JICA(国際協力機構)でのキャリアを経て

執筆:2017年4月

以前の勤め先:JICA(独立行政法人国際協力機構)

留学先:

「MSc Environment and Development London School of Economics and Political Science」

(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 環境と開発 修士課程)

行澤 隆(ゆきざわ たかし)さん


1、 自己紹介

・学歴:京都大学法学部卒業(2010年)

・ 職歴:(独)国際協力機構(JICA)(2010年4月〜2016年8月)にて3部署を経験。本部南アジア部(パキスタン向け円借款事業担当)、関西センター(研修員受入担当)、モロッコ事務所(モロッコ向け円借款事業、技術協力事業、研修員選考担当)。

・ 留学の動機:国際協力の分野でのキャリア形成は続けるものの、何かひとつ軸となる分野を持っている方が将来的に有利になると考えたため。併せて、従来より関心のあった国際機関での業務には修士号取得が必須条件であることが多かったため。


2、 所属していたコース概要

・ 特徴:主に「持続可能な開発」に関する議論。途上国の開発だけでなく、先進国も含めたグローバルな視点での環境親和的な社会発展に関して広く論じる。

・ 強み:開発学を体系的に学ぶのであれば開発学部に様々なコースが用意されているが、環境を軸足に開発を論じるコースは本コースが唯一と思料。

・ 弱み:「環境」に関する講義の比重が大きく、「開発」に関してはあまり多くの講義が用意されていない点。クラスメイトにも開発よりも環境に関心のある人の方が多い印象。

・ クラスメイトのバックグランド:20カ国以上から50人弱の人数が集まっているとてもコスモポリタンな環境。イギリス人も含めて国籍の偏りはない。まとまった職業経験のある人が3分の1程度で、それ以外は主に学部卒業後に直接入学した学生。クラスメイトの職業経験としては、国際機関、国家公務員、開発コンサルタント、NGO、民間企業など多様。


3、就職までの流れ

【動機】

・高校の交換留学でイギリスに滞在して以来、海外とつながりのある仕事をしてみたいという漠然とした将来のイメージを持っていた。

・ 大学で主に国際法や国際機構法を勉強したこと、ならびに英語やフランス語(大学の交換留学でフランスに1年滞在)が得意だったこと等を踏まえ、自分の能力を社会に還元できる仕事は何かと考えた時にJICAを始めとする国際協力分野が自然と残った。

・ 将来的にどういうキャリアパスを歩むにせよ、日本政府に近いところで業務し、日本政府の考え方や意思決定プロセスを学んでおくことは、日本人としてキャリアを形成していくうえで有益だと考えた。

・ なお、旅行以外に途上国での滞在経験等もなく、多くの同期と違い「国際協力をしたい」という動機はあまりなかった。

【プロセス】

・ 交換留学からの帰国時期が大学の4年生時であったため、通常の春季就活には間に合わず、夏季就活でJICAに応募。

・ 夏季就活は募集人数、応募人数ともに少ないこともあり、ES提出後は、筆記試験1回、人事部による面接1回、役員面接1回のみだったと記憶。


4、 留学中に準備しておいてよかったこと、またやっておけばよかったこと

【しておいて良かったこと】

・留学に役立ちそうな日本語書籍集め。担当予定の教授の名前等から関連しそうな書物を事前購入しておけば、留学先では手に入らない日本語の参考資料として重宝する。

・年金、国保等の行政手続。

【やっておけば良かったこと】

・国内にいるLSE卒業生等との情報交換、ネットワーク作り。学校の授業の進め方、必要な行政手続等を事前に分かっておくと、よりスムーズに留学が開始できたのではないかと思料。


5、 今後のキャリアプラン、将来の夢など

マルチラテラルな国際機関にて開発金融の分野で働きたい。大学院で環境分野を勉強したが、環境のスペシャリストになるつもりはなく、あくまで開発金融の案件担当として環境親和的な案件形成をしていくために、得た知識を生かしたいと考えている。


6、これから留学する 学生、在学中の学生に一言

留学は急いでするものではないと思います。勉学ならびに職業経験を通して、自然と本当に勉強したい内容が分かってきてから、また金銭的・時間的余裕ができてから考えれば良いと思います。また、職業経験を持っている方が、理論面に加えて実務面からも考察を加えることができるため、職業経験のないクラスメイトよりも広い視点を持って勉強できると思います。ミッドキャリアでキャリアアップのために大学に戻ることは欧米社会では一般的ですし、日本でもトレンドとなりつつあると思います。留学を目的とするのではなく、キャリアアップのための一手段として留学を捉えるのが良いと思います。