① ボランティアフィールドワーク Kaya Responsible Travel ‘Microfinance for Economic Empowerment in Ghana’

② 大学院のフィールドワークプログラム(ウガンダ綿花産業バリューチェーン)

執筆:2019年7月

出身校:

「MSc. International Development: Globalisation, Trade and Industry」 Global Development Institute, University of Manchester

(マンチェスター大学大学院 国際開発研究所 「国際開発(グローバリゼーション・貿易・産業政策)修士課程」

津田 祐也(つだ ゆうや)さん

1.自己紹介

大学、大学院で考古学を勉強し、その後、ソフト・ハードインフラの両者を扱う総合建設コンサルタント会社に海外営業職として入社しました。ODA及び民間投資家によるインフラ・不動産開発への技術サービス提供に関わる営業を6年半程、経験しました。その間、インドネシアに1年半、ベトナムに半年間勤務する経験を得ました。援助機関側またはコンサルタントへの転職を希望していましたので、スキルと知識を得ようと大学院に進学しました。転職に当たって、現地でのコンサルタント業務経験は必須と考えていましたので、フィールドワークのプログラムの有無が大学院選びの基準の一つとなりました。ですので、②については授業の一環ですので、必然的に参加することになりました。加えて、長期休暇の間にもフィールドの経験を積みたかったこと、とりわけ、マイクロファイナンスにおける融資条件と中小企業への開発効果の関係を学びたかったこと、アフリカに行ってみたかったことから、①のボランティアプログラムに応募しました。

2.フィールドワークまでの流れ

① 大学側が積極的にボランティア活動を推奨するStellifyというプログラムを実施していて、推薦または信用するボランティア団体リストを作っていました。その中で、途上国でフィールドワークを行える団体を探し、Kaya Responsible Travel(https://www.kayavolunteer.com)というスタディーツアー/ボランティアの代理店に行き着きました。選択の主な理由は、提供しているプログラムの数や情報量が多く、信頼感があったことです(特に環境、コミュニティディベロプメント系は豊富)。申し込み時には、志望動機、CV、推薦状の提出に加え、電話での面接が必要でした。書類や面接では、社会的弱者や異文化とのコミュニケーションの取り方について、特に尋ねられました。合格後は、現地滞在費を代理店に支払った他、航空券、VISAを自身でアレンジしましたので、準備にはお金と手間が少しかかりました。また、現地滞在期間については、最低2週間から自分自身で選択出来るようになっていて、授業の都合上、今回は2週間を選択しました。

② 大学院のコースの一部に、’Development Fieldwork’という講義とフィールドワークが一体となった授業があり、その中に、2週間程度のウガンダでのフィールドワークが組み込まれていました。現地のカウンターパートとアポ取りやスケジューリングは大学側が行いましたので、渡航にあたり学生側がやるべきことはVISAのアレンジのみでした。治安・衛生・倫理面については、出発以前に講義形式で大学から指導がありました。

3.フィールドワークの概要

① Volunteer Partnerships for West Africa(http://www.vpwa.org)という在ガーナのNPOが代理店と提携していて、現地での受け入れ先となっていました。2007年に設立した組織で、UNのボランティアAwardを受賞している他、London Business Schoolの学生受け入れ、代表者が国の中央図書館の運営を任されるほどの信頼の厚い組織です。現地で実施することになったプロジェクトについては、プログラムタイトルとは少し焦点が違い、小学校経営と保護者の生計向上のためのマイクロファイナンスの活用に関わるものでした。小学校は20人規模で、2018年秋に開校したばかりでした。

② 私が所属するコースは国際開発修士課程というもので、私の通う産業政策のパスウェイの他、紛争解決、プロジェクトマネジメント、政治等、同じコースに複数のパスウェイが存在しています。全パスウェイのメンバーが同時期にウガンダに研修に向かうスケジュールになっていました。行程は各パスウェイのテーマに合わせてアレンジされていました。自分たちのパスウェイはウガンダの主要産業の1つである綿花産業のバリューチェーンの構造全体が理解できるように、関連する組織との面談がアレンジとなっていました。現地ではVenture Ugandaという旅行代理店がツアーガイドとなり、案内役となってくれました。

4.活動内容

① ボランティアとしての活動内容は、ビジネスコンサルタントとしての分析とビジネスモデルの提案業務です。同時期にボランティアは私しかいませんでしたので、小学校の事務職員の支援の元、1人で全て実施しました。まずは、同NPOが経営する小学校の会計監査(特に未払金・未収金の洗い出し)、支払に滞りが発生している家族のデモグラフィックス調査と滞納の背景調査(入学願書とインタビューを通した調査)、マイクロファイナンスまたはリースを通した家計支援策の検討を実施しました。NPOの創設者は、小学校が位置する村落を構成する家族、およびNPOの間において、Non profitの持続可能な経済が成り立つことを希望していました。それを考慮したうえで、NPOが新しい事業を立ち上げる、または小学校が新しいビジネスモデルをもとに運営される必要がありました。緻密なビジネスモデルの提案とまではいかないものの、アイディアとコンセプトを提案しました。

滞在先については、首都アクラから車で1時間弱のポクアセという街にNPOの拠点があり、主にそこに滞在しました。小学校は、更に地方へ車で2時間程度離れた村の中にあり、調査のため合計1週間程度、通いました。NPOの創設者の推薦もあり、休日はアクラ市内を訪ね、植民地時代の負の遺産である奴隷貿易拠点跡、沿岸部のスラム街を見学させてもらいました。

② 首都カンパラとウガンダ西部のカセッセという町に滞在しました。カンパラでは、Uganda Cotton Authority、Uganda Private Sector Foundation、Ministry of Trade Industry and Cooperativesなどの綿花産業を規制・支援する政府機関や研究機関と面談しました。また、ケニア資本の企業で、綿生産の現地委託から衣服への加工まで一貫して行い、国内・近隣諸国マーケットに衣服を販売するアパレル企業との面談も行いました。カセッセでは、自治体政府、農家、農業組合、綿実油工場、灌漑施設と建設会社など、生産者側の組織を訪問しました。各訪問先では最初に担当者から組織の説明があり、その後に学生が質問するというスタイルで面談が進められました。夜には担当教官による指導の元、訪問を通した感想や疑問点を討議するディスカッションの場が設けられました。フィールドワークの最終日の夜は、出発前の講義と面談を通して得られた理解をもとに、政策提案を検討するワークショップを行い、その後には、全パスウェイ合同での打ち上げパーティーが開催されました。

5.体験を通して学んだことや感じたこと

① 大学では主に理論を学習していたので、理論と現地での問題解決を結びつけて考えられるいい機会となりました。テクニカルには、業務の要件が決まっている中で定型的な分析方法で解決できるTORについては支援するのは比較的簡単だと理解できましたが、「持続可能な」ビジネスモデルのような創造性を問われる要求については、被益者や依頼者の希望や期待などをうまく組み込むことの重要性を認識しました。被益者や依頼者とのコミュニケーションの取り方を改善して、うまく本音を聞き出せるよう努力が必要だと感じました。また、依頼者とのコミュニケーションを通して、社会的課題解決を生業としてくうえで、熱意、創造力、執念が非常に重要だと痛感しました。熱意や執念は行動力に変わりますし、考え続けて創造的な仕事を生み出す力に変わります。NPOの代表の方は教育環境改善に執念を燃やしている方でした。一時期貿易の仕事に携わっていたそうですが、辞めて、今のNPOを始めたそうです。中央図書館や小学校の運営の他に、バスでの移動式図書館を考案して普及活動を行っていました。直接お話したのは短時間でしたが、ボランティアであろうとも妥協せず課題への解決策を徹底的に考えさせようとした姿勢や言葉遣い、活動内容から、大変刺激を受け、勉強させてもらうことができました。お金と時間が許すなら、2週間だけでなく、もう少し長くボランティアとして現地に滞在して、より多くのことを吸収したかったです。その他、小学校の生徒の保護者の方の生計を調査して、フォーマルマーケットとインフォーマルマーケット(農業の他、小売やトレーディングに携る人が多い)の間に存在する大きなギャップ、自国の製造業育成の重要性など、大学の講義に関連して学習した内容を実地で学ぶことができたように思います。

② 基本的には①と同じように、授業で学んでいた理論や研究成果を、実際の面談を通して検証し、現地の必要な政策を分析・考案していく過程を学習する内容であり、開発課題の解決策を検討するプロセスを学び、体得することが出来たと感じます。フィールドワーク前のアサインメントが事前に現地の課題を仮説させる内容だったので、その段階で現地の状況を想像できていたことで、現地での面談時の質疑応答は大変有意義なものに出来ましたし、現地の1つの主要産業の構造を十分に理解出来たと実感しています。また、このフィールドワークの期間でクラスメートと濃密な時間を過ごすことが出来、今まで以上に仲良くなることが出来たと思います。アカデミックな話題ばかりでなく、将来の仕事や自国の経済・産業状況、趣味や家族の話など、思い出深いです。最終日の打ち上げパーティーの他、国立公園を訪問したり、夜まで飲んだり、話したり楽しく過ごせました。

6.フィールドワークをめざしている人へ一言

開発学を専攻している方は、大学や付属の研究機関が現地NPO/NGOや国際機関と提携していることも多いはずですので、そのコネクションを通してフィールドワークに応募できると思いますので、チャレンジしてみてください。安全面も比較的心配しなくて良くなります。もちろん、団体によって立場や考え方は色々です。堅い話になりますが、事前に自分の立場や目的を整理しておくなら、スムーズにボランティアの環境に馴染めますし、深い経験が得られると思います。また、期間も短期間より長期間のほうが、気づきも多いと思います。もちろんお金が許せばですが。そういった意味では、事前に計画的に準備しておいて損はないと思います。最後に、何より現地に自分の力で貢献出来るというのは開発学を学んでいる人にとって非常に充実感が得られる経験だと思います(個人的には)。心配も多いですが、将来役に立つ刺激も多いので、学生のまだ時間がある期間に、時機を逃さずチャレンジしてみてください。