「MSc Management and Implementation of Development Projects」Institute for Development Policy and Management (IDPM), University of Manchester

小野澤 潤(おのざわ じゅん)さん

執筆:2009年1月

自己紹介

はじめまして、マンチェスター大学大学院に所属する小野沢潤と申します。現在、英国生活2年目、開発計画の運営と実施(Management and Implementation of Development Projects (MIDP)、というコースに在籍しています。

私は日本の大学では中国語学部に在籍していたのですが、国際機関などでの就職を憧れた学生の一人でした。就職活動では国際協力に携われる就職先を目指して活動をしていたのですが、結局一般の日系企業に就職し、中国で海外駐在員として働いていました。しかしその間も、もう一度挑戦してみたいという思いが捨てきれず、3年の就業期間を経て、退職。海外での留学(修士課程)は国際機関での就職に有用だという情報を得て、英国に渡ることを決断し、今に至っています。

1年目はイーストアングリア大学にてPost Graduate Diploma in Economicsを取得し、2年目からここマンチェスターの大学院に進学しています。また開発分野での就業経験がないため、ここ2年ほど、日本のNGOが企画するワークショップに参加したり、去年(2008年)の夏にはバングラデシュのNGOと直接コンタクトを取りインターンシップに参加していました。


所属コースの概要

MIDPはマンチェスター大学のIDPMコースと、2004年に同大学と統合されたUMIST(University of Manchester Institute of Science and Technology)とのコラボレーションの下、誕生したコースです。現在ではIDPMと同大学のMACE(School of Mechanical, Aerospace and Civil Engineering)のジョイントコースとして運営されており、開発プロジェクトの提案から評価までの過程における必要な知識やスキルを教えています。MIDPのコース運営に関わってきたUMISTやMACEといった大学、学部名から伺えるように、主に発展途上国でのインフラ方面でのスペシャリスト、技術者養成、教育を目的としていたようですが、現在では社会的、経済的発展に携わる人材育成という点も大きく視野としていれているようです。

同学科はアカデミックというよりもむしろ、プラクティカルな視点を持っていると思います。例えば、後に挙げさせていただくProject Financeという授業の課題では、国の状況やリスクそれに対する対策を視野に入れつつ発展途上国で小学校を建てる際の財務評価を下す、というものを行いました。そういった事業に関わったことのなかった私は、発展途上国でのプロジェクトに対するとっかかりをそこでつかむことができました。

一方で、MIDP自体にハード系のバックグラウンドを持つ学生があまり多くないため(一方でソフト系バックグラウンドを持つ学生は比較的豊富)、前期は若干初歩的なものに終わってしまった感がありました。また、前期にMIDPの学生に設けられていたコースは、Development Practice(開発業界のイシューを大まかにさらう授業)、Project Financeの2つが必修、選択科目が4つ設けられており、若干物足りなさを感じていました。他学科の授業を履修し、MIDPに設けられている授業の少なさをカバーすることができていますが、自分の興味のある分野の授業が開講されているかは気をつける必要があります。

MIDPの今年度のクラスメイトは非常にバラエティに富んでいます。中南米、カリブ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、世界中から様々なバックグラウンドを持った人が集まっています。自国のNGOや国際機関で働いている人も多く、そういった人から現地の生の声を多く聞くことができます。


授業全体について

マンチェスター大学は、1年が2学期に分けられ(授業が前期は9月末から1月末、後期が2月初めから6月中旬となります。)、6月中旬以降9月までを修論執筆に当てることになります。前期・後期ともに実際の授業期間は約3ヶ月間ずつ、残りがクリスマスやイースターといったバケーション期間、ペーパーテストのある試験期間になります。 選択科目数は各期、上に挙げたように必修が2科目、選択が2科目となり、基本的にレクチャーが2時間で、セミナーが1時間という配分です。また後期にはキプロスへのフィールドトリップが予定されています。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Development Practice: International contexts and worlds of action

内容・感想:

MDGsやグローバライゼーション、NGOの世界での位置づけなど、開発学におけるトピックを広範囲に取り上げ、レクチャー、議論をする授業です。まさに開発学の基礎的位置づけといったところでしょうか。評価に含まれませんが、グループプレゼンテーションが課され、成績評価としてはエッセイ(文字数は4000字、トピックは選択自由)の提出一本が課されました。


授業名:Project Finance

内容・感想:

発展途上国でのインフラ事業(発電所や道路など)に関する授業で、事業に参加する団体や仕組みからプロジェクトの進め方などを基本から教わる授業です。成績評価は30%がレポート、70%が筆記試験となります。


授業名:Research Skills for Economic Development

内容・感想:

通年の授業で、MIDP学生の選択科目に属さないものでしたが、スキルを学びたくて履修しました。前期は統計学と計量経済学の基礎を学びました。また、後期はそれらを修士論文などでどのように使っていくかというのを学ぶようです。前期評価は20%の提出式課題(問題を出され、期限までに回答を作成、提出するもの)と筆記試験30%でした。


授業名:Development Macroeconomics

内容・感想:

これも同様に、MIDPの科目に属さないものです。学期を2つのパートに分けており、1つめが経済成長モデル、もう1つが国際マクロ経済学(為替決定理論やアジア通貨危機など)でした。評価に入らないグループプレゼンテーションが2つあり、1つが経済成長モデルを実際の国家にあてはめて分析するものと、もう1つが世界で起こる通貨危機を分析、発表するものでした。成績評価は30%と70%の筆記試験でした。


大学情報

大学は街の中にあります。繁華街から歩いて約10~15分ほどのところにあり、非常に便利な立地です。大学に属する図書館も複数町中に点在してあり、蔵書数は他の大学と比べても遜色ないと思います。ITルームは24時間空いているため、家では勉強に集中できないという人にはおすすめです。住まいに関してですが大学の寮はあまりおすすめできないというのが実感です。コストパフォーマンスがあまり良くなく、現在私は大学外でハウスシェアをしています。また大学自体の規模が大きいため、様々な面での管理が他大学(たとえば去年いたイーストアングリア大学)と比べ、若干行き届いていないかなという気がします。


その他の情報

大学、イギリス留学生活について知る一番良い方法は、留学生のブログから雰囲気や学んでいることをつかんだり、mixi、facebookなどを利用し留学中の学生と直接コンタクトをとったりしながら、生の情報を得るのが一番だと思います。