JICA (国内事業部) や大学職員としてのキャリアを通じて感じた国際協力の多様性と可能性

執筆:2024年6月16日

インタビュアー:KIM Minsu 


以前の勤め先:JICA (独立行政法人国際協力機構) 


出身校:「MSc Development Economics and Policy, The University of Manchester」

(マンチェスター大学院 開発経済学と政策 修士課程)


金丸 峻(かねまる しゅん)さ

1. 自己紹介

KIM:本日はインタビューを引き受けて下さり、誠にありがとうございます。まず、これまでのご経歴や、前職の仕事の内容について教えていただけますでしょうか。


金丸:初めまして。現在マンチェスター大学のMSc Development Economics and Policyに所属している金丸峻(しゅん)と申します。まず、これまでの経歴を簡単にご説明いたします。


・2016年:信州大学経済学部を卒業。大学3年時にマレーシアに交換留学した際、原体験として都市部の貧困や地方との格差を痛感し、本で読んだ内容と現地で実際に見た内容に乖離があったことが印象に残っています。また、元協力隊の人との出会いもあったことから、国際協力に興味・関心を持つようになりました。

・2016〜2019年4月:地方銀行にて勤務。きっかけとしては元々学部で経済学を勉強しており、少しでも学んだ事を活かしたいという想いから主に金融業界を見ていました。退職後に青年海外協力隊に合格し、ウガンダにてコミュニティ開発に従事する予定でした。訓練までは終了したのですが、コロナ・パンデミックの発生に伴い断念することになりました。

・2020年〜2021年3月:大学でProject Stuffとして、JST(科学技術振興機構)からの受託事業に従事。

・2021年4月〜2023年8月:JICAの国内事業部にて専門嘱託として勤務。

・2023年9月〜:退職し、The University of Manchesterの修士課程に入学。


KIM:ご紹介いただき、ありがとうございます。金丸は私が現在所属しているThe University of Manchesterのコースメイトでもあり、社会人経験が豊富な人生の先輩でもあります。本日はよろしくお願いします!

2. JICAでのご経験について

KIM:それでは、まず前職のJICAでのご勤務のご経験について何点かお伺いしたいと思います。どのような業務をご担当されていたのか、働くうえで大変だったこと・やりがいを感じた点など教えていただきたいです!


金丸:JICA国内事業部では、途上国の若手行政官や研究者を留学生として日本に迎える研修事業に従事し、国内の受入大学との連携が主な業務でした。一見すると前職の銀行の業務とは全然関係ないように見えますが、対人関係やコミュニケーションスキル、営業力といったソフトスキルは大いに役立ったように感じます。


もちろん、働くうえで大変なこともありました。私は大学との契約監理、アフガニスタンの行政官を対象とした技術協力プロジェクトの2つに主に従事していたのですが、これらの業務を両立するのはなかなか大変でした。特に、2021年8月にアフガニスタンで政変が発生した際にはイレギュラー対応にかなり苦労した記憶があります。やはり人を扱うプロジェクトなので、マニュアルだけだと対応しきれない部分もありますし、当時はJICA勤務初期だったこともあり、他の部署との連携・調整も大変でした。


一方で、多様なアクターとの調整がスムーズにいった際や、途上国の人材育成に資したいという強い気持ちを持った大学教授の思いに応えられた時などの達成感は大きく、大きなやりがいを感じましたね。国内受入大学とは単年度契約だったので、年度末が繁忙しますが、スケジュール管理をやりきったり、しっかりとプロジェクト実行まで着地させたのは印象に残っています。

3. 大学院について

KIM:ありがとうございます。銀行からキャリアをスタートされて、様々なご経験をされてきたんですね!JICAでのご勤務経験からも分かるように、長い社会人経験・国際協力の経験がある中で、イギリスの大学院進学を決めた背景やきっかけ等は何かありますか?


金丸:大学院に進学しようと思った理由はいくつかあります。


まず、シンプルに大学院で勉強したかったらです(笑)。ただ、まずは数年働いてからかなと思っていました。実際に具体的に進学を考えたのは2022年頃でした。


その中でも、The University of Manchester の MSc Development Economics and Policyを選択した理由は、「経済」という軸で専門性を磨きたかったからです。前職はどちらかというとバックオフィス系の仕事だったので、国際協力をしてきたイメージがなかったのですが、この業界で仕事をしていくために、専門性を持ってキャリアを築いていく重要性を痛感して以降、元々強い興味を持っている経済分野でコース選びをしていました。本コースは定量的分析を学ぶ科目と理論を学ぶ科目の割合が丁度よいと感じており、様々な開発課題から計量経済学まで幅広く学び、自分の興味・関心に沿って専門分野を突き詰めることが出来ます。実際に、本コースに入学してからデータ分析スキルはかなり向上したと思います。


大学生活に関しては、2つのセメスターが終わり、現在は修士論文を執筆しています。学部卒業から7年経っているため、最初はついていくのにかなり苦労しましたが、世界各国からきた優秀なコースメトに助けてもらいつつ、やりきることが出来たと感じています。また、出身国で官僚をされているような方々が周りにいる環境であるため、彼らに刺激を受けつつ、充実した日々を過ごしています。


KIM:ありがとうございます。実は私も同じコースに所属していて、専門性の高い内容に苦戦しつつも刺激し合えるコースメイト・環境に感謝しています (笑)。

4. 今後のキャリアプラン&将来の目標

KIM:大学院修了後の想定しているキャリアプラン等はありますか?


金丸:大学院修了後のキャリアプランとしては、引き続き国際協力の道を進もうと考えています。まず、途上国で勤務してみたいです。外務省の専門調査員にも挑戦してみたいですね。また、可能であれば、前職のJICAでもう一回働きたいとも考えています。勤務時に幾度となく感じていたことですが、尊敬できる方々が非常に多く、普通に生きていたら出会えない人々と関われる環境があるように感じています。この環境を当たり前と捉えずに、今後とも頑張っていければなと思っています。

5. 留学を目指す方々に一言

KIM:最後に、開発分野での大学院進学や就職を目指している方々、この記事を読んでくださっている方々にメッセージをお願いします!


金丸:私は地方出身かつ地方育ち、周りに大学院へ進学する人も少ない環境だったので、イギリスの大学院という遠い所にきた感じもします(笑)。進学するにあたって、費用や英語力の他、そもそも修了できるかという不安を感じる人も多いかもしれませんが、真にやりたいことだったら一歩踏み出してみることが大切だと感じます。また、これまでの経験から思うことは、目の前で取り組んでいることが直接国際協力に関係していないと思っても、今振り返ると必ずしも無駄ではなかったと感じることが多々あります。私自身も、地方銀行からキャリアを始めましたが、人生どうなるかわからないし、どこで繋がるかはわかりません。ですので、熱い想いを持ち続けつつ目の前の事に全力で取り組んで行ってほしいです!応援しています!