「MA in Peace Studies」Department of Peace Studies, University of Bradford

田邉 宙大(たなべ みちひろ)さん

執筆:2009年3月

自己紹介

大学卒業前にNGOボランティアでのフェアトレードを通じて、世界の紛争や貧困などに対して、自分でも多少なりとも何かをすることができるということを知りました。そしてそれを無くす為に、現在どういうアクションが行われているのか、平和という概念がどのような要素で成り立って何が阻害要因なのか、を知るために留学しました。職歴は大学卒業後に民間企業で3年間勤めましたが、現在の分野とは関係ありません。卒業後は、NGOインターンもしくはスタッフとして、キャリアを積んでいければと思っています。


所属コースの概要

大まかに分けてコースは平和学、紛争解決学、アフリカと紛争、国際政治と安全保障等があります。各コースの違いはコアモジュールが違うだけなので、コース間に極端な違いありません。コースの中身は理論や政策に特化したものが多く、平和学の最先端で活躍している教授の下で学べるのが魅力です。しかし、フィールドワーカーや現場経験のある人にとっては、理論と実践のギャップを感じる人も多いようです。アメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカ各国から来ているクラスメイトは本当に国際色豊かですが、国別に見てみるとカナダ、ドイツ、日本人がやや多い傾向にあります。年齢は一概には言えませんが、20代中盤の人が多いように感じます。


授業全体について

ブラッドフォード大学では2学期制を採用しており、休暇はクリスマス、イースターがあります。選択科目は前期に1つ(平和学入門)がありますが、後期の必修科目はありません。先ほども少し触れましたが、授業全体としては、理論に重きを置いています。実際の現場の経験から学んだ教授の講義はそれほど多くはありませんが、紛争の歴史・仕組み、解決の手法など包括的な視点から学ぶことができます。授業の雰囲気は教授によって異なるので一概には言えませんが、2時間1コマの授業をひたすら自分のスピーチに終始する教授も少なくなく、集中力が必要とされます。質問の時間では、生徒同士の議論が白熱し、収拾がつかなくなる場合も稀にあります。


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:平和維持と平和構築(Peace Keeping and Peace Building)

内容・感想:

主な内容は国連の平和維持活動における、主要な問題点などを議論することで、国連の国家主権への介入の難しさ、国連や政府軍の武装解除から社会復帰までのプロセス、女性の国連平和維持活動における社会進出などを勉強します。隔週でセミナーがあり、生徒同士が書物のプレゼンを行い、それについて議論します。また成績はテストとレポートがあり、それぞれ70%、30%で評価されます。レポートはグループワークが基本なので、各々の知識、ライティングスタイルのギャップを埋める為、多くのミーティングを重ねる必要があり、非常にタフです。


授業名:紛争解決におけるアフリカのアプローチ(African Approaches of Conflict Resolution)

内容・感想:

この授業は世界中で紛争が多発している地域、アフリカでの紛争原因とその解決手法を学ぶことができます。講義ではアフリカにおける植民地の歴史から資源の不平等分配、腐敗政治などの紛争要因を勉強します。また、紛争解決における基本的アプローチも学ぶことができるので、アフリカ研究と紛争解決を同時に学ぶことができる非常にフレキシブルな講義だと思います。尚、評価はエッセイのみであり、そのエッセイが評価の全てになります。


授業名:第三セクター(NGO)でのボランティアワーク(Working in the Third Sector)

内容・感想:

このコースは平和学部ではなく、開発学部のものです。どのコースの生徒であれ、最大1つまでは他学部の授業が履修できるので、この授業を履修しました。内容はブラッドフォード近辺のNGOでのボランティア活動を100時間以上した後に、その経験や感じたことをレポートにまとめるというものです。NGO組織や運営について深く知ることができ、また授業ではお互いのボランティアワークでの問題点を話し合いするなど、かなり実践的な内容になっています。


大学情報

メインキャンパスは市内の中心地から徒歩10分程のところに位置していますが、高低差がある為、中心地からキャンパスまでは多少の距離を感じます。学内には学食と呼べるものはそれ程ありませんが、近隣にはサブウェイやカレー屋、中華料理屋等があります。しかし、値段が張る為、家に戻って食事を取る生徒も少なくないようです。寮は現在学校の敷地内の寮を建て直しているので、来年度の生徒さんは新築の寮に住める可能性があります。図書館は、平日は24時間開いていますが、パソコン、自習室、プリンターの数などはそれほど多くないので不満を持つ学生も多いですが、図書館から無線でインターネット接続できるなどの長所もあります。


その他の情報

ブラッドフォードという町はイギリスの中でもかなり異色だと思います。人種や風習、町並みなど、自分が渡英前に想像していたイギリスのそれとは大きく違います。一言でいうと、パキスタン系の文化やイスラム教の習慣に触れる機会が非常に多いです。学生の中では想像と現実のイギリス学生生活のギャップに戸惑う人もいるので、多少の覚悟は必要かもしれません。しかし、宗教や文化について授業以外にも考えされられる部分も多いので、そういう面ではブラッドフォードという環境でしか勉強できないことも多いと思います。また前述の通り、平和学部の生徒は本当に国際色豊かなので、色々な価値観、意見、文化に触れることができます。