「MSc in Development and Project Planning」Development and Economic Studies (DES), University of Bradford

(ブラッドフォード大学開発・経済学科「開発・プロジェクトプランニング 修士課程」)

山口 俊太(やまぐち しゅんた)さん

執筆:2009年3月

自己紹介

ブラッドフォード大学、開発・プロジェクトプランニング修士課程に在籍しています、山口俊太と申します。日本の大学卒業後、一般企業のサラリーマンとして4年間(日本)、国際NGOのボランティアとして1年半(アンゴラ)、日本のNGOの正職員として2年間(スーダン)、開発コンサルタントとして半年間(アンゴラ)働き、開発分野での現場を計4年程度経験してから2008年9月より1年間留学しています。現在31歳です。

2005年から2007年までスーダンで地雷の回避教育のプロジェクトを担当していた頃に、プロジェクトの評価方法とプロジェクトチームの運営方法に疑問を感じ、プロジェクトマネジメントの知識を身につけたいという思いから留学を決意しました。現在は開発経済と政策分析に焦点を当てており、援助効率と一般財政支援(General Budget Support)の勉強に特化しています。


所属コースの概要

コース概要

開発・経済学科、Development and Economic Studies (DES)には、以下の6つのコースがあります。

・MSc 1: Development and Project Planning

・MSc 2: Macro Economic Policy for Development

・MSc 3: Public Policy & Programme Management

・MSc 4: Project Planning and Management

・MSc 5: International Economics

・MA International Development Management

各コースとも似ており、違いがわかりにくいのですが、プロジェクト・サイクル(計画→立案→実施→評価)のどの部分に焦点を当てるかによってコースが分かれています。

・MSc 1: Development and Project Planning: プロジェクト立案を中心にしたコース

・MSc 2: Macro Economic Policy for Development: 経済政策を中心にしたコース

→ 上記の2つのコースはプロジェクトの計画と立案に焦点を当てており、政策立案者やプロジェクト企画者を育成するコースになっています。

・MSc 3: Public Policy & Programme Management: 政策実施を中心にしたコース

・MSc 4: Project Planning and Management: プロジェクトマネジメントを中心にしたコース

→ 上記の2つのコースはプロジェクトの実施と評価に焦点を当てており、政策実施者やプロジェクトマネージャーを育成するコースになっています。

・MSc 5: International Economics: 開発経済学を中心にしたコース

・MA: International Development Management: 開発学の一般理論を中心にしたコース

以上のようになっています。

それぞれのコースは、コア・モジュール(必修科目)の組み合わせによって変わるだけなので、取りたい授業によってコースの変更をすることができます。私の場合、もともとプロジェクトマネジメントに興味がありMSc 4: Project Planning and Managementのコースに入学しましたが、2ndセメスターに入ってから経済分析と政策分析に興味が移り、MSc 1: Development and Project Planningのコースに変更しました。この当たりは非常に融通が効くので、便利だと思います。

学生の内訳

DESの学生の大まかな内訳は、アフリカ系が50%、中東・西アジア系(インド・パキスタンなど)が30%、その他(欧州、中国、日本)が20%程度です。今年度の日本人学生は5人います。社会人経験のある方が80%程度、学部卒業生は20%程度、年齢層は20代後半~30代後半までが多くなっています。また先ほども書きましたが、各コースは授業(モジュール)の組み合わせで決まるので、それぞれのコースに在籍しているというよりDESに在籍しているという印象が強く、違うコースの学生でも交流があります。

開発学と平和学の交流

残念ながら大学主催のDES(開発学)とPeace Studies (平和学)の交流はあまりなく、互いの授業を1セメスターに1モジュール履修することが可能になっている程度です。ただし、日本人同士のネットワークは比較的強いので、開発学と平和学を専攻している日本人学生の交流は活発です。


授業全体について

授業:

1stセメスター (9月~12月) 3モジュール×20単位 60単位

2ndセメスター (1月~4月) 3モジュール×20単位 60単位

修士論文 (5月~9月) 60単位

合計: 180単位

DESは2学期(セメスター)制になっています。各セメスターに3モジュールを履修する為、MBAなどに比べるとモジュール数が少なくなっています。週に2~3日授業に出席する学生が多く、空いた時間に他の授業を聴講する学生や、語学サポートを受ける学生も多くいます。また2ndセメスターにはWorking in the 3rd sector というモジュールがあり、空いた時間にボランティアをし、それを授業の一環とする学生もいます。ただし、DESは比較的グループワークを好む傾向にあるので、授業以外でグループで集まり作業することが多いように思われます。

その他の休暇(授業がない期間)は以下になります:

リーディングウィーク* 10月中旬 1週間

冬休み 12月中旬~1月初旬 3週間

リーディングウィーク* 2月下旬 1週間

イースター休み 4月中旬 2週間

(*リーディングウィークとは、ターム中間にある1週間の休み)


これまでに受けた授業の内容・感想

授業名:Project and Programme Management

内容・感想

プロジェクトマネジメントの具体的なツールを学ぶ内容で、将来現場でプロジェクトマネージャーを目指す人に最適です。ネットワークダイヤグラム、バーチャート、予算管理、モニタリング、評価、リスクマネジメントについて学びます。講義+セミナー2回で、実践的な内容をカバーします。(期末テスト50%+エッセイ1本50%)


授業名:Project Planning, Design and Appraisal

内容・感想

プロジェクトの計画立案について具体的なツールを学ぶ内容で、プロジェクトプロポーザルを作成する人に最適です。プロジェクトサイクル、プロブレム・ツリー分析、ロジカルフレームワーク、ステークホルダー分析、費用対効果などについて学びます。講義+セミナー1回で実践的な内容をカバー。(期末テスト80%+グループレポート1本20%)


授業名:Public Action

内容・感想

政府、民間企業、一般市民の3セクター間のパートナーシップに焦点を当てた講義です。パートナーシップ論に基づき、それぞれのパートナーシップの長所と短所を探り、政府、民間企業、一般市民それぞれの役割について分析します。非常に前衛的な内容で、1stセメスターで一番役に立ち、楽しめた講義でした。100%講義。(エッセイ2本75%+グループワークレポート1本25%)


大学情報

図書館

大学内に2つあり、メインキャンパスに1つ、マネジメントキャンパスに1つあります。メインキャンパスの図書館にはワークステーションが100台程度、個室が20室程度、グループワーク室が5室程度あります。こじんまりしていますが、ライブラリアンのサポートは良く、必要な文献は集まります。月~木は24時間で金、土、日は朝9時~夜9時まで開いています。

学食

メインキャンパスには学食が1つ、カフェテリアが2つあります。比較的値段が高いので学外で食べるか、お弁当を持参することが多いです。

全て徒歩5分圏内にあり、比較的快適に過ごせます。寮にはいくつかタイプがあります。以下、値段が高い順に紹介します。

1) Arkwright Hall: トイレシャワーが各個室についており、大学から徒歩1分圏内、室内もキレイで快適です。しかし、若干狭いのが難点です。付属のジムに追加料金で入会できます。

2) Dennis Bellamy Hall: 2年前に改築したばかりで、比較的キレイな施設が整っています。個室には洗面台があり、トイレ、シャワーは共同です。窓が大きく、眺めがよいのが特徴。徒歩5分圏内。

3) Trinity Hall: Dennis Bellamy Hallの隣に建ち、室内とキッチンがやや狭いかわりに、値段も安い。トイレ、シャワー共同。徒歩5分圏内。

4) Bradford Hall: 室内とキッチンの老朽化が目立つが、値段も安く、キャンパス内に建ち好立地。トイレ、シャワー共同。

街との距離

キャンパスから街の中心まで徒歩10分程度です。ブラッドフォードの市街地は小さく、スーパー、銀行、郵便局など、全て徒歩でまわれます。また無料の循環バスがメインキャンパス⇔駅⇔街を走っているので便利です。あまり交通費がかからないので助かっています。

他大学と比較して

ブラッドフォードはイギリス内でも著しく物価が安いので、最小限のコストで留学できます。中東・アジア系の食材が豊富で、自炊には向いています。またブラッドフォード郊外にはヨークシャーののどかな田園風景が広がり、勉強の合間に訪れてリフレッシュしたりしています。


その他の情報

残念ながら、ブラッドフォードは日本よりも治安が良くありません。居住環境としてプライベートハウスよりも寮の方がセキュリティーが良いので、寮をオススメします。プライベートハウスの場合は、セキュリティーアラームや戸閉まりの確認をした方が良いと思います。大学3km圏内には、夕方6時から11時半、月曜日から金曜日までキャンパスから家の玄関先までミニバスで無料送迎する便利なサービスがあるので、度々利用しています。