上武大学ビジネス情報学部講師(前OECD日本政府代表部専門調査員)

執筆:2013年4月

勤め先:上武大学ビジネス情報学部講師(前OECD日本政府代表部専門調査員)

出身校:

「MSc in International Economics University of Essex」

(エセックス大学 国際経済学 修士課程) 卒業

藤田 輔(ふじた たすく)さん


1、 自己紹介

2012年4月より、上武大学ビジネス情報学部(群馬県高崎市)で講師を務めており、「世界経済論」、「経済政策論」、「アジア地域ビジネス論」、「日本とアジアの経済」等の講義・ゼミを担当しています。それまでは、2007-08年にUniversity of Essexに留学しつつ、その間にIDDPのスタッフも務め、その後、2008年7月から2012年3月までの約3年半、パリのOECD日本政府代表部(OECD代表部)にて専門調査員を務めました。OECD代表部では、外国投資措置のモニタリング、多国籍企業のCSR、途上国・新興国の投資環境改善、新興国の加盟・拡大問題等について、これらに関わる会合に出席しつつ、OECD事務局員や各国当局と意見交換を行う一方で、我が国の政策対応や多国間での政策形成のための助言も行いました。また、ヨルダン、エジプト、ウガンダ、南アフリカにも出張する機会に恵まれました。そのほか、みずほ銀行(法人融資)、立教大学平和・コミュニティ研究機構(RA)、独立行政法人経済産業研究所(RA)でそれぞれ勤務した経験があります。


2、 所属していたコース概要

本コースのいずれの講義も、理論的かつ実証的な分析能力を身に付けさせ、冷静な視点で経済を見極めるエコノミストやファイナンスの専門家を養成するというスタンスに基づいています。経済分析には必要不可欠な経済数学と計量経済学に加え、選択科目も含めると、国際金融論、国際貿易論、ミクロ経済学、マクロ経済学、貿易と開発、開発経済学等を履修できる形となっています。いずれの講義もundergraduateの内容は既に理解していることを前提にして進められるため、かなり高度な内容になることがあります。特に、ミクロ経済学やマクロ経済学に関しては、動学理論が主体に扱われるため、数式も大変多く、少なくとも中級レベル以上の知識が求められます。

一方、理論のみならず、貿易が経済成長に与える影響、企業の投資決定要因など、マクロからミクロまで、実証的分析の最新の研究動向についても幅広くフォローされます。また、経済学を主体にしたコースとなると、その性質上、英国でも米国でも、ほとんどが講義主体とならざるを得ず、本コースも文字通りtaught courseでした。したがって、プレゼンテーションやディスカッションがほとんどありません。評価についても、もちろん、エッセイや小テストも課されますが、これらは比重が小さく、一方で、最後のfinal examinationの比重が極めて高く、俗に言う「テスト一発勝負」型です。

本コースに属していた院生の様子については、EU、アジア、アフリカ、中南米と、出身国が多岐に渡っており、留学生比率が6割以上ときわめて高かったです。また、研究者志望の方、ビジネス志望の方、本国の政府・企業・大学からの派遣留学など、院生のバックグラウンドもさまざまでした。


3、就職までの流れ

実は、立教大学の博士課程在籍中に派遣制度で英国に留学していたこともあり、当初は、帰国して研究活動に専念し、そのまま現職のような大学教員を目指すつもりでした。しかし、留学中の2007年12月頃、知人より、外務省を通じて専門調査員が募集されており、派遣先にOECD代表部があるので、ぜひ応募してみたらと偶然勧められました。当初は迷いもありましたが、経済問題を中心に扱う国際機関を相手に仕事ができるし、視野をさらに広げて、学術と実務のより良いバランスを追求する観点からも、その後のキャリアにもプラスの経験になるのではないかと思い、ダメもとで応募してみました。

すると、予想外でしたが、一月ほど経ったところで書類選考をパスしたという通知が来たので、外務省での筆記試験+面接のために2008年3月頃に一時帰国しました。一応、筆記試験は国際投資に関する専門性を問うような形で、事前にウェブサイト等を通じて知り得た知識をベースに対応した一方で、面接は、外務省経済局の担当部署の方々によるもので、主に私のこれまでの職務・研究経歴について聞かれましたが、臆することなく、淡々と答えられたと記憶しております。もっとも、私以外にも結構受験者がいたので、採用されるのは難しいかなと思っていました。

そして、これも予想外でしたが、4月初頭に内定通知が来ました。もちろん、嬉しかったのも事実でしたが、それ以上に青天の霹靂で、驚きを隠せませんでした。一方、7月から赴任前研修、8月中旬には赴任ということでしたので、止む無く6月中旬に英国を引き上げざるを得ないことになり、研究もさることながら、留学終盤は移転準備等でかなりバタバタしました。


4、 在学中にしておいてよかったこと、またやっておけばよかったこと

上でも述べたとおり、留学後のパリでの仕事は予想外だったので、在学中に云々ということを明確に助言できるような立場にはありません。ただ、経験上感じたこととして、将来のことを考える際、いろいろな人の話に耳を傾けながら、あらゆる情報を得ていくことは大変重要で、そうすることで、意外な所から良い話が転がり込んでくることもあり得、将来のキャリアプランにより広がりを持たせることができるのではないかなと思いました。


5、 今後のキャリアプラン、将来の夢など

OECD代表部在勤後、昨年より大学教員を務めているので、これといったキャリアプランは今のところ思いつかないのですが、私はずっと研究をやってきた訳でもなく、OECD代表部を含めて、官民両方で実務経験もあるし、留学経験もあるので、幅広い視点で、若い学生たちに世界経済・アジア経済の面白さを伝授できればと思っております。また、結果的に海外生活が長くなってしまい、博士号を取らずに、日本の大学院の博士課程を終えざるを得なくなったので、研究実績を積み重ねつつ、何とか本年内には博士論文を執筆し提出することを当面の目標にしております。


6、これから留学する 学生、在学中の学生に一言

繰り返しになりますが、経験上、良い話は意外な所からやって来ることもあり得るので、自分を信じながら、視点を幅広くさせ、いろいろなキャリアプランの可能性を模索してみてください!