「MSc International Economics」University of Essex

藤田 輔 さん

執筆:2008年5月

1. 自己紹介

私は、藤田輔(ふじたたすく)と申します。昨秋から、University of EssexのMSc International Economics(詳しくは後述)に所属して、経済学を勉強しております。その傍ら、IDDPでスタッフも務めております。

これまでの経緯を申上げますと、慶應義塾大学に進み卒業した後、都市銀行で数年間融資業務に従事しました。銀行では、法人融資や不良債権処理などに携わり、それらを通じて、経済活動におけるファイナンスの重要性を肌で感じ取りました。銀行退職後、立教大学大学院に入り、国際経済学を専攻し、2006年に経済学修士号を既に取得しおります。その後、同大学院のPh.D.に進みました。

立教大学院に在籍中は、主にアジアの経済成長に伴う諸問題に関する分析をしつつも、国際機関日本ASEANセンターでインターンをしたり、独立行政法人RIETI(経済産業研究所)でRAとして「少子高齢化のもとでの経済成長」のプロジェクトに参加したりしました。

現在は、さらなる理論・数量アプローチを追求すべく、立教を休学して英国に渡りまして、経済学では定評のあるUniversity of Essexで少しばかり勉強し、ダブルマスターを目指しております。

今後は、何らかの形で研究者かエコノミストになることを目指しておりますが、この夏から、フランス・パリにある国際機関OECD(経済協力開発機構)の日本政府代表部における外務省専門調査員として2年間働くことになっています。

「貿易・投資・アウトリーチ(OECD非加盟国との対話)・エネルギー等に関するOECDの活動」という任務に携わり、諸々の国際会議に出席しつつ、OECD加盟国や他の国際機関との対話、報告書の作成を通じて、わが国の経済政策に反映させていくことが目的です。とりあえず、このキャリアを生かして、さらなるステップアップを図りたいと考えております。


2. 大学の概要

University of Essexは、イングランド北東部エセックス地方の町Colchesterに80万�以上の広大なキャンパスと約7300人の学生を持つ国際色豊かな大学です。ちなみに、Colchesterは地味ながらも、英国の書物に登場する中では最古の町と言われており、Colchester Castleを中心とした街並みは、古き良きBritainを味わうことのできる風情ある光景です。Colchesterはロンドンから電車で北東へ50-60分ほどの所にあり、都会へのアクセスが大変良いです。

当大学は1965年に設立された比較的新しい大学ではありますが、その提供している教育および研究の質は高い評価を得ています。最新の発表では、教授の質の点ではUniversity of Essexはイギリス大学内7位、リサーチの点では10位に選ばれており、政治学、社会学、経済学等の社会科学系の分野のリサーチは最高の評価を得ています。他方では、当大学は留学生の受入れが大変整っていると評価されており、2005年にはthe Queen’s Award for Enterpriseを受賞しております。これは私見ですが、「ロンドンの郊外にある」や「社会科学系に強い」ということを特徴としていることから、University of Essexは、日本で準えると、キャンパスの雰囲気では中央大学、大学のレベルでは一橋大学のような感じに受け取れます。


3. 所属先について

私は、上記にも挙げたとおり、MSc International Economicsに所属しておりますが、当大学のEconomicsには、これを含めて9つのMScコース(Economics, Economics and Econometrics, Financial Economics, Financial Economics and Econometrics, Financial and Business Economics, International Economics, Accounting and Financial Economics, Applied Economics and Data Analysis, Management Economics)があります。

いずれも7つの科目を受講し、最後はDissertationの執筆というパターンです。ラインアップを見ると、純然たる経済学や金融論もさることながら、計量経済学や経営学・ビジネスのモジュールを兼ねたコースも豊富と言えます。そして、ほとんどのコースでは、やはり経済数学と計量経済学が必須となっており、実証的かつ数理的な分析能力を身に付けさせ、冷静な視点で経済動向を見極めるエコノミストやファイナンスの専門家を養成するというスタンスが窺えます。

私のInternational Economicsでは、主に、国境を越えた経済取引という観点を重要にしており、上記の2つに加えて、国際金融論と国際貿易論が必須です。残りの3科目については自由に履修できて、私の場合は、マクロ経済学、貿易と開発、開発経済学を取っています。いずれの授業もやはりUndergraduateの内容は既に理解していることを前提にして進められるため、かなり高度な内容になることがあります。特に、マクロ経済学に関しては、動学的モデルが主体に扱われるため、数式も大変多く、少なくとも中級レベル以上の知識がないと苦労します。

そして、Economicsの場合は、最もTaught Courseを地で行っており、ほとんどが講義主体です。少人数制のクラスもありますが、それは問題演習(経済数学と計量経済学)が解説されるというもので、経済学の知識をあくまでも「学び取る」ことが最優先となっております。ですので、他学部のように、プレゼンテーションやディスカッションがあまりありません。米英の大学院のEconomicsの多くは、こういうスタイルを取っているようです。評価についても、もちろん、エッセイの執筆(1科目あたり4000語程度)や小テストも課されますが、これらは比重が小さく、一方で、最後のFinal Examinationの比重が極めて高く、俗に言う「テスト一発勝負」型なのです。科目の性質上、これは不可避かもしれません。

周囲の院生達ですが、EU、アジア、アフリカ、中南米と、ほんとうに出身国が多岐に渡っており、留学生比率が6割以上ときわめて高いです。私の見受けた印象ですが、中でも、中国(特に香港周辺)、インド、トルコ、メキシコ出身者が多い感じがします。バックグラウンドも様々です。研究者志向の方、ビジネス志向の方、政府・企業からの派遣で学びに来ている方、等々です。