商社南米駐在を経てJICA本部、産業開発・公共政策部 民間セクターグループへ

執筆:2017年4月

勤め先:国際協力機構(JICA)

出身校:

「MA Globalisation, Business and Development, Development Studies, Institute of Development Studies (IDS), University of Sussex」

(サセックス大学 開発学研究所 グローバリゼーション・ビジネス・開発学修士課程) 卒業

水野 真鈴(みずの まりん)さん

1. 自己紹介

初めまして、サセックス大学IDSを2016年に卒業した水野 真鈴(まりん)と申します(よく間違われますが、男性です)。私のこれまでの経歴を簡単にご説明させて頂きます。

・東京外国語大学スペイン語学科卒業。在学中のエクアドル留学がきっかけで、開発援助の道を志す。

・卒業後、とある都内の小さな商社へ就職。大手企業が「進出したくない」と思うような発展途上国、生活やビジネス環境が難しい国に深く入り込み、自分達にしかできないビジネスを行うというとても特徴のある会社で、スペイン語人材として入社1年目にしてキューバに赴任。4年半駐在し、営業、市場調査、政府役人との交渉、契約書の作成、経理・総務まであらゆる業務をスペイン語で行い、「発展途上国でビジネスを行う」ノウハウを身につける。

・退職し、IDSに入学(IDSにした理由は後述)。修士論文のテーマは「アメリカと国交正常化後のキューバの産業政策」。

・卒業を待たずにJICAに就職。本部の産業開発・公共政策部 民間セクターグループに勤務。アフリカや南米の産業発展を支援するプロジェクトの運営を担当。


2. 所属コースの概要

1)サセックス大学/IDSを選択した理由

応募前に、休暇を利用してLSE・SOAS・IDSの3キャンパスを訪問した。3校とも違う雰囲気・特色があったが、大学の対応、キャンパス・街の雰囲気が気に入ったので即決した(但し、開発を目指すためのアプローチも3校で違うので、そこも判断基準にすべき。IDSに行くことは元世銀の教授には大反対された)。IDSが気に入った理由は、ロンドンなど都心の大学と比べて、とにかく広大な土地で自然にあふれたキャンパスがあること。大学が始まってからは、森に隣接しているためキャンパス内にキツネやリスを目にすることは日常。晴れた日には外で芝生の上に座ってディスカッションをしたり、休み時間にキャンパスの隣の自然公園で皆でサッカーをしたりと、緑豊かな生活を楽しんだ。

学びに関していえば、別の大学で学んでいないのでなんとも言えないが、世銀のエコノミストになりたいのであればLSE、よりよい開発効果を追求するNGOで働きたいのであればIDS、というイメージだろうか。

2)MA Globalisation, Business and Developmentの概要

色々な考え方・アプローチを学ぶが、コースの大きな概要としては、①「グローバリゼーションが発展途上国にどういう影響を与えているか」②「ビジネスが途上国に進出するときに、どうすれば搾取にならずに、相手国の発展にも繋げられるか」③「グローバル化した世界で競争していくために、途上国はどのような戦略をとれるか」といったものである。具体的な単元としては、①でいえばグローバル金融危機やグローバルガバナンス、移民が経済に与えるインパクトなど、②でいえばマイクロファイナンスやフェアトレード、③でいえばクラスター開発や産業政策などがある。必修と選択の授業があり、ある程度各々の関心に応じたコースを履修できる。

3)授業の流れ

授業の流れは、①事前のReading(事前に渡される課題読書)、②午前中のLecture(課題読書を読んできていることが前提に行われる講義)、③午後のDiscussion(ReadingとLectureの学びを踏まえた上で、学生同士で討論)となっている。1学期に平均して3種類の授業を並行して受けるので、同様のサイクルを1週間に3回繰り返すこととなる。Readingは非ネイティブ学生には丸一日以上かかる分量であることも多く、授業が終わればまたすぐ次の授業のためのReadingをすべく図書館にこもることになる。

4)その他

・MA Globalisation, Business and Developmentは、ビジネスと開発について扱うが、ビジネススクールではないので、「途上国でどのようにビジネスを行うか」というようなビジネスマンとしての観点ではなく、「途上国で健全なビジネスが行われるために、どのような施策があるか」という、開発従事者の観点で学ぶコースである。実際にビジネスを行っていた身としては、前者の観点が全くないことから、「考え方はそうだとしても、現場ではそうはうまくはいかないんだけど」という疑念が講義によってはあった(そのため、援助でなく途上国自身が発展の戦略を考える「産業政策」を修論のトピックとした)。

・修論に関しては、理想的には、入学の時点で「これについて論文を書くためにこの学部に入った」という問題意識をもって入学するのがベストだが、ほぼ全ての学生が、1年を通じて色々な考え方を見ていく中で、自分が最もピンときたテーマを、自分が最も好きな国(または出身国)のケースとして、書くことになった(私の場合は最もピンときた「産業政策」を「キューバ」で書いた)。


3.就職までの流れ

1)情報収集

PARTNERに登録しておいて、面白そうなポストがあれば中身を読んでみる程度だった。国際機関の採用ミッションが大学まで来た際には出席して色々な質問をした。土日にロンドンでの企業説明会などもあったが、土日は課外活動で忙しく、行かなかった。

2)書類選考、面接

4-5月前後に、PARTNERで募集のあったJICAのポストと商社の海外駐在のポストに応募した。商社の選考が先だったが、後にJICAに合格したため、商社は辞退した。

3)時期

4-6月に書類選考・面接。8月から勤務開始。

※但し、後期の小論文執筆や修士論文の準備で忙しい4-5月に並行してCV作成や面接を行わなければならなかったこと、修士論文の提出(8月末)より前に帰国して、働きながら論文を書かなければいけなかったことは、最善の選択肢ではなかったと思っている。空きポストは自分の都合とは関係なくランダムに出てくるため、仕方がないことではあるが、可能であれば、8月末の修論提出日まで腰を落ち着けて修論の執筆に集中し、それが終わってから就職活動を始めるくらいのペース感の方が、両方ともしっかりやれるし、空いた時間で留学生活の最後を楽しめると思った。ちなみに、春先から就職を並行し、修論提出前にはもう働いているという人は他にも数名いたが、全員日本人だった。


4.在学中にしておいてよかったこと、またやっておけばよかったこと

1)しておいてよかったこと

・学内外のイベントやいわゆるサークル活動にできる限り参加し、とにかく留学ライフを楽しむようにしたこと。具体的には、学内ではPanto(IDS内のお笑い劇)に出演、大学オーケストラ部への入部、学内サッカー大会への参加など。学外ではイギリス人のサッカーチームや市民オーケストラに入団したり、そこでできたイギリス人の友人と仲良くなって出かけるなど。これらの活動が土日に入っており楽しかったため、土日のロンドンでの企業説明会などは一切行かなかった。行くべきだったかもしれないが、結果は大丈夫だったし、休日も出かけていない時は基本的にずっとReadingしているので、それに企業説明会などに出ていたら、リフレッシュする時間がないと思う。

・キャンパスの外で、大学院生仲間でシェアハウスに住んだこと。普段は仲の良いルームメイト、金曜日はBarでお酒を飲んで踊り、時にはそれぞれの授業で学んだことについて部屋に籠って討論したりと、生涯の仲間ができた。

2)やっておけばよかったこと

・時間が許す限り早くイギリスに来て、遅くイギリスを出たかった。理由は、①イギリス人と深い友情を作ることは短期間では難しいこと(1年間は短く、Readingに大半の時間が費やされ、大学院は留学生だらけで、かつイギリスはそう簡単には打ち解けない)、②9月渡英→7月帰国では、イギリスの短い短い夏を楽しめないこと(イギリスは雨ばかり降り、冬には16時には真っ暗。但し8月は20時になってもまだ明るく、晴れるととても気持ちが良い)、③イギリス英語のアクセントの習得は難しいこと(IDSはほとんど全員が留学生だったため、英語力が上がったことは実感するものの、あのアクセントは身につかなかった。もっともっとイギリス人と接してしゃべりまくる時間が欲しかった。イギリス人とルームシェアするなどできたら良かったと思う)。


5. 今後のキャリアプラン、将来の夢など

1)今後のキャリアプラン

・短期的には、民間企業でフィールド勤務を経験し、その経験を活かして修士号取得・JICA本部勤務を経てきたので、次は開発のプロとしてフィールド勤務に出ることが目標。

・中長期的には、現場で働けて、開発にインパクトを与える仕事ができるのであれば、JICAでも、国連でも、民間でも、社会企業家でも、なんでも良いと思っている。今まで自分が住んできた場所で得た知識・能力と、今まで知り合ってきた人々とのネットワークを合わせて、自分にしかできないことをやりたいと思っている。

2)将来の夢

・常にフィールドで働くこと。本部で働いていると、フィールドにいる人々の事情より、待遇、結婚、子ども、ローン、、、という現実的な自分の事情の方に頭がいってしまいがちになる。それを乗り越えたい。

・大きいことを達成する人は皆「子ども」。援助業界のしがらみにとらわれない人間でいたい。


6. これから留学する 学生、在学中の学生に一言

・行く前はとても大きなチャレンジだけど、行ってしまえば、そのチャレンジをしてきた人たちに囲まれて、またそこが出発点になります。今まで経験してきたであろう受験や就職と同じ。そこから次のチャレンジに向けて頑張るだけです。

・今まで書いたことに何かしら興味がある方がいたら、どうぞご気軽にメール下さい。お互いのヒューマンネットワークになりましょう。