特定非営利活動法人JEN(ジェン) ハイチでの水と衛生環境の改善活動

執筆:2016年1月

名前:佐野泰隆

大学院・専攻:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 開発管理と計画

University・Major of course: University College London MSc Development Administration and Planning

1. 自己紹介

大学卒業後→日系民間企業→青年海外協力隊(マダガスカル)→日系民間企業→イギリス大学院→特定非営利活動法人JEN

大学卒業後、日系旅行会社にて約2年間勤務。その後、青年海外協力隊(村落開発普及員)でマダガスカルに派遣され、主に民芸品を作る女性グループの収入向上活動を行いました。その後、数年民間企業で勤務し、イギリス大学院に入学。イギリスから帰国後、特定非営利活動法人JEN(以下、JEN)に入職し、ハイチ事務所、東京本部事務局勤務を経て、現在熊本にて地震被災者緊急支援に従事中。


2. フィールドワークまでの流れ

イギリス大学院在学中に、次の就職先を探すために、JICAのPartnerを検索していたところ、現在勤務している団体が「フランス語圏(ハイチ共和国)プログラムオフィサー)」を募集していました。協力隊の経験と、大学院で学んだことを生かしたいと思い、応募し、採用してされました。選考過程は、1次選考(書類)、2次選考(スカイプ面接)、3次選考(フランス語での電話面接)、最終選考(スカイプ面接)。当時在学中でロンドンにいたため、選考のために日本に帰国することは困難だったのですが、スカイプ面接が可能だったので、時間もお金も節約することができました。


3. フィールドワークの概要

JENは、紛争や災害により厳しい生活を余儀なくされている人びとが、精神的にも経済的にも自立した生活を取り戻せるように支援をする国際NGOで、日本国内や海外で緊急時から自立を支える支援活動を行っています。

ハイチ共和国では、2010年1月に起きた大地震で、30万人以上が亡くなりました。JENは、地震直後に現地に出動し、緊急支援物資としてシェルターキット(トタン板、ハンマー、釘、のこぎり、軍手)を配布し、住民たちの手で自分たちの生活環境を改善できるよう支援をしました。。ハイチはもともと西半球一貧しい国と呼ばれていましたが、地震がその状況に追い打ちをかけました。中でも生活に必要な水と衛生の分野は深刻で、国内全土に多くのコレラ患者が発生しました。

私が現地で活動していた2014年12月から2016年1月は、地震の震源地に近い、レオガン市、グランゴアーブ市、グレシエ市にて、給水施設の改設、建設・水管理委員会の再結成と強化・衛生促進活動を行いました。


4. 現地での活動内容

私の業務は、ハイチ事務所での経理・総務業務でした。具体的に言うと、現地スタッフなどの契約書管理、会計書類の管理、現地スタッフの給与、光熱費やインターネット代などの支払い手続き、事業の予算進捗を管理、ブログや広報誌を通しての広報活動になります。

基本的には、事務所での事務作業が中心でしたが、必要に応じて銀行に出向き出入金を行ったり、首都ポルトープランスで、税務処理を行うなど、事務所運営全般の責任を担っていました。

現大統領への不満から、各地でデモンストレーションが発生した際は外出禁止令が発令されるなど、治安は常に不安定でした。また、国内に日常生活をおくるうえで必要な産業がないため、生活必需品の多くは国外から輸入されており、物価は総じて高いのがハイチの特徴です。


5. 体験を通して学んだことや感じたこと

NGOと言うと、活動現場に入って住民と一緒に活動するという印象がありましたが、現地駐在のNGO職員(国際スタッフ)の役割は、主に現地スタッフのマネージメントや資金調達をすることです。現地で事業を実施するために、JENでは多くの現地国籍のスタッフを雇用し、彼らが実際に活動地域に入り業務を行います。我々国際スタッフは、現場の報告や情報に対し、団体の方針や事業計画に沿うように意向を伝え、適宜アドバイスを行います。実際に現場を訪問し、情報収集や討論をする機会はありますが、日々の事業実施は基本的には現地スタッフに大幅に委任します。協力隊時は、自ら現場に入り、住民と一緒に草の根で活動していましたので、NGOとの違いに最初は驚きました。

生活面では、当初娯楽がない環境に苦戦をしました。首都から2時間かかる田舎に住んでいたため、周りにまったく娯楽施設がありませんでした。ハイチは、治安が安定していないため、団体の方針で、徒歩での外出は禁止です。そのため、週末はほとんど何もせず、オフィス件自宅の家の方で、のんびりと過ごしていました。幸い、首都を拠点にする他団体で働く友人ができたため、2~3週間に一度は首都に向かい、互いの近況のシェアやハイチビールで乾杯し、他愛もない話をする機会がありました。ハイチでの生活を通し、自由に生活をできる日本の良さを再認識する機会になりました。


6. フィールドワークを目指す人への一言

フィールドに行くか行かないか迷っている人がいれば、是非とも一度行くことをお勧めします。現地を自分の目で見て、体験することによってしか得られないものがあると思います。自分のやりたいこと、できることが見えてくるかもしれません。

写真

水管理委員会スタッフとJEN現地スタッフ(改設した給水施設前にて)

汲んだ水を持って帰る住民