「MSc Environment and Sustainable Development」Development Planning Unit (DPU), UCL (University College London), University of London

武士俣 明子(ぶしまた あきこ)さん

執筆:2009年1月

自己紹介

日本の大学で学部(専攻:土木工学)、博士課程前期(専攻:計画建設学(都市交通計画))を修めた後、独立行政法人国際協力機構(JICA)へ入構。社会開発調査部及び地球環境部にて、主にアジアやラテンアメリカの水衛生・廃棄物管理・災害対策等の開発調査・技術協力プロジェクトを担当。その後、JICAバングラデシュ事務所にて、都市環境・砒素汚染対策・災害対策各分野の事業に従事。2008年9月より、ロンドン大学University College London(UCL)のDevelopment Planning Unit (DPU)にて、修士課程(MSc Development and Planning: Environment and Sustainable Development)に在籍中。


所属コースの概要

Development Planning Unit (DPU) は、ロンドン大学(University of London)の一部であるUniversity College London (UCL) のThe Faculty of the Built Environmentに属しています。DPUでは6つの修士課程に加えて博士課程及びショートコースを提供しています(詳細は、下記ウェブサイト参照)。学生は6つの修士課程合計100名程度で、37カ国から学生が集まっており、各課程の人数配分は毎年異なっているようです。私が所属するMSc: Environment and Sustainable Development(ESD)には、パートタイム含め約40人の学生がいます。そのうち、日本人は2名、イギリス・カナダ・アメリカ・ラテンアメリカからの学生が大半を占め、開発をバックグラウンドとする修士課程としては低所得国からの学生が少ない印象です。

クラスメイトのバックグラウンドですが、開発分野での経験をもつ人は少なく、どちらかというと環境問題に興味をもってESDを選んだという人の方が多いように見受けられます。ちなみに、DPU全体として、Urban Development、Urban Planningの色が濃く、建築をバックグラウンドに持つ学生が多いのも特徴です。

ESDでは、低所得国の、特に近年人口増加とエリア拡大が急激に進む都市部において、環境の変化をどのように捉え、どのような政策・管理ツールをつかって持続的開発を実現していくかを様々な角度から学び、開発の現場で活躍する専門家を育成することを目的としています。環境問題にまつわる政治的・社会的側面、政策・計画策定・管理の具体的手法、様々なアクターの役割、ガバナンス等を幅広く学びます。低所得国の環境問題、特に都市における環境問題を広く学びたい人に向いていると思います。日本の大学で言う“環境”分野よりも社会学的な側面が強いように感じます。

日本の大学院にも在籍していましたので、双方を比較すると、イギリスのTaught Master(Research Masterとは違い、講義に参加し論文を作成する)では1年間で学位取得を目指すため、講義で扱う各テーマが多ければ多いほど、議論は浅くならざるを得ません。現時点での印象としては、本修士コース参加の意義は、講義終了後3-4ヶ月で仕上げることになる修士論文の中で、自分が興味をもつテーマをどこまで掘り下げられるかにかかってくる気がしています。

DPUウェブサイト http://www.ucl.ac.uk/dpu/index.htm


授業全体について

DPUは3学期制をとっており、一学期(9月-12月)、二学期(1月-4月)、三学期(4月-6月)にわかれています。二学期の終わりにそれまでの授業の試験がまとめて行われ、5月にはフィールドトリップ(2009年はガーナの予定)が実施されます。6月以降は、9月の修士論文提出を目指し、論文執筆に費やされます。一学期にはReading Week(ターム中間にある1週間の休み)がありましたが、DPUの学生はロンドン郊外のウィンザー城の研修施設における泊まりがけワークショップに参加したため、授業はありませんが、Readingに費やす自由な時間もほぼありませんでした。

授業(モジュール)ですが、ESDでは(他のDPU修士課程は全て同じ)、3つのコアモジュールに加え1つのオプショナルモジュールを選択し、一・二学期を通じて同じモジュールを受講します。各モジュールの学生数は、ESDの学生に加えオプショナルモジュールとして選択した学生が加わるため、35人~42人程度です(おそらくDPUの中では一番多い)。学生は各授業の前にあらかじめ配布されているReadingリストの資料を読んでおくことが求められますが(通常1チャプター×3本ほど)、現実的に全てを読み込む時間を確保するのは極めて難しいです。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:The Political Ecology of Environmental Change(コアモジュール)

内容・感想:

環境と開発に関する議論の包括的なレビュー及び分析。授業形態は、レクチャーが主体。加えて、学生同士のディスカッション+グループプレゼンテーション。各学期にエッセイ1本(2本×30%)、二学期末に試験(40%)

授業名: Urban Environmental Planning and Management in Development(コアモジュール)

内容・感想:

低所得国の都市における環境問題について、誰が原因をつくり誰が影響を受けているのか、環境管理計画と管理方法等、持続的な開発に向けた具体的な方策を学びます。一学期では、具体的な例を交えながら、途上国の都市環境問題について様々な課題(水衛生、廃棄物、社会的・物理的な環境問題の非平等配分等)と様々なレベル(国、地方、都市、コミュニティ等)から包括的に学びました。授業形態は、レクチャー+ディスカッション+グループプレゼンテーション。各学期にエッセイ1本(2本×30%)、二学期末に試験(40%)


授業名: Environment and Sustainable Development in Practice(コアモジュール)

内容・感想:

都市の環境管理に関する知識やスキルを実際のケースに応用し、実践的に習得を目指す授業。一学期は、ワークショップ形式で様々な場面を想定したディスカッションを実施。特に、ウィンザー城ワークショップでは、インド・チェナイの水不足問題をテーマとして、学生がステークホルダーグループに扮しそれぞれの立場で戦略を立て駆け引きし解決策を探るという具体的なものでした。

さらに、2012年にロンドンオリンピックが開催されるロンドン北東部ハックニー地域において、オリンピック施設建設によって影響を受ける地域を対象とした行政・住民等へのヒヤリング及び意識調査を行い、地域におけるオリンピックの影響と期待、地域のEnvironmental Justice及びSocial Inclusionを実現するための提言をとりまとめました。授業形態は、レクチャー+グループワーク+フィールドワーク+プレゼンテーション+レポートとなっています(採点配分は各学期により異なります)。