「MA in Social Development」School of Social Sciences and Cultural Studies, University of Sussex

(サセックス大学「社会開発学 修士課程」)

高附 彩(たかつき あや)さん

執筆:2009年1月

自己紹介

私は、広島大学総合科学部・大学院にて国際政治学を修了後、IT関係の会社で営業・マーケティングの仕事をしていました。開発学を学ぼうと思ったきっかけは、ODAのプロジェクトでラオスに行っていた大学時代の恩師を訪ねたことです。ラオス人の実直で誠実かつ楽観的な国民性と、貧困という言葉が自分の中でうまく消化できず、「この国にとって開発って、どんな意味があるのだろう?」と考えました。そこから、彼らが誇りに思っている文化遺産の保全分野で何かできることがあるかもしれないと思い、開発学と文化人類学等幅広く学際的に学ぶことのできるサセックス大学に留学しました。


所属コースの概要

社会開発学コース(MA in Social Development)は、サセックス大学社会科学部(School of Social Sciences and Cultural Studies:通称SocCul)に開設されているプログラムです。SocCulは、Anthropology, Economics, Geography, International Relations, Politics, Sociology, Gender, Human Rights, Migration等のコースが一緒になった学部です。学際的な視点から開発を捉えるという発想から、幅広い内容の授業が提供されています。

また、環境開発政策コース(MA in Environment, Development and Policy)とは姉妹コースになっているため、合同で開講している授業もあります。

本コースの今年の学生数は18人で、タジキスタン、南アフリカ、アメリカ、コロンビア、ポーランド、オランダやオーストリア等、様々な国の学生が学んでいます。学生たちは、学生時代にボランティアやNGO、国連関連機関等で職務経験やインターンシップ経験を積んだ人たちや、開発について学部時代から学んできている人たちなので、開発に関する自己の経験に基づいた説得力のある意見や、自分なりの考えがゼミ (Seminar)では活発に飛び交います。

各自が自国の現状や地域の特性について話す内容は、新たな気づきを与えてくれるほか、自らも活発に議論に貢献したいという意欲も与えてくれます。学生が自ら授業を作り出す、という「サセックス・スタイル」のゼミが中心になっているため、先生はファシリテーターとしての役割に徹することもあります。


授業全体について

大学院の授業は3つの学期に分かれていて、1学期につき2つの授業の履修が必須になります。秋学期は、環境開発政策コースと合同で行う「Theories of Development and Underdevelopment(開発及び低開発理論)」と、「Concepts of Social Development(社会開発の概念)」の授業で、主に開発や社会開発の基礎となっている理論や概念について学びます。

秋学期の必須授業では、理論を学ぶことを重要視しますが、同時に学期中に他プログラムの学生と合同で行うワークショップや、開発に関する特別講義など様々な授業があり、こちらは実践中心になります。個人の興味に沿って自由参加となるこれらの特別講義は、NGO・開発機関の代表や専門分野の教授を世界中から招いて講義を行い、専門の異なる教授方も参加することがあり、専門家や教授同士の意見交換に交ざって質問や意見ができるのはとても面白いです。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Concepts of Social Development(社会開発の概念)(秋学期)

内容・感想:

週ごとにテーマが変わり、移民・貧困・グローバリゼーション・ジェンダー等について、毎週1時間の講義と2時間のゼミ(Seminar)で理解を深めます。事前にテーマに沿った文献講読を行い、Seminarではその文献から得た知識をもとに、学生がプレゼンテーションと議論を行うことで理解を深めます。プレゼンテーションの形式は自由なので、1つの理論に関する詳細な分析やケーススタディの紹介から、ワークショップ形式の全員参加型プレゼンまで学生の裁量で進められます。

成績は、Mid-term Paper(30%)+プレゼンテーション(15%)+Discussion(5%)+Term Paper(50%)で評価されます。各科目の最終課題であるTerm Paper(論文)に関しては、何度もチュートリアルの時間が設けられ、事前に何でも講師の先生に相談できるため、安心して進めることができます。


大学情報

キャンパスはとにかく広いです。1つの授業から次の授業の場所まで15分歩くこともあり、授業を選ぶ際には、事前に講義の場所を確認することも必要になってきます。また、天気の良い時には芝生で日光浴をする学生もおり、明るい雰囲気のキャンパスですが、海が近くカモメが多いので外でサンドイッチなどを食べているとカモメに狙われます。

クリスマスの時期には、キャンパスに巨大ツリーが飾られるなど、エンターテイメントにも余念がありません。図書館は24時間開館している(平日)ので、論文の締め切り前などは、図書館に住んでいる学生が見受けられます。

キャンパス内の寮に住んでいる学生が多く、授業で議論し足りなかったことをクラスメートのフラットのキッチンで引き続き話す、ということもよくあります。ブライトンの街までは電車で10分、バスで30分、徒歩で1時間半ほどなので、金曜の夜に街に飲みに行くこともあります。また、街の中心部にも寮がありそちらでは、アカデミックな雰囲気と開放的な雰囲気を同時に楽しむことができます。


その他の情報

どの学生も自分の国・地域の国際情勢や歴史、政治行政情報について正確な知識を持っており、議論の際には各国・地域代表のような立場になることがあるため、日本についての基本的な情報を持っていると安心かと思います。

また、学生が自ら授業を作り出す、という「サセックス・スタイル」を先生方も重視しているため、学生が考えて創り出すセミナーやイベントへのバックアップはしっかりしています。そして、先生方も気さくな人たちが多いので、一緒に飲みに行ったり、お茶やランチに行ったり友達感覚でアドバイスをくれます。

サセックス大学では、学生は受身の生徒ではなく自主的な学生であることをとても意識させられます。そのため大学側から提供してくれる機会を楽しむと同時に、こちらから機会を作れば得るものは何倍にもなって返ってくると思います。学生も自立した人たちが多いので、一緒にいて学ぶこともたくさんあり、同時にとても気楽です。