「MSc in Development Studies」London School of Economics and Political Science

松尾 詩子 さん

執筆:2007年10月

1. 自己紹介

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE: London School of Economics and Political Science)にて2006−07年度、開発学(MSc in Development Studies)修士課程に在籍しました松尾詩子です。

大学卒業後(専攻:政治学)は、カナダで約1年半、通訳翻訳を専攻しました。帰国後は、HIV/AIDS問題に取り組むNGOでスタッフをしながら、大学院の準備をしました。語学を極めたいと思い通訳翻訳を学びましたが、やはり仕事をしていく上で、自分の専門を持ちたい、将来HIV/AIDS問題に関わっていきたいという思いが強くなり、大学院に進むことを決意しました。

中でも公衆衛生、HIV/AIDS問題への興味があります。とは言っても“開発”の知識も経験もほぼゼロに近かったので、準備期間中に1ヶ月という短期間ではありますがNGOの主催する途上国での社会開発研修などにも参加しました。未経験なため、幅広い角度から“開発”を学べるかなと思い、開発学を選びました。


2. 学校全体の紹介(歴史、組織、特色など)

学校全体の特徴としては、大学院生、留学生の割合が非常に多いことがあげられると思います。フルタイムの学生は約7,000人、その約半数以上が大学院に在籍しており、約半数がEU(イギリスを含む)以外の国々から集まった留学生です。非常に多国籍であるため、自分が留学生であるという感覚はあまり持ちませんでした。実際、クラスには数人しかイギリス人はいなかったように思います。キャンパスは決して広いとは言えませんが、ロンドンの中心部に位置しておりとても便利です。

またLSEが平日ほぼ毎日主催しているPublic Lecture(講演会)は、非常にすばらしいと思います。様々な学部が、それぞれの分野の専門家や著名人を集め行なっているため、自分の興味に合わせて参加することができます。各分野における旬の議論を生で聞けるというのは非常に有意義なものだと思います。さらに、図書館にある文献、資料、またパソコンからすぐにアクセスできるElectronic resources (ジャーナル等)は非常に充実しています。個人だとアクセスできないものや、高すぎてなかなか買えない文献などが簡単に手に入るというのは、勉強していく上でとても便利でした。


3. 専攻しているコースの紹介 (MSc in Development Studies)

1)特徴(強いところ、他との違い等)

私が在籍したMSc in Development Studiesは Development Studies Institute(DESTIN)のコースの一つです。MSc in Development Studies とMSc in Development ManagementがDESTINの二大コースになっています。その他に、他学部との合同コースがいくつかあります。例えば、 Geography & Environmentと合同でMSc in Environment and Development、 Department of Social Policyと合同でMSc in Population and Development、Department of Anthropologyと合同でMSc in Anthropology and Developmentなどといった感じです。学校全体の特徴でもある留学生の圧倒的な多さはやはりDESTINの特徴でもあります。(学部によってはインド、中国などが過半数を占める学部もあります。)

コースの中では、Development Studiesという非常に幅広い分野のなかで、自分がどのように、どこに焦点を当てて学んでいきたいかということによって、必修以外の選択科目を選べます。選択教科も非常に多様で、他学部の授業も非常に多いです。可能な選択科目に指定されていなくても、その授業を取りたいという正当な理由があれば、交渉も可能です。コース全体の印象ですが、LSEという名前からも想像できる通り、“経済”色が若干強いかもしれません。必修科目では経済学が至る所で出てきますし(1学期)、大学学部時代に経済学専攻だったという学生も多数いました。学期が始まる前に、経済学にあまり縁のなかった学生向けに、経済学のPre-sessional courseが2日間おこなわれました。

私自身、経済学とは無縁だったため、そこがかなりの不安要素でしたが、実際に学期が始まると同じような学生も多数いて、彼らの中で話し合い、経済学の補強授業等を行ってもらったりもしました。でも経済学が障害になり、その後授業についていけないということはないので心配する必要はないと思います。また、講義についてですが、全体的にPracticalな内容というよりはどちらかというとTheoreticalな内容です。セミナーになると、個々人の経験をもとにしたディスカッションが行われたりもしますし、選択科目や教授によってその形態は様々なので、一言では言えませんが、基本的にはTheory重視だと思います。


2) 生徒(出身、バックグラウンド、年齢層等)

LSEの中でも一つのコース人数が多いコースの一つです。MSc in Development Studiesだけでコース始めは80人弱いました。同様に MSc in Development Managementもだいたい同数だったと思います。そのため常に一緒の“クラス“という感じはしませんでした。80人全員が履修するコースは必修の授業だけなので、週に一コマ全員集合するのみです。生徒の出身国は多様です。アメリカ、カナダを初め、イギリスを含むEUからの学生、ほかアフリカ、中南米、中央アジア、東アジア、オセアニア等。性別は男女ほぼ同じくらいだったように思います。経験についても、実際に途上国での経験を持っている人と未経験者の割合はほぼ同じくらいで、年齢も本当に様々です。


3)教員、授業内容や進め方(科目履修のシステム、アセスメント)

コースは他大学と同様に、3学期制(10週間×3学期+修士論文)です。科目の形態には、Full unit(20週間)とHalf unit(10週間)の2種類があります。Half unit×2でFull unitとします。原則として、4Full unit分の単位を取得することが求められます。 必修科目は以下の3つです。(1) DV400 Development: theory, history and policy(1、2学期の20週間)、(2) DV410 Dissertation (修士論文)、(3) DV410.1 Social Research Methods in Developing Countries(3学期の10週間) (1)は1Full unit、(2)と(3)を合わせて1Full Unitと数えるので、残りの2Full unit分の単位を選択科目で埋めます。

選択方法は人それぞれです。Full unitを2つとる人もいれば、Full unitを1つ+Half unit2つをとる人、Half unitを4つとる人もいます。選択科目によって、週のコマ数が人によって変わってきます。ちなみに1科目の構成は、講義(1時間半〜2時間)+セミナー(10−15人ほどのグループ、1時間半)です。ちなみに私はHalfを4つとりました。そのため、週に講義が3つ、セミナーが3つといった感じです。どのコースもエッセイとプレゼンは必須でした。どのエッセイも最終評価に換算されますが、全体のわずか20−30%(文字数に寄る。)で、6月にある試験の結果が成績の約80%を決めます。これについての不平、不満は多数ありましたが、成績の20−30%の評価であっても、コースワークは非常に重要なものであることには変わりありません。


4)修士論文(自分のテーマ、他の人のテーマで多いもの・特徴など、作成の流れ)

本格的に修士論文モードになるのは、6月にある試験の後からです。それ以前は、2学期に一度、論文の題名と簡単なアイディアを提出します。そして3学期の前半に2000字程度のプロポーザルを提出し、同じようなテーマの学生に分けられ、そのグループ内で一人一人プレゼンテーションを行います。個人的な感想ですが、この時点で具体的な案ができていない人も多く、あくまでも教授やクラスメートとのインフォーマルな意見交換と言った感じです。このプレゼンが終了後、一気に試験ムードに変わります。

修士論文の字数は10,000字、テーマに関しては開発関連であり、スーパーバイザーからの承認をもらいます。現地調査を行なう人もいますが、基本的に求められていません。試験もあるため、時間的にかなりの制限があると思います。締め切りは8月末でした。


5)コースの雰囲気

約80人という大きなクラスなので、常にみんなでというのは難しいですが、その割には仲の良いクラスだったと思います。クラスメートであっても、選択科目によっては週に1回必修科目のときにだけ会うというのは普通です。基本的に毎週金曜日にキャンパス内のパブで飲み、学期中や後にもパーティーがあったりで、そういう機会に知り合うという方が多かったように思います。年に2、3度、忙しいコースワークの間をぬって、ミニ旅行なんかもありました(希望者のみ)。

雰囲気としては、一人一人が本当にユニークで、よく世界中からこんなにおもしろい人たちを集めたなという感じでしょうか。こういう人達に会えたということだけでもLSEに来た甲斐があったなと思わせるクラスでした。また教授陣も非常にフレンドリーで、ユニークで、熱意のある人たちだったと思います。自分から行動を起こせば、力になってくれる人たちばかりだと思います。


6)卒業生の進路(就職先の傾向、就職サポート、自分の求職経験)

どこも同じだと思いますが、進路は本当に人それぞれです。引き続き、博士課程に進み勉強する人、NGO、コンサルタント、シンクタンク、政府機関や国際機関で働く人、はたまた開発とは関係のない道へ進む人、本当に様々です。在学中は、仕事、インターン、ボランティアの求人情報をDESTINがメールで随時送ってくれます。またキャリアサービスでも就職に関する相談やアドバイス、履歴書やその他レターなどの添削なども受けることができます。


4 関連情報

◆学校ホームページ: http://www.lse.ac.uk/

◆Development Studies Institute (DESTIN) ページ:http://www.lse.ac.uk/collections/DESTIN/

その他、質問等がありましたら utakomatsuo*hotmail.com (*→@)までお願いします。分かる範囲内でお答えさせていただきます。