「MA in Gender and Development」Institution of Development Studies (IDS), University of Sussex

(サセックス大学開発学研究所(IDS)「ジェンダーと開発修士課程」)

三宅 由雅子(みやけ ゆかこ)さん

執筆:2009年1月

自己紹介

日本の大学で国際関係を学んでいた際に開発業界に進むことを決意しました。そのため、いずれは大学院へ進むことを考えていましたが、一度社会に出たいと思い、開発とは無縁の航空業界へ就職しました。2年は日本ベースの航空会社、2年半はアラブ首長国連邦ベースの航空会社で働きました。学部生のとき、また日本で勤務していたときに、ボランティアとしてNGOに所属し、その後も開発の勉強は続けていました。

学びを進めるなかで、開発でのジェンダー問題の重要性を認識し、また将来ジェンダー問題のスペシャリストになりたいと考えるようになりました。留学コンサルタント会社に大学院への進学を相談したところ、ジェンダー分野はサセックス大学が良いとのアドバイスを受け、現在のコースで勉強することにしました。


所属コースの概要

私が所属している「ジェンダーと開発」は、ほかのIDSのコースとは違い、サセックス大学の一学部と開発学研究所(IDS)との共同運営となっています。そのため、サセックス大学とIDSにそれぞれ所属する2人の教授がコースの責任者となっています。

「ジェンダーと開発」は、今年で22年目というIDSの中でも歴史があるコースで、開発に関するジェンダー問題について毎回異なった先生から学べるのが特徴です。教授陣も、有名な方や、本を出版している方が多く、その分野で活躍しておられる方ばかりです。実地での経験に基づく話を伺うことができるため、とても勉強になります。

ジェンダーと開発の分野で、一番有名なIDSの研究者はNaila Kabeer先生です。とてもお忙しい方で、今のところまだ講義は受けていませんが、講義とは別にセミナーをしていただく予定になっており、大変楽しみです。このように、授業以外でも、コース担当の先生がお知り合いの専門家を招いて、特別なセミナーをしてくださることもあります。

このコースは、ジェンダーと開発を幅広く勉強できるのが特徴ですが、これが逆に短所でもあります。開発に関するジェンダー問題を広く浅く勉強していくため、コースの内容だけではジェンダー分野の中での専門性までは身につきません。研究所内の豊富な資料や専門家などをうまく利用して、コースとは別に自分で専門分野を決め、研究していく必要があると思います。

今年の「ジェンダーと開発」のコースには15名が在籍し、全員女性です。年齢は20代前半から30代半ばまで、ネイティブスピーカーがほとんどで、アジア人は私を含め4名(インド、韓国、香港、日本)、欧米からは8名(アメリカ、カナダ、イギリス、スイス、イタリア、アゼルバイジャン)、アフリカからは3名、(ナイジェリア、ジンバブエ、南ア)となっています。

クラスメイトの多くが、NGOや政府機関での勤務経験者です。大学卒業したての若い学生もそれぞれ、こちらで学ぶ前に国際機関やNGOでのインターンシップなど、実地での経験がある人がほとんどです。それぞれ開発分野で活動してきたなかで、ジェンダー分野の専門性が必要となり、このコースを選んだという方ばかりです。


授業全体について

コースは3学期制になっています。最初の2学期(秋学期、春学期)は必修科目のみです。


秋学期

授業名: Ideas in Development and Policy, Evidence and Practice

評価: 中間レポート (2000 words) 40%、期末レポート (3000 words) 60%


授業名: Gender Analysis and Theoretical Perspectives

評価: 期末レポート (5000 words) 100%


春学期

授業名: The Politics of Implementing Gender and Development

評価: 期末レポート (4000 words) 80%、プレゼンテーション 20%


授業名: Key Issues in Gender and Development

評価: 期末レポート (5000 words) 100%

夏学期は全て選択科目です。ジェンダーの授業だけでなく、IDSの他のコースの授業にも参加できます。評価はそれぞれ、3000 wordsの期末レポートとなっています。

授業は、先生がパワーポイントを使いながら授業を進めていきますが、質問・意見、共有したい経験など学生が積極的に参加・発言できる雰囲気です。皆それぞれ経験があるので、これまでの経験をいかに理論的にとらえなおすかということを中心に議論が進みます。

毎回2時間の講義につき、平均2つの読書課題があり、さらにその講義に関して2時間のゼミがあります。また学期末レポートでは、それまでに受けた講義で学んだトピックの中から、自分が興味を持ったものに関して書くことになっています。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Theoretical Perspectives on Masculinities: Applying it to HIV, Sex and Health

内容・感想:

秋学期に受けた授業で、初めて男性の方による講義でした。女性だけでなく男性もジェンダー開発に携わる大切さを学びました。それまで女性の地位向上、エンパワーメントを中心に学んでいましたが、この講義で初めて、開発・社会での男性の立場についても学ぶことができ、ジェンダー問題は女性だけでなく男性の問題でもあるということを再確認することができました。


大学情報

私はキャンパス内の寮に住んでいます。寮は、駅の隣にあり、また目の前にバス停があるため、街へ出るのにも便利ですし、セキュリティーがきちんとしているため、安全です。街までは電車で15分もかかりません。学内にはいくつかお店があり、そこで日用品、食材が購入できます。週1回キャンパス内で野菜マーケットも開かれるため、スーパーへ行かなくても生活に必要なものは調達できます。

私が感動したことの一つに図書館があります。メインの図書館以外にIDS内にも図書館があり、開発に関する資料の豊富さには圧倒されました。キャンパス内にはいろいろなカフェテリアがありますが、IDSにもカフェテリアがあり、IDSの関係者が主に使用できるラウンジもあります。また学校の周りは大自然に囲まれていて、裏手にはイギリスらしい小さな村があり、勉強の合間に散歩に出かける学生も多いです。


その他の情報

私はいわゆる帰国子女でTOEFLやIELTSといった英語の試験を受けたことがないため、英語のスコアは提出しませんでした。そのため、Conditional Offerのまま8月下旬に入国し、サセックス大学の英語のコース、Pre-sessional Course Cを受けました。

このコースでは最後にテストがあり(IELTSと同等レベル)そのテストに受かれば修士コースに進めます。コースではイギリスの大学院レベルの論文の書き方を教えていただけたので、とても役に立ちました。またConditional Offerで参加した人に限り英語コースの授業料が全額戻ってくるので、得した気分になります。ただし、Conditional Offerのためイギリスへは6ヶ月有効のStudent Visiting VISAで入国することになり、あとでビザ更新をしなければいけないのが難点です。