部からそのまま上がってきた人が多く、イギリス人が多いです。

やはり、UEAは開発学で有名な学校なので本当に世界中から生徒が来ているというのを、グループワークなどをした時に国籍が本当に皆バラバラということから感じられます。そんな国際色豊かな中で勉強していくのは、勉強以上に得るものがあり、私は非常にその環境を楽しんでいます。特に、開発学部では開発の現場で実際に働いていた人達も多いので、その経験の話を聞けたりできるのはとても貴重な事です。

国際関係学部においては学部からの持ち上がりの生徒が多いので、コースワークをどうやって進めていったら良いかなどの相談をしたりしています。開発学部と国際関係学部を比較したときには、留学生の比率や職業経験の有無、学部からの持ち上がり生徒の数などの差はありますが同じ開発学部内でのコース単位での比較ではそういった点において大きな違いは見られません。


授業全体について

私のコースは、9-12月が秋学期・1-4月が春学期の2学期制です。12-1月はクリスマス休暇、4-5月はイースター休暇、そして試験を経て修士論文作成の期間に入り9月にコースが終了するというスケジュールになっています。履修科目は各学期3科目ずつで私の場合は以下の様な履修でした。


これまでに受けた授業の内容・感想

【秋学期】

授業名:Development Perspective (開発学部の必修選択)

内容・感想

開発学の基本的な理論を学ぶ授業。私のコースでは二者択一の必修だったので、履修者の数も多く、日本の大学の様に講義中心で、授業内容は理論が主でした。


授業名:International Relations Theory(国際関係学部の必修)

内容・感想

この科目は必修だったので、先の授業と同様に人数が多く講義中心でした。ただ、この授業には毎週1回ずつ講義とセミナーがあったので、講義で理解したことを実際の国際関係の事象に当てはめて考えていくということをセミナーで行っていました。


授業名:Introduction to Social Development(自由選択 / 開発学部の授業)

内容・感想

この授業は一言で言うと本当に大変でした。社会学は個人的に好きで、開発社会学にも興味があったので受講したのですが、授業前に社会学の理論を理解するKey reading(授業前の必修リーディング)が本当に多くて大変でした。例えば1回の授業で、アマルティア・センのケーパビリティーアプローチを理解してから授業に臨み、講義ではその理論がどうやって働くのか、それの問題点などを取り上げ、授業の後半にはKey readingも含めて何を理解したかを確認するディスカッションが行われました。

名前の通りの社会開発学の授業で、社会学の様な理論を分析枠組みとして開発の問題を分析していくものでした。毎回の授業では理論を授業前に理解するKey readingと授業の後半で実際にその理論がどの様に働くかをディスカッションし、また1学期に3、4回のセミナーでは生徒が全てのセミナー時間(90分)を使って、実際に授業で取り扱った理論をグループでプレゼンテーションしたりしました。

Key readingに関しては、英語で社会学の理論を理解しようとするとなかなか難しい事もあり、日本語のソースを見つけたりして授業に備えました。そして、初めてのプレゼンテーションがいきなりの90分ということで大変で、またグループプレゼンだったので他の国の人と話し合いを進めながら意見をまとめ上げていくという事の大変さも実感しました(グループプレゼンテーション 20%+ 3000 words エッセイ 80%)。


【春学期】

授業名:Contemporary Development World(開発学部の必修選択)

内容・感想

これは前学期のDevelopment Perspectiveの続きになる授業で、前学期の理論に加え、MDGs(Millennium Development Goals)やソーシャルキャピタル、参加型開発など比較的新しい考えを取り上げた講義です。


授業名:The Foreign Relations of China and Japan in Modern World(国際関係学部の必修選択)

内容・感想

現在受講中の科目ですが、私にとって未知の分野です。履修の関係で、高校でも日本史をそこまで勉強した記憶がなく、世界史になると近現代の日本や中国の歴史は微々たるものなので、その知識の乏しさに今は苦戦しています。

国際関係学を特に中国と日本に絞ったもので、授業形態は先生が授業を進めていく上で、必要に応じての質疑応答に生徒が答えていくという形でレクチャーとセミナーが入り混じった形です。

授業を行う先生は一方的に講義を進めるのではなく、必ず生徒に意見を求め、それが正しい、正しくないとかではなく大事にしてくれます。その意見をもとに先生がコメントを付け加えて、授業を進めていくという形式なので、生徒一人一人の知識量が非常に多いと感じます。

個人的に今まで知らなかった、考えることもなかった新しい角度からの日本を知れて非常に興味深いのと、他の国の生徒から日本の事について聞かれた時に完璧な答えができないのが悔しい事もあり、頑張っているところでもあります。

先生がとても理解のある人で、生徒に非常に協力的な人なので、一緒にエッセイの内容を考えたり、参考となる資料を分けてくれたりします(1500 words エッセイ30%+2500-3000words エッセイ50%+プレゼンテーション 20%)。


授業名:Education Policy and Practice in Development(自由選択 / 開発学部の授業)

内容・感想

今まだ履修中の授業なのですが、以前から開発における教育の重要さを実感し、興味があったので非常に楽しんで授業を受けています。毎回の授業では紛争地における教育、教育の政策、HIV/AIDSなどのテーマが設けられており、そのトピックを理解するのに授業がレクチャー形式で進められ、その中で必要に応じてディスカッションが行われます。

この授業では主に開発における教育の実態を探るといった形で、レクチャーがメインですがその中に時折、意見交換の為のディスカッションが設けられたり、セミナーではより実践的に自分たちが政府や他の開発に携わるアクターになって政策を考えたりします。

このクラスは特に、教育の分野での職業経験のある人が多いので、参考文献等だけでは理解できない現地の状況を知ることができます。セミナーは学期に4回あり、先に述べた通り実際に自分たちで開発の中の教育の政策を考えたり、時にはSave the Childrenの方にお越し頂いて講演を聴くこともありました。先生もOXFAMやUNESCOで長く働いていた方なので、文献からの情報にプラスして先生たちの経験も踏まえた知識を得ることができ、非常に実践的で楽しいです(1500 words レビュー35%+3000 wordsエッセイ75%)。


大学情報

私がこの大学を選んだのは開発学が有名ということ。開発学をやるということで、国はイギリスに決め、開発学で有名な学校をいくつか上げて、その中から選びました。他のイギリスの生徒に聞いたところ、私は知らなかったのですが、他の学校に比べて生徒が課外活動に積極的に参加できる環境が整っているということがUEAを選んだ決め手だそうです。私にとっては入学してから気づいた事ですが、ボランティアセンターや先生からのインターンシップの情報や学校を通しての様々なイベントへの参加が可能で、情報とチャンスはたくさんあるので自分が動いた分だけ手に入る環境です。また、学部のウェブサイトにも日本人学生に役立つ情報のページがあります。

(参照:http://www.uea.ac.uk/dev/postgrad/japan

また、毎年120ヶ国以上の国から来る留学生との触れ合いも貴重なものです。今、私は学校の敷地内にある寮に住んでいるのですが、8人で1つのフラットをシェアし、内訳はナイジェリア1、スイス1、日本2、パキスタン1、タイ1、台湾1、エジプト1と国籍がバラバラで、そんな環境での生活は非常に刺激的です。この8人でキッチンをシェアしているのですが、そこで見られる各国の料理もまた魅力的。この様に自分で料理して毎回の食事を済ませるか、校内にあるカフェで友達を食べたりします。カフェではもっぱらイギリスの料理が中心で、そこではイギリスの料理を楽しめます。

そして、’2nd home’と呼ばれる図書館は基本的に24時間使うことができ、修士の学生には専用の勉強部屋が設けられたりしています。前期よりも後期の方が難しく、より忙しく感じる私は、日課の様に図書館に通い、課題を進めるというのが生活の一部になってきています。平日はこんな感じで過ごし、週末はこれに加えて街に出て買い物をしたりします。

学校から街まではバスで20~30分で、街に行けば大きいモールやスーパーなど必要なものは何でも揃っているので生活に不自由はしません。また、校内にも小さめのスーパー、郵便局、銀行、パブ、クラブ、レストランがそろっているのでキャンパス内だけでも生活できます。


その他の情報

今、留学を考えている人達への一番のアドバイスとしては英語を勉強すること。各学校で入学条件の1つとして一定基準以上のIELTSのスコアが求められていると思いますが、それをクリアするという事=修士課程の勉強においての英語は苦労しないということではありません。英語力はどんなにあっても足りることはないと思っています。例え、IELTSのリスニングができても、それで講義の内容が全て理解できるわけでもセミナーにきちんと参加できる訳でもないので、IELTSのスコアはあくまでもスコアであるという事を忘れないで下さい。

そして、イギリスの修士は1年で終わってしまうので就職の事など少しだけ先に考えられたら考えておくのがいいと思います。私は学部時代に就職活動は一切しなかったので、今の時期になって日本での就職活動の形態を探るところから始めています。また、日本以外の就職も考えているので、そちらの情報収集も必要となり、修士の勉強につけ加えてなので大変です。

また、日本での就職にはIELTSではなくTOEICのスコアが求められるのでTOEICの受験はスコアの有効期限も考慮しつつ早めに受験しておくことをお勧めします。個人的な感想として、修士が始まってしまうと修士の勉強だけで忙しくて他に手を回すのが大変になるのと、それに没頭した方がいいと思うので、その他の事で今済ませられる事があったら早めに取りかかる方がいいかと思います。