「ニーズとシーズ」を繋ぐ架け橋になるために:ウズベキスタン JICA 青年海外協力隊 としての活動を通じて感じたこと

執筆:2024年7月13日

インタビュアー:KIM Minsu 


小原瑠夏 (こはら るか) さん


現在のお勤め先: JICA 青年海外協力隊 ウズベキスタン事務所

1.    自己紹介 


・KIM:こんにちは!本日はインタビューを引き受けて下さり、誠にありがとうございます。まず、これまでのご経歴や、前職の仕事の内容について教えていただけますでしょうか。

・小原:はじめまして!現在は青年海外協力隊 (JOCV) の一員としてウズベキスタンでコミュニティ開発に従事している 小原瑠夏 (こはら るか)と申します。まず、大学での学びやこれまでのキャリアについて軽くご紹介いたします。

大学時代は日本の大学で主に国際政治について専攻し、国際開発のゼミに所属して「国際○○協力」の○○の部分を探し、自分なりの国際協力の形を模索していました。大学3年生の時に一年間イギリスのThe University of Leeds に交換留学し、「遺産・文化関連」×「地域・開発・経済」という視点で、地域研究や博物館学を学んでいました。国際協力に携わりたいと思ったきっかけは大学二年生の時にゼミでいったインドの経験があります。ちょうどデリーメトロが建設中で、日本の企業が関わっていることを知り、日本の技術力を目の当たりにしました。その体験から、主に民間(企業)サイドから国際協力に関わりたいと思うようになりました。当時は民間の世界に行きたいかったので、正直に言うと協力隊はないかな~と思っていました(笑)。

就職活動はイギリス留学中に実施し、日本のモノづくりの技術力を活かして、民間企業という観点から社会にインパクトを与えられる仕事を探していました。

2. 民間企業でのご勤務経験について

KIM:ありがとうございます!民間の立場から国際協力に携わる方法を模索されていたんですね。それでは、次に大学卒業後のファーストキャリアについて教えてください。

 ・小原:大学卒業後は「積水化学工業株式会社」という化学素材メーカーに入社しました。インフラや中間素材、住宅部門などを持つ、モノ作りや技術力の分野で世界的に有名な会社です。合計8年間勤務していたのですが、時系列順にご紹介いたします。

今思い返すと、現地の方々のお困り事やニーズなどを実際に現地に赴いて把握し、日本に戻って技術者に展開し、会社が持つシーズでソリューションを考えるという一連の流れに楽しさを感じていました。実際に、後ほど触れる協力隊を志した理由も、「現地の人が持つ困りごと、ニーズを丁寧に紐解きたい」という想いからであり、キャリアを構築するにおいて色んな視点を持つ重要性を実感しました。つまり、今は目標に繋がっていると感じられなくても、間接的に繋がっていて、どんな経験も無駄にはならない!ということです。 

また、同時期にビジネスだけでなく社会にも再び目を向け始め、JICAが実施している新しいODAの仕組みであるJICA Innovation Questにも参加しました。このプロジェクトは官民連携の一種で、共に開発途上国の課題解決に向けて取り組むというものです。私はこのプロジェクトでタジキスタンに主に携わり、2022年にはInnovation Questで優勝して実際に現地に渡航して検証することができました。この経験から、もっとその国を知りたいと思うようになり、JICAのアプローチ方法に魅力を感じるようになりました。もちろん民間セクターのアプローチも重要ではあるのですが、やはり利益重視なこともあり、社会課題解決のみに集中するのは難しいと感じたためです。その一週間後に青年海外協力隊に応募し、合格してウズベキスタンに渡航することになりました。

・KIM:詳細にご紹介下さり、誠にありがとうございます!民間企業からの青年海外協力隊へのキャリアのシフトチェンジは大きな転換のようにも思いますが、根本にある「ニーズとシーズを繋げる」という軸があってこそのご決断であるということを知れて、非常に勉強になりました。

3. 青年海外協力隊 in ウズベキスタン について

KIM:次に、現在の業務についてお話いただける範囲で教えてください。

・小原:自己紹介でも申し上げたのですが、現在はウズベキスタンのタシュケントでコミュニティ開発に従事しています。青年海外協力隊というと開発途上国の農村部に行って生活するイメージがあるかもしれませんが、首都で働くキャリアも実はあるんですよ(笑)。

業務の具体的な内容としては、ウズベキスタンのイノベーション開発省でプロジェクトのマネジメントや広報を担当しています。ここでいうイノベーションとはITというよりはエネルギーや化学関連の技術といった純粋なイノベーションであり、ウズベキスタン国内の大学や研究機関の重要性が高まっている一方で人材が不足している背景から設立されました。この案件はウズベキスタン政府とJICAが協力して行う初めての試みであるため、実は自由度がかなり高いです。その反面、自分のやる気ややりたいこと次第で大きく変わってくるので自発的に動くことが求められるように感じます。

・KIM:ウズベキスタンの生活についてはどうですか?

・小原:暮らしに関しては首都ということもあり、ほとんど東京と変わらないように感じます。一方、やはり海外で生活しているので、日本では当たり前だったことは当たり前ではないと痛感しますね (日本は便利すぎます笑)。日本にいるときはアイデア力・行動力はあるもののマネジメント力が弱いので周りと協力してやっていたのですが、今は一人なのでその点も大変ではあります。

・KIM:ありがとうございます。お蔭様で業務のことだけでなく、青年海外協力隊の仕事の多様さを知ることができました。

4. 今後のキャリアについて


・KIM:次に、今後のキャリアについてお伺いします。今後のJOCVで挑戦したいこと、終了後のキャリアについてはどのようにお考えですか?話せる範囲で教えていただけますと幸いです。

 

・小原:色々考えている点はありますが、ウズベキスタンにいるうちに達成したい点は二点あります。一点目はウズベキスタンにおけるイノベーションの活性化の土台づくりです。イノベーションとはモノとモノの組み合わせだと考えており、広報・研究側と人々のニーズの仲介役を担いたいと考えています。例えば、省エネプロジェクトにおけるアイデア出しを個人レベルまで繋げ、国家と協力してイノベーションを活性化させる事業を取り組んでみたいです。私はどちらかというと「人と人・モノとモノを繋げる」という点に興味があるので、イノベーターとしてではなく、みんなのつなげる縁の下の力持ちとして何か結果を出して、ウズベキスタンという国に貢献したいと考えています。言ってしまえばこれが私なりの「国際協力・国際開発」ですね。

 

二点目はウズベキスタン国内の大学院で修士号の獲得に挑戦したいです。具体的には、「教育×イノベーション」のコースを専攻する予定です。きっかけとしては、働く中でもう少し理論を深めたいと思ったからで、業務と両立できるよう頑張ります!

 

5. 最後に一言お願いします!

 

・KIM:是非とも目標に向けて頑張って頂きたいです!最後にこの記事を見てくださっている方々、開発学や国際協力に従事する人々に向けたメッセ―ジをお願いします!

 

・小原:ありがとうございます!色々ありますが、以下の点をメッセージとしてお伝えできればと思います。


まず、国際協力に携わる中で、民間セクターの重要性はますます高くなっているという点です。国際協力と聞くとJICAや国際機関、NGOなどを主に想定されるかもしれませんが、民間からでもいくらでも関わることはできるし、民間と国際協力の二足の草鞋を履くことは十分に可能だと思います。しかし、そのためには常にアンテナを張り、情報や機会を逃さないようにすることが重要だと思います。


次に、自分が興味・関心を持つ分野を突き進むことです。最初はあまり想像しづらいかもしれませんが、興味を持つ分野を全力で取り組んでいれば、辿ってきた道がいずれ自身のキャリアになります。実際、私も最初は協力隊に参加するつもりはありませんでしたが、自身の軸に沿って進んできた結果、今のキャリアを築くことができました。良い意味で人生はどうなるかわからないので、今を大事に自己肯定感を高く持って日々を過ごしてくださればと思います!

 

・KIM:素敵なメッセージありがとうございます!本日はありがとうございました!!