アライアンスフォーラム財団途上国事業部門スピルリナプロジェクト

執筆:2015年1月

井上雄太さん

ロンドン衛生熱帯医学大学院 公衆衛生・政策学部 公衆衛生学修士専攻

London School of Hygiene and Tropical Medicine, Faculty of Public Health and Policy, MSc in Public Health

● 自己紹介

大学卒業後→日本の大学院(国際保健学)→イギリスの大学院(LSHTM)

大学時代に医療人類学という授業を履修したことをきっかけに、医療と開発に興味を持ち、大学卒業後は国際保健学を学べる日本の大学院に直接進学しました。臨床系のバックグラウンドを持たない自分のような人間がどの側面から医療と開発に貢献できるのか、そして実際に開発の仕事を担っている人たちがどのような働き方をしていて、どのような知識や経験が必要とされるのかを知りたいと感じため、今回紹介するアライアンスフォーラム財団(AFF)のプロジェクトにインターンとして2年弱のあいだお世話になりました。

● フィールドワークまでの流れ

インターンへと応募した際には、PPP(Public-Private-Partnership)というトピックに関心を持っていたため、社会企業的な視点を持つ団体でありかつ医療と関連したプロジェクトを持っていることを条件に探して応募しました。その後、履歴書と志望動機書を送付した上で、2回の面接を経て採用されました。

● フィールドワークの概要

スピルリナプロジェクトには大きく2つの目的があり、1つは栄養価の非常に高いスピルリナというアフリカ原産の藻を活用する事による地産地消的な栄養不良問題の解決、そして2つ目は現地生産することで新たな現金収入のルートをつくることでの貧困問題解決、を目指しています。

2008年からザンビア共和国にておこなわれている長期のプロジェクトですが、私が参加した2012年にはスピルリナが実際に栄養不良を改善させるかをチェックする効果測定を始めた段階でした。この効果測定プロジェクトは成果がIDS(Institute of Development Studies)の査読付き論文として発表されていますので、詳細についてはそちら(http://opendocs.ids.ac.uk/opendocs/handle/123456789/4398#.VJvch14PwA)もご覧ください。

現時点(2014年12月)では、この効果測定の結果を受け、より大規模な効果測定試験の実施と現地生産のパイロット事業に取り組んでおられるそうです。

● 活動内容

効果測定事業は大まかに、設計・データ収集/モニタリング・データ分析・ステイクホルダーへの結果報告という4つの段階にわかれており、私は主に収集・分析・結果報告の3つの段階に関わることになりました。具体的には、毎月送られてくるデータのチェック、対象者の家計調査や食事調査、ザンビア政府への経過報告書の作成、現地での政府・国際機関関係者への報告といった活動に携わりました。

● 体験を通して学んだことや感じたこと

このインターンを通じて多くのことを学びましたが、特に挙げるとすれば、開発に関るということの多様性と実際に収集したデータを見ることの重要性という2つです。

まず多様性という点においては、様々なバックグラウンドを持った人に支えられているというプロジェクトの環境の下で、それぞれ自身の強みを生かして役割を果たされているスタッフ・専門家・同僚のインターンの方々とプロジェクトを通して関われたことは、自身がどのような立場をもって開発に携わりたいのかということを具体的に意識することにつながり、貴重な経験になりました。

そして2つ目のデータを見るという点についてですが、プロジェクトが進む中で、実際に計測されたデータや聞き取りを通して得られた情報を精査して得られた知見はプロジェクトを評価する上での何よりも深い洞察を与えてくれました。論文などを通して過去の事例を検討することで得られる知見はもちろんですが、得られた定量的・定性的な情報から仮説を立ててさらに検証をしていくという一連の作業によって、自分の知識・経験もさることながら、最終的なプロジェクトのアウトプットという点において厚みが増していったように思います。

● フィールドワークをめざしている人へ一言お願いいたします!

インターンやフィールドワークのよいところは、得られる経験が、論文や本では得られない、自分独自のものになるところだと思います。またそこで得られる人のつながりもかけがえのないものとなりますので、ぜひトライされることをお勧めします。