「MA in Development Studies」

Institute for Development Policy and Management (IDPM),

University of Manchester

平 祐朗(たいらさちお)さん

執筆:2009年3月

自己紹介

大学在籍中、青年海外協力隊に参加し、ポリオ対策という職種でケニアに2年間派遣されました。電気と水道の通っていない小さな村に住み、WHO提唱であるポリオ根絶キャンペーンの下、担当地域内の疾病監視活動に携わりました。帰国後は復学し卒業したのち、開発コンサルタントのアドミニストレーターとして、約4年間トルコのイスタンブールにて勤務しました。ボスポラス海峡で隔てられたアジア大陸とヨーロッパ大陸を結ぶトンネル鉄道プロジェクトの現地事務所にて、国際色豊かなメンバーと働くことができ、非常に刺激を受けました。また、彼らの多くがエンジニアだったため、事務職だった私も専門的な知識を身につけたいと思い、進学を決意しました。


所属コースの概要

マンチェスター大学はイギリスでも最大規模の大学ですが、IDPMもイギリス国内では最大の大学ベースの開発研究機関となっています。大きく分けて、社会開発系と経済開発系に分かれるのですが、私の所属するDevelopment Studiesというコースは社会開発系に分類されます。開発に関する課題や現状を多角的に理解し、そこから可能な解決を探る力をつけることを目的としており、他のコースと比べるとより幅広い視野をもって勉強します。従って、理論を学ぶ際でも、必ず利点と欠点両方を検討・考慮した上で、それを現実に当てはめた際にはどうなるか、という方法をとります。

開発学というと、幅が広すぎて実用的でないという声もありますが、ある手法がどういった条件でどの程度有効であるか、またそれによりどういった弊害が起こりうるのか、ということを常に意識して取り組む姿勢は、机上の空論を避け、確実に実務に生きてくると思います。半面、多角的な理解を目指す分、正解というものはほぼありませんので、学問において一つの正解を求める方には向かないかと思われます。

クラスメイトは多国籍であり、半数近くは何らかの職歴を持っている印象です。IDPM全体では85%が留学生ということもあり、多種多様なバックグラウンドを持っているのですが、基本的に気さくで気取ったところがないのが共通点です。


授業全体について

学期は2学期に分かれており、1学期は9月から1月、2学期は2月から6月までです。しかし、授業はほぼひと月前に終了し、残りは期末のエッセイ提出やテスト期間となります。学期末のエッセイは基本的に3,000字で、各学期4科目(必修2、選択2)なので、計12,000字を書くことになります。また、締め切りが同日であることも多いので、きちんと計画を立てて早目に始めることが求められます。2学期終了後は修士論文(15,000字)を書く時期に充てられ、9月初旬に完成となりますが、各章ごとに締め切りが設定されるので、あまりゆっくりする時間はなさそうです。


これまでに受けた授業の内容・感想

各科目には必修のゼミナール(3-4回)があり、あらかじめ与えられた質問にプレゼンテーション方式で答えます。人数は少ない時で5人程度、多い時は15人以上になることもあります。少人数の場合は各自、多い時はグループに分かれ、質問に回答しつつディスカッションを進めます。初めは聞き慣れない英語のアクセントに苦労したものの、クラスメイトとは次第に打ち解けるので、比較的自由に発言できる雰囲気です。期末のエッセイのみで成績が評価されます。


大学情報

大学が非常に大きいので、大学が街の一部と化しています。寮のいくつかは学校と同じ敷地内にあり便利なのですが、一部の寮はキャンパスから離れたところにありますので、そちらに振り分けられると通学に時間がかかるようです。基本的に留学生は(条件付きでも)合格した時点で、いずれかの学生寮に入る権利を保障されているのですが、手続きをする期間が決まっていますので、忘れずにオンライン上で申し込みをしなければなりません。

寮は各国の留学生で成り立っているので、騒音や散らかし具合には、忍耐力や交渉力が必要です。設備を共有する人数にもよるのですが、最大12人でキッチンやトイレを共有する場合があるので、それなりの覚悟はしておいた方がいいのではないかと思います。

マンチェスターはイギリス第三の都市ですが、特に都会的な雰囲気はあまりありません。大学周辺の建物にはヨーロッパらしさは感じられず、また、人々もフレンドリーで、人種も雑多なので自分が外国人であることはあまり意識しないで過ごせます。和食レストランや日本食を扱うスーパーもあり、物質的には特に不自由することはあまりないのではと思います。ただ、天気の悪いイギリスの中でもさらに天気が悪いと言われていますので、こちらも覚悟が必要です。また、マンチェスター訛りの英語は少し癖があるので、慣れるまで時間がかかるかも知れません。