特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン サヘル地域食糧危機緊急援助

執筆:2014年3月

「MA Agriculture and Rural Development, University of East Anglia」

(イーストアングリア大学 農業農村開発学 修士課程)

杉本 晃子(すぎもと あきこ)さん


1.自己紹介

学部→日系民間企業2社→青年海外協力隊(ブルキナファソ)→青年海外協力隊(モロッコ)→ピースウィンズ・ジャパン→修士(イギリス)

大学卒業後、日本の民間企業2社にて3年半勤務後、青年海外協力隊村落開発普及員としてブルキナファソへ赴任。教育省県局に配属され、小学校運営組織である母親会(女性グループ)の活動活性化に携わりました。主に、グループの活動状況リサーチや女性たちの収入向上に関する活動を行っていましたが、赴任して10カ月後ブルキナファソが政情不安に陥ったため任国振替となり、モロッコへ活動の場が変更となりました。また、それに伴い職種も青少年活動に替わり、モロッコでは“SOS Children’s Villages”というオーストリアの国際NGOが運営する孤児院に配属となり、ブルキナファソ赴任時とは全く異なる活動に従事することとなりました。配属された孤児院はハンディキャップを持つ子供たちに特化した孤児院であり、子供たちの余暇活動や日々の学習に対しての新しいアイディアの導入や職員の専門知識向上のための研修の企画等を実施し、2年間の協力隊活動を終えました。


2.フィールドワークまでの流れ

協力隊任期終了後、イギリス留学までの間に短期で国際協力に関わる仕事を探していた際に、2カ月間の「サヘル地域食糧危機緊急援助」プロジェクトに関する募集を知り応募、書類審査と面接を経てNGOピースウィンズ・ジャパン職員として採用されました。面接ではフランス語および英語の能力が問われ、正直どちらの語学力も大幅に不足していましたが(採用後ぜんぜん語学力が足りておらず、他候補者と比べてもかなり劣っていたと聞きました)、幸運にも採用して頂くことができました。経験や語学力など募集要項を満たしていなくても、チャレンジしてみると意外と道は開けるかもしれません。


3.フィールドワークの概要

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人びとに対して国内外問わず支援活動を行うNGOであり、私は正職員としてニジェールへ赴任しました。

赴任先のニジェールはサヘル地域の一国であり、長引く乾季と不規則な雨で農産物の収穫高が激減し、食糧価格の高騰と食糧不足に陥っていた上、隣国マリからの難民の流入が事態を一層深刻なものにしていました。

プロジェクトでは、食糧危機に瀕した住民に対し、土地整備などの作業機会を設け、その労賃を受け取ることで食糧の購入ができる「キャッシュ・フォー・ワーク」を実施しました。


4.現地での活動内容

プロジェクトは現地のパートナー団体であるMercy Corps Nigerの協力により実施され(NGOとしての政府への登録など、多くの時間を要する諸手続きを省略し、より迅速に事業を開始するため。またMercy Corpsは米NGO)、プロジェクトコーディネーターとしての私の仕事は、PWJが現地にて採用したスタッフだけでなく、Mercy Corpsのスタッフとの連携が必要とされました。

セキュリティ上の理由から、プロジェクトサイトである地域には、オフィスはあるもののインターナショナルスタッフの滞在は認められていなかったため、首都事務所で長時間しなければならない仕事がある日以外はほぼ毎日片道3時間ほどかけてサイトまで通い、プロジェクト進行状況の確認を行っていました。現場までは一応舗装された幹線道路でしたが、道の状態は極めて悪く、あまりのコンディションの悪さにドライバーが辞退を申し出たり、パンクしたりと大変でした。

私の仕事は、現場に赴いてプロジェクトの進捗確認を行う他、備品の発注書類作成や経費精算書類作成といった事務作業、賃金支払いに関するマイクロファイナンス機関とのやり取り、受益者達のインタビュー等、多岐に渡って経験させて頂くことが出来ました。またパートナー団体の経理やロジスティックスを利用してのプロジェクトだったため、パートナー団体自体のプロジェクトをいくつも抱える彼らに、いかに我々のプロジェクトに時間と労力を割いてもらえるように交渉するかはとても重要なポイントでした。


5.体験を通して学んだことや感じたこと

協力隊として、既に途上国にての現場の経験がありましたが、ボランティアとして現地の人と限りなく近い立場で生活し活動を行うことと、NGO職員として活動を行うことの違いを強く感じました。NGOは政府系機関や国際機関などと比べて、ローカルの人たちとの距離がとても近いと言われますが、やはり協力隊やボランティアのように長期に渡りローカルの人たちと近いところで生活する場合とはまったく違う環境です。

また、NGOの本場であるアメリカの団体との協力プロジェクトであったため、彼らの組織の仕組みやダイナミックな予算と活動などについても知ることが出来たことや、長年開発業界で働いてきた様々な国籍の人たちと共に仕事が出来たことはとても勉強になりました。

留学前に協力隊とは違った立場から開発の現場に戻ることが出来たことは、非常にプラスの経験だったと思います。


6.フィールドワークを目指す人への一言

フィールドワークは大学で学ぶアカデミックな知識とは違った面での学びが多くあります。また、何よりもリアルなローカルの人々の声が聞ける場でもあります。フィールドに行かなければ決して知ることのできないリアルな情報はアカデミックにも、そして仕事にも活かすことができる貴重なものです。健康面や生活環境など大変なこともありますが、現場に赴き開発のリアルに触れることを強くお勧めします。